「男のように生きたかった」私が、生命を肯定する喜びと「祈り」のベリーダンスで解き放たれた 【神奈川県葉山町】

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「私、ずっと男に生まれたらよかったのに、って思っていたのです」

葉山の穏やかな海辺で、彼女はそう笑いながら語った。彼女の名前は、ナシャール(NASHAAL)さん。葉山を拠点に「すべての女性は美しい」というテーマを掲げ、ベリーダンスを通して女性性の解放を伝えるアーティストだ。

(撮影:  SHURI NAGURA )

「ベリーダンス」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。露出度の高い衣装で男性を誘惑する妖艶なショー。そんなステレオタイプを思い描く人も少なくないだろう。しかし、ナシャールさんへのインタビューを通じて、私の固定観念は見事に打ち砕かれた。

これは単なるダンスではない。他者の評価を手放し、自分自身の内側と深く繋がるための「動く瞑想」であり、不器用な生命への強烈な賛美なのだ。

「女というハンデ」に悩んだ20代

「なぜ、私は『女』で生まれてきてしまったんだろう」

ナシャールさんの20代は、女性としてのコンプレックスがとても強かったという。

そして就職氷河期、「男の倍の成績(A評価)がなければ就職できない」と言われた時代に、彼女は男社会の広告業界へ飛び込んだ。

女性用のトイレすらないフロアもあった社屋。自立したキャリアウーマンとして生き残るため、彼女は肉体的な限界を超えて徹夜を重ねた。男性と同じように働き、認められるためには、女性特有の体力差や感情は、ただの「ハンデ」でしかなかった。

「女性でいることが、はがゆい‥男性のような体力があって男社会の一員になれたらいいのに」

それは、社会のルールに適応するために、自分自身の本質を切り捨てようとする心の叫びだった。しかし、命を削るような日々の代償は大きかった。周囲の女性たちが次々と婦人科系の病気に倒れていく中、彼女自身もついに職場で倒れ、救急車で運ばれる。

メニエール病などを併発し、実家のある葉山での1年間の療養という名の「強制送還」。どん底の絶望の中で、彼女のキャリアは突然終わりを告げた。

思考をオフにし、温かい涙を流す「自走する空間」

「女性であることを抑圧すると、人は病気になる」

身をもってその真実に気づいた彼女が、回復の過程で出会ったのがベリーダンスだった。師匠となるミシャールのスタジオのドアを開けた瞬間、赤いカーテンに囲まれた異空間で、様々な国籍の女性たちが窓からの光を浴びながら空に向かって手を伸ばしていた。

生き生きと動く女性たちの圧倒的な美しさと神々しさ。それは、ロジカルに生きてきた彼女の理屈を吹き飛ばす、強烈な体験だった。

ベリーダンスには「男を誘うダンス」という偏見がつきまとう。

しかしナシャールさんは「それはベリーダンスの本質ではありません。確かに『私を見て!』という手練手管のアプローチをすると誘っているように見えてしまいます。でもそうではない、心からの自己表現をすれば、男性を誘うダンスにはなりません」と明確に否定する。

(撮影: HORI  )

彼女たちのステージを観れば、それは一目瞭然(いちもくりょうぜん)だ。

例えば、日本を代表する和太鼓演奏者の1人、金子竜太郎さんとのコラボでは、男性性と女性性をテーマにメッセージ性のある作品となっている。

彼女のレッスンでは、踊りながら言葉にならない「温かい涙」を流す生徒が多いという。常に効率や正解を求められる頭(思考)のスイッチを切り、ただ自分の身体の感覚を味わう。技術の巧拙や他者との比較を手放し、自分のありのままの身体をさらけ出して表現する。

ぼくが何より胸を熱くしたのは、ナシャールさんが指導者としてトップダウンで生徒を引っ張るのではなく、「安心安全な場をホールドする」ことに徹している点だ。

彼女の純粋な「生命を肯定したい」という情熱が、生徒たちの内側から湧き上がるワクワクするエネルギーと深く共鳴し、スタジオ全体が自発的な熱を帯びていく。

(撮影:Hiromi Suzuki)

コントロールを手放し、他者の生命力が花開くプロセスにただ寄り添い、共に心を震わせる。その自走する温かい空間に触れたとき、ぼく自身の魂も深く共鳴するのを感じた。

波音と溶け合う祈り。海を越えるシスターフッド

「輝きたいのに輝けない」「自分を解放する時間が欲しい」と求める女性たちが、自らの身体を差し出して表現し、美しく花開いていく。その静かな感動は、やがてスタジオの枠を超え、葉山の海辺から世界へと広がる大きなうねりとなっていった。

ナシャールさんが自身のルーツである葉山・一色海岸の「UMIGOYA(ウミゴヤ) Beach House」で、19年前からライフワークとして続けているチャリティ・ベリーダンスショー『Blissful Blue』だ。

「壁をバックにするのではなく、見る人が海をバックにダンサーが現れる情景を作りたかったんです」

(撮影:  Tsutomu Fujita )

彼女の強いこだわりのもと、夕暮れから夜へと移り変わる空、絶え間ない波の音、潮風という自然の息吹とダンサーが完全に溶け合う。それは単なるショーではなく、演者と観客の垣根を超え、その場にいる全員のエネルギーが一つに響き合う極上の空間だ。

さらに、このイベントの収益金は、インドの農村で教育を受けられない女性たちの支援を行う日本のNPO法人「アーシャ=アジアの農民と歩む会」へと寄付されている。

日本の海辺で、自らの女性性を謳歌し、生命を賛美する喜びのエネルギーが、海を越えてインドの女性たちの自立という未来を育てていく。これこそが、彼女が体現する地球規模のシスターフッド(姉妹愛)なのだ。

「人生を生き抜いて、最後の最後に旅立つ時。自分が踊っていた美しい光景が目に浮かんでくれたら。そして、ご自身の美しさを抱きしめて旅立ってもらえたらうれしいです」

誰かの決めた「A評価」のために命を削るか。それとも、不器用なまま「自分の命の美しさ」を抱きしめて生きるか。

来る2026年8月21日(金)。今年も葉山・一色海岸の「UMIGOYA」で、この愛と祈りに満ちたチャリティショー『Blissful Blue vol.17』が開催される。

社会のルールに息苦しさを感じ、自分をすり減らしてしまっている女性たちへ。 

ぜひこの夏、葉山の海辺へ足を運び、ナシャールさんの圧倒的な情熱と、周囲と響き合うシャクティ(女性性)のエネルギーの渦に直接触れてみてほしい。

打ち寄せる波の音と神々しい祈りのダンスが、あなたの中に眠る「本当の美しさ」を、きっと呼び覚ましてくれるはずだ。

※写真はすべてナシャールさん提供

情報

イベント&ナシャールさん情報
チャリティショー『Blissful Blue vol.17』
詳細:
https://ameblo.jp/nashaal/entry-12973624905.html
Instagram: https://www.instagram.com/nashaal_barbara/
YouTube:ベリーダンサーのナイショ話−踊るように自分を好きになる100日https://youtube.com/@nashaal_dance?si=rXe_b3U8zN1ehbGo
お問い合わせ(LINE): https://line.me/R/ti/p/@616rmhld 

松井創

松井創

コミュニティ設計とムーブメントの専門家。著書『人はなぜコミュニティをつくるのか』。主宰者なしでも育つ自走コミュニティを多数創出。「世界観で仲間を集める」世界観ムーブメント提唱。角打ちマイブランド展開中。ADHD特性を持ち“苦手をゲーム化”ボドゲで脳の回路を書き換える力を見出す。

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