「SL」が鬼怒川観光を変える?温泉だけじゃない、大人も子供も夢中になる「本物」の体験 【栃木県日光市】

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栃木県を代表する温泉地・鬼怒川温泉。
昭和から平成初期にかけては団体旅行の定番として多くの観光客でにぎわったが、旅行スタイルの変化や団体客の減少を背景に、営業を終えたホテルや旅館も少なくない。

今回、家族旅行で鬼怒川を訪れ、車で温泉街を走っていると、営業していない宿泊施設をいくつも目にした。一方で、駅前や観光施設には家族連れや外国人観光客の姿があり、街には新しいにぎわいも感じられた。

実際、鬼怒川・川治温泉の年間宿泊者数は2025年に約120万3千人となり、6年ぶりに120万人台を回復した。外国人宿泊者数も2年連続で5万人を超え、観光需要は回復傾向にある。

そんな鬼怒川観光を支える新たな魅力の一つが、「SL大樹」だ。

「SLは電車旅」という思い込み

今回の旅行で最も驚いたのは、SL大樹は「鉄道旅行をする人」のためだけのものではなかったことだ。

もともとは、下今市駅にある転車台やSL展示館を見学する予定だった。しかし調べるうちに、鬼怒川温泉駅から下今市駅まで約35分で実際にSLへ乗車できることを知った。

さらに、駅周辺に車を止めれば往復約1時間ほどで体験できる。
「SLに乗る=電車旅」そんな先入観があっただけに、車で旅行しながら気軽に組み込める観光コンテンツだったことは、大きな発見だった。

「乗る」ことが旅の目的になる

発車と同時に鳴り響く汽笛。黒煙を上げながらゆっくり走り出す蒸気機関車。

写真で見るのとは全く違う迫力があった。
2歳の息子は突然の汽笛に驚き、一瞬泣き出してしまったほどだ。

しかし、それも含めて「本物に触れた体験」になった。車内には子ども連れだけでなく、友人同士やカップル、シニア世代など幅広い年代が乗車していた。鉄道ファンだけの乗り物ではなく、誰もが楽しめる観光体験へと広がっていることを実感した。

地域全体で迎えるSL

印象的だったのは、ホームだけではなかった。駅員や沿線の人たちがSLに向かって手を振り、それに乗客も自然と応える。

「地域みんなでSLを走らせている」そんな温かい空気が流れていた。

下今市駅では、転車台やSL展示館を見学した。
2017年のSL大樹運行開始に合わせて整備された施設は新しく、展示を見るだけでなく、SLを学び、乗り、体験できる空間になっていた。売店には鉄道グッズも充実し、子ども向けだけでなく大人も思わず手に取りたくなる商品が並ぶ。

東武鉄道によると、SL大樹は2017年の運行開始以来、2024年3月に累計乗車人員50万人を突破した。日光・鬼怒川エリアへの誘客を目的とした取り組みは、多くの観光客に支持されている。

「泊まる観光」から「体験する観光」へ

鬼怒川温泉といえば、温泉旅館に泊まることが旅の目的だった時代が長く続いた。しかし今は、その楽しみ方が少しずつ変わり始めているように感じる。温泉に入り、自然を楽しみ、SLに乗る。

SLを体験する移動そのものが思い出になり、街全体を巡る体験へと旅の価値が広がっている。SL大樹は単なる観光列車ではない。温泉地の新たな魅力をつくり、地域を盛り上げる存在として走り続けている。

今回の旅を通じて感じたのは、「SLに乗れて良かった」という満足感だけではなかった。
時代の変化に合わせながら、新しい観光の形を模索する鬼怒川温泉の姿が、そこにはあったように感じた。

※写真はすべて2026年7月25日筆者撮影 

森下文望

森下文望

東京都大田区生まれ、千葉県流山市育ち(2歳から千葉県民となり、現在も千葉県在住です。)
現在は2児の母となり、お酒(特にビール)と食べ歩きが好きで、地方へ遊びに行った際はそこの郷土料理や地ビールを楽しんでいます!

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