「サーフィン」
オリンピック種目にも選ばれ、最近はメディア露出も多くなるにつれ、愛好家も増えつつあるスポーツ。波と戯れ、味わえるスピード、爽快感。自然と対峙する事により享受できる様々な教訓を得ることが出来ます。
1990年代中頃、宮古島へ初めてサーフィンを持ち込んだ「池間敏昭(いけま・としあき)」さん。長年の活動から積み上げた経験と実績で宮古島周囲エリアのサーフィンスクール及びガイドを2009年から続けています。今回は宮古島で長年営業する「池間」さんに話を聞いてみました。
宮古島の海を求めやってくる観光客が安心・安全に海を楽しめるように.
池間さんは1998年頃から砂山ビーチを拠点にサーフィンしていたところ、あまりにも遊泳者の事故が多いため、地元のサーファーとボランティア監視員をしていると、当時の平良市(現宮古島市)から監視員業務を正式に委託されたとの事。
海を熟知していること、また救急救命講習、救命講習を修得済みである事から信頼された事が推測できます。
複雑な地形により派生する要因(砂の堆積度合いで流れが変わり、場所によっては極端な水深の差(例:水深50cmの1メートル隣が水深3メートル)などの要因から起こり得る事故の話は昔から多く、地元の人たちはまず遊泳しません。
ところが美しいビーチ、ブルーの海、アーチ岩を初めとする風光明媚な名所でもあるので、遊泳する観光客は絶えません。
2000年から現在まで以下の水難死亡事故が起きています。
2000/9月 鮫による咬傷死亡事故 琉球新報. (2000年9月17日)
2014/7月 観光客2人台風余波に流され溺死 宮古毎日新聞. (2014年7月11日)
2014/8月 観光客2人流され溺死 宮古毎日新聞. (2014年8月15日)
2018/8月 地元男性遊泳中に溺死 宮古毎日新聞.(2018年8月1日)
危うく事故になりかけた件数はもっと多いだろうし、サーファーが救助した人々も数多いため「池間さんたちがいなければ、どれだけの人が事故にあったのだろうか?」と取材が進むたびに考えたものです。
その中で2008年に海水浴場指定解除となり、ライフガード委託も終了となります。
「青い海、白い砂浜。ようこそ宮古島へ」とスローガンを打ち立て誘致しながらも
「遊泳は自己責任」とする行政の矛盾に疑問を持ちつつも
「人は宮古島へ海を楽しみにくる。来場者の年々増加に比例し、予備知識のない観光客の水難事故は必ず増えるだろう」との思いから、「サーフィンのガイド、指導」も兼ねた事業所『宮古島 RAT サーフガイド&スクール』を立ち上げました。
日本ライフセービング協会やサーフライダーファウンデーション、宮古島サーフィン連盟と連携し、年間を通して島内各ビーチを巡回し安全についての啓蒙活動、後継者の育成に日々力を入れています。
目次
「ポイント特有のクセや最適な潮回りを把握したうえで入らないと、とても危険」宮古島でのサーフィン
まず最初に宮古島のサーフィン事情として大まかに言うと次の特徴があります。
①ほとんどのポイントがリーフブレイク(海底の珊瑚礁で波が形成される。浅く危険。)
②ピークが狭い
(波に乗れる位置が決まっており、ポイントによっては数人のみで楽しむ所も)
③干潮時には干上がるため、サーフィン可能時間は満潮を挟んだ前後2時間のみ。
宮古島は、あらゆる方向のうねりを拾いやすく、実際にそれぞれの方向にポイントが点在しています。
風とうねりの向きが解れば、ある程度は目指すべき場所の想像がつきますが、ほとんどのポイントがリーフブレイクなので、ポイント特有のクセや最適な潮回りを把握したうえで入らないと、とても危険です。
また、サーフィンのポイントとして整備されていない場所がほとんどで、アクセスが農道に面したポイントも多い事から駐車方法や配慮が必要であり、サーフポイントである以前に地域住民が普段から使用している場所なので当然、リスペクトする心は必須です。
最近も某ビーチでサーファー2人が流され、一時漂流する事故が起きました。
ポイントを知らない人たちが起こす事故により、消防、警察、海上保安庁やライフガードが出動する事態が起こることで地元サーファー達は心を痛めています。
「今一度、地元の人と繋がりを持つこと、リスペクトする心を持つことの重要性」池間さんが伝えたい思い
「私が宮古島でサーフィンを始めた頃は道具もほとんどなく皆で使い回し、ウェアやボードで『どこの誰』ってわかったものです。そしてサーファーも身内だけだった。事故のないように日々情報を共有し、コミュニケーションを取らざるを得なかった。命に関わる事なので、初心者にはしきたりについて厳しく教えたものです。」
インターネットの手軽さから、波を検索しアプリで予想、友達同志で気軽に入水するなど、サーフィンをネットから得た知識のみで始めた人たちも多く、地元の人とコミュニケーションを取らずに現地の注意すべき点、ルールやマナー順守の欠如で漂流や大怪我をし公的機関が出動することもしばしば。
「今一度、地元の人と繋がりを持つこと、リスペクトする心を持つことの重要性。
これは日本だけではなく、世界共通のルールだと考えています」と池間さん。
続けて、「近頃宮古島でも人気のあるジェットスキーやSUP(スタンドアップパドルボード)なども含むマリンアクティビティを楽しむ人達にも言える事です」。
丁寧に言葉を選び紡ぎ出すその姿には「宮古島の海を安全に楽しんで欲しい」思いが滲み出ています。
宮古島でサーフィンをする人、サーフィンで来訪する人たちへ、大事なのは「そこにいる皆んなでサーフィンの楽しみを分かち合うこと」
現地を熟知しているのは「地元に住んでいる人」旅先を安全に楽しむためにも「是非現地のガイドを活用してください」と池間さん。
「ポイントを開拓し日々守っている人達への配慮を持ち、その中でサーフィンを楽しむ」
現地の人とのコミュニケーションも大切であり、旅の思い出の一コマになることでしょう。
宮古島の青い海、白い砂浜、鮮やかな珊瑚礁を楽しみに来島したのにも関わらず、
悲しい結果が起こる「本末転倒」にならない様、訪問する側も「現地の情報」を気にする必要があるのではないでしょうか?
「島への思いを、未来へつなぐために」
長年ライフセーバーとして活躍した実績の延長でライフセービング活動も沖縄県ライフセービング協会と正式にチームを組み、宮古島ライフセービングクラブとして巡回活動や海の安全啓蒙活動、救命蘇生術訓練の開催、参加など海での事故を防ぐ取り組みも継続的に参加しています。
宮古島の環境を残す責任を強く持ち、キッズサーファーへの支援活動、サーフィン連盟と連携し、サーフィン大会開催、ポイントの清掃及び長年継続している「トライアスロンレスキューボランティア活動」など、地域貢献にも積極的な姿勢で取り組んでいます。
「そこにいる皆でサーフィンの楽しさをシェアしたい」
個人スポーツである分、モラルに欠けた人たちも見かけることも。
サーフィンを始めたばかりの人も、エキスパートも、ローカルも巡礼者も同じフィールドで楽しむことを理想とする池間さんの思いは、宮古島の自然や文化と重なる、
「心優しい素朴な宮古島の人」を感じずにはいられませんでした。
64歳過ぎてもなお日々、進化する彼のサーフィンに加え、地元「宮古島」への熱い思いはとめどなく溢れ、行動し続ける「池間さん」。
様々な人々の架け橋となり、水難事故がなくなるその日を目指す姿は「島の貴重な宝物」の一つであり続ける事でしょう。
※撮影協力:平松麻希さん
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