6月に入ってから、近隣のアウトドア情報に詳しい友人たちがにわかにSNSで取り上げるようになった「パックラフトで絶景『瀞峡(どろきょう)』川下り!」ツアー。パックラフトというボートで絶景の瀞峡の川下りをさせてくれるとのこと。興味津々でいましたが、つい先日、願いが叶って体験をしてきました。瀞峡とは?パックラフトとは??中身もさることながら、ツアーの運営をされている「くまの・川遊び部」の部長さんも魅力的だったので、こちらでご報告させて頂きます。
►都市部から車で半日。たどり着くのが困難な秘境「瀞峡」とは
瀞峡という場所をご存じでしょうか?奈良県・三重県・和歌山県にまたがる31キロに渡る大渓谷のことを言います。特に下瀞(しもどろ)と言われる、約1.2キロメートルが最も美しいと言われ、瀞八丁(どろはっちょう)と呼ばれており、国の特別名勝・天然記念物に指定されています。
渓谷に沿って3県の県境が存在し、吉野熊野国立公園の一部にもなっています。アクセスの良い下流の施設から向かう大型のウォータージェット船が運航されており、観光バスなどで訪れる方も多く人気があったのですが、新型コロナウイルスなどの影響を受け、ジェット船は休止になってしまいました。そのため、現在訪れる手段は車が主。バスは1日数本だったりで、行くのは困難を極めます。大阪や名古屋などの都市部から車で向かうと半日ほど見込まないとたどり着けません。まさに秘境の名にふさわしい場所かと思います。
►持ち運びが容易で一緒に旅ができるゴムボート「パックラフト」
パックラフトは、アラスカ生まれの小さく梱包できるゴムボートのことだそうで、旅の道のりで山だけではなく川も自力で越えるために作られたそうです。日本ではコンパクトに収納でき、車での持ち運びが容易なため、アウトドアが好きな方には密かな人気になっているそう。
私は初めて知りましたが、重量も2~3キロほどで、計量でコンパクト。イメージだけなら頑丈で大きな浮き輪に近い感じです。
折りたためるオールもついていますし、ボート内には背もたれもついています。空気を入れる機械であっという間に膨らみ、片付け時の空気の抜ける様はびっくりするぐらい一瞬でした。短時間で準備も撤収も整えることができる優れものだなという印象です。
►川との距離が近くてエンジン音なし。ダイレクトに絶景を堪能できるパックラフトの川下り
体験させて頂いたツアーですが、三重県熊野市紀和町の道の駅で集合。車を各所にまわしながら、奈良県の十津川村から川へ入れる「田戸」からのスタートでした。車で瀞峡に向かうなら必ず訪れる瀞八丁の上流です。
駐車場でボートを膨らませ、自分で運んで川までおります。大きいですが、重くはなく、問題なく川まで持ち運びができます。
スタート前に、オールの使い方を教えて頂き、いざスタート!
この日は風が凪いでおり、水面の映り込みもきれいでした。何度足を運んでも飽きないこの景色!素晴らしいと思いませんか?
いざ漕ぎ始めたパックラフトですが、難しくありません。慣れてきたら興味のあるものに自ら近づけます。小回りの利くボートなので船では近づけない岩場にも接近が可能です。水位次第では上陸したりできます。いつもは遠目で見る谷間の浅瀬に上陸し、滝で水を飲ませてもらいました。本当においしい!
なによりも、川との距離も近く、船のエンジン音がまったくしないため、自然の空気と音をダイレクトに感じることができます。聞こえるのは水の音と森の音と鳥の声。
休憩中にボートに足を投げ出し仰向けになると、とても静かなのに安心する…自然に包まれている感じがします!これは是非体験してほしいことの一つです。とても癒されるひと時でした。
体験させて頂いたツアーは1日コースとなっており、絶景の瀞峡を抜けてからもまだまだ川下りは続きます!和歌山県新宮市の「玉置口」でお昼を頂き、後半はまさに川遊び!
瀞峡を過ぎたらどうなるんだろう…と正直思っていましたが、川幅が広がり、景色は一変されて開放的です!瀞峡とは違った美しさ!ところどころで現れる急な流れで大はしゃぎしながら川を下り、気づいたらあっという間にゴールでした。
1日で、まったく違う川のツアーを2回体験させてもらった気分です。今回は三重県の紀和町にある小川口でゴール。一日中遊ばせて頂き大満足でありました。
►熊野の川や滝に魅せられ県職員からガイドに転身!「くまの・川遊び部」佐竹部長
今回のツアーをガイドしてくれたのは佐竹剛さん(44)。大阪市出身。大学生時代に山野を徒歩旅行し、自然の中で自主的生活をする事を主体とするワンダーフォーゲル部に所属。夏は日本アルプス縦走や、熊野古道歩きなどを行い、谷や沢を水の流れに従って遡っていく登山である沢登りもされていたそうです。大学卒業後に和歌山県の職員となり、紀南エリア担当だったことで、ガイド業がしたいと決意されたそう。その時に、偶然タイミングが重なり三重県の地域おこし協力隊となり、三重県の紀宝町に移住をされました。任期中は紀宝町でリニューアルオープンした「飛雪の滝キャンプ場」の運営に携わり、イベントやアクティビティを提供し、現在も人気となっています。協力隊の任期は2020年12月に終了し、現在ガイド業に本腰を入れて活動を始めたばかりです。
熊野というと「熊野三山」や「熊野古道」と称される世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」が有名ですが、エリア一帯の自然がとても豊かです。降水量も多く水がとても豊富。川の透明度が抜群で、紀伊山脈がたくさんの滝を作り出しています。「世界遺産は注目されているけど、それ以外で何かできないか?あまり知られてない熊野の川や滝だって注目されてもよいはずだ!」と川や滝のアクティビティに特化したツアーを企画しています。
そんな川や滝に魅せられた佐竹さんが、「沢登り部」とはせず、「川遊び部」として活動をしているのは「ハードルを下げることで、たくさんの人に熊野に来てほしい」という思いから。佐竹さんに相談すれば、老若男女問わず、お子様からペット連れまで、スケジュールに合わせ、その人の体力で一番楽しめるものを提案してくれます。
今回体験させて頂いた瀞峡パックラフトツアーも川遊び初心者が体験するのにうってつけ!そして、経験豊富な佐竹さんがいることで、とても安心して遊ぶことができます。
「人が集まればそこに仕事が生まれる。道も整備される。川遊びを通して熊野をもっと元気にしたい!遊びに来た人も、住んでいる人もみんな元気になってほしい」
活動を本格的に始めたばかりの佐竹さんですが、協力隊時に培った繋がりを活かしてたくさんの方を巻き込んで楽しいことをしてくれると思います!
夏の熊野は湿度が高く、低山が多いため、古道歩きや山登りより断然水遊びがおすすめです。「くまの・川遊び部」部長の佐竹さんに知られざる熊野の川の魅力を教わりに行けば、思わぬ体験ができること間違いなしですよ。
今回、写真の多くは佐竹さんの提供です。
ガイドをしながらたくさん写真を撮ってくれます。帰りに共有してくれるので、水遊びでカメラが心配という方も思い出がいっぱい残ります。秘境に足を運ぶなら…見るだけじゃもったいない!是非体験をしてみてください。本当におすすめです!