秋田県男鹿市では大晦日にナマハゲが各家々を訪問します。ナマハゲは鬼とも神とも言われ、諸説あります。
私が子どもの頃のことです。
大人たちは、お膳とお酒を準備してナマハゲがやって来るのを待つのですが、子どもにとっては大晦日は恐怖でしかないのです。
気持ちはうわのそらで気もそぞろ。食べ物も喉を通らない始末。遠くから「なぐ子いねが〜!!」って聞こえてくるともう……。真っ青になったものです。
大人たちは「ここに隠れると大丈夫」なんて言って、押入れや風呂場に私たちを隠してくれますが、それが罠なんです。
ナマハゲに私たちの居場所を知らせて引きずり出させる、この恐怖ったらありませんでした。
「悪いことしませーーーん!」
「親の言うこと聞きまーーーす!」
などと、何度泣き叫んだことか。いつぞやは弟が恐怖のあまり思わず、ぷぅーとおならをしちゃったんです。おならに怒ったナマハゲ、「おいさ、へ、ふっかけるなが!!(俺におならをかけるのか)」と叫んでいました。
ナマハゲに担がれて外に連れて行かれそうになった哀れな弟。それを見て大泣きする妹と私。ナマハゲと一芝居うつ大人たち。「子ども方も反省してるがら、許してやってけれ」と言って、お膳に案内して日本酒を振る舞うのです。
お面を少しずらしてお酒を飲んでいるナマハゲを見て、「あれ?人だよね」って冷静になるのですが、なのに懲りずに毎年同じ失敗を繰り返す私たち兄弟なのでした。男鹿から別のまちに引っ越しした時は、やっと大晦日にナマハゲに会わなくて済むと胸をなでおろしたものです。
それからは大晦日に男鹿に訪れることもなく今に至りますが、大人になり、ナマハゲが訪れた大晦日がとても懐かしく、愛おしい思い出なのです。
今回の大晦日も男鹿を訪問することはありませんでしたが、あんな体験をまたしてみたいかも……。
とは言っても、今はナマハゲもずいぶん優しくなったようですよ。
※この投稿を快諾してくれた弟よ、どうもありがとう!