
ベトナム中部の古都、ホイアンを歩くと、まず目に入るのが無数のランタンである。赤や黄色、青といった鮮やかな色彩が、街全体をやわらかく包み込んでいる。
この街のランタンが特別なのは、その数の多さだけではない。ひとつひとつの作りがしっかりしており、どこか品のあるたたずまいをしている点にある。竹で組まれた骨組みに布や絹を張る構造は、軽さと耐久性を兼ね備え、折りたたみも可能である。観光用の装飾でありながら、生活に根付いた工芸品としての完成度が高い。
かつて国際貿易港として栄えたこの街では、中国の灯籠(とうろう)文化とベトナムの職人技が融合し、独自のランタン文化が育まれてきた。その歴史が、現在の風景の美しさへとつながっているのである。


目次
世界中から人が集まる、“撮るための街”
黄色い壁にブーゲンビリアの花、そこから落ちる木もれ日は、ホイアンらしいレトロで可愛い風景である。
さらに夕暮れが近づくにつれ、街の空気は少しずつ変わっていく。ランタンに灯りがともり始めると同時に、人の流れもまた変わる。
ホイアンには、世界中から観光客が訪れている。店の壁の前やランタンの下では、多くの人が足を止め、それぞれの「一枚」を求めてシャッターを切っている光景があちこちで見られる。
特に印象的なのは、その中にいる人々の振る舞いである。ポーズを取り、光の当たり方を確かめ、何度も撮り直す。その様子は、いわゆるインフルエンサーのようであり、これほど多くの“撮ることを目的にした人々”を一度に見かけたのは初めてのことであった。


アオザイをまとうことで、風景の一部になる
そんなホイアンの体験をより印象的にしてくれるのが、アオザイのレンタルである。旧市街には気軽に借りられる店が多く、観光の一部として自然に取り入れることができる。
身体に沿うシルエットと、風に揺れる布の流れ。アオザイは、ランタンのやわらかな光と非常に相性が良い。歩くだけで絵になるこの街において、その効果はさらに際立つ。
周囲には、同じようにアオザイとノンラー(葉でつくられる円錐形の帽子)をまとい、撮影を楽しむ人々の姿がある。その中に身を置くと、自分もまた「見る側」から「見られる側」へと立場が変わっていく感覚がある。


写真を“撮る場所”から、“つくる場所”へ
ホイアンの面白さは、ただ美しい景色があるだけではない。光、色、衣装、人。そのすべてがそろうことで、写真は単なる記録ではなく「つくるもの」へと変わる。
どのランタンを背景に選ぶのか。どの角度で光を受けるのか。動きを入れるのか、静けさを切り取るのか。その選択の積み重ねが、一枚の印象を大きく左右する。
観光客がインフルエンサーのように振る舞うのも、無理はない。この街では、誰もが自然と“表現する側”へと引き込まれていくのである。





■筆者が訪れたアオザイレンタル屋さん
Sweet Hoi An (スイート ホイアン)
ホームページ: https://sweethoian.com/
営業時間: 7:00~21:00
※2026年3月現時点の料金
・アオザイレンタル︰150,000VND〜600,000VND/着/日
・メイク:350,000VND/1人
・メイク+撮影:1,200,000VND/2H~
※写真は全て筆者が撮影(2026.03.23)





