〜この記事は、株式会社JTBふるさと開発事業部と合同会社イーストタイムズが共同で取り組んでいる「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」から生まれたハツレポです〜
3000m級の山々を有する立山連峰のふもと、富山市南部に位置する「竹田牧場」は、3世代と半世紀続くファミリー牧場です。10年ほど前、地域でも早い段階でジャージー牛を導入して、搾りたての牛乳を使った「竹田ジェラート」が好評を得ています。今回は、「竹田牧場」の代表である竹田満裕(たけだ・みつひろ)さんに、おいしいジェラートを作り出す牧場の仕事へのこだわりについて伺いました。
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「このまま牛乳搾っても面白くない」と、ジャージー牛を導入
「竹田牧場」は満裕さんの祖父が自宅兼酪農場として始め、満裕さんが生まれた1975年に父親が現在の場所に移転しました。「子どもの頃、牧場は遊び場でした」と語る満裕さんは、両親の働く背中を見ているうちに「長男というのもあり、やるのは自分なんだろうな」と、次第に牧場を継ぐ意識が芽生えたと言います。そんな折、父親が若くして亡くなってしまい、満裕さんは20代で牧場を継ぐことになりました。
牧場では、もともと2棟ある建屋の両方に牛をつないで100頭近くのホルスタインで搾乳していましたが、満裕さんが継いだ後は働き手も少なくなり、牛の数を40頭ほどに減らしたと言います。
しかし今から約10年ほど前、満裕さんが「このまま牛乳を絞っても、なんか面白くない。違うことがしたい」と、ジャージー牛を導入しました。
ただ、ジャージー牛は乳成分の高さが魅力とはいえ、「我々酪農家は牛乳を搾って販売して生計を立てているけど、ジャージーだとホルスタインみたいに乳量が出ないんです」と、満裕さんは語ります。
しかも当時は近隣でジャージー牛を飼育している牧場が無く、満裕さんは県外の牧場まで見学に出かけるなど、努力を積み重ねるうちに年々ジャージー牛の頭数が増えていきました。現在はホルスタインとジャージー牛を合わせて120頭ほど飼育しており、搾乳量も安定しています。
飼料にこだわり循環型の環境に優しい酪農を実践
「竹田牧場」は、牛のエサに無添加の飼料、自家産の飼料イネ、豆腐屋さんのおからなどを使用しています。もともと稲作も行っていたため、現在でも牧場経営しながら飼料イネの田植え、稲刈りまでを行い「休みは冠婚葬祭の時くらい。ほとんど無い(笑)」と、満裕さんは語ります。
また、牛のフンは牧場の畑に使用しているほか、昨今の肥料の高騰で地域の稲作農家より有機肥料に使いたいとの要望もあり、提供しているとのことでした。「竹田牧場」は、まさにSDGsにつながる、循環型の環境に優しい酪農を実践しています。
立山の天然水で育つジャージー牛のジェラートで「富山を味わう」
そんな安心、安全なジャージー牛乳を使って「新しいことをやりたい」と、満裕さんが考えたのがジェラートでした。自ら甘党という満裕さん。濃厚な牛乳を利用できること、そして冷凍して廃棄のロスを防ぐことができる、日持ちするというのも理由です。
「生産者側なので、販売は得意じゃない」と、ジェラートは業者に委託して製造。試作を繰り返し、満裕さんは「濃厚なジャージー牛乳の味を生かしたかったから、フレーバーの味は抹茶、チョコレートなど極力シンプルにすることを心がけました」と、語ります。中でも一番人気は、濃厚ミルク。朝に搾ったフレッシュな牛乳を、自らが委託業者の工場に運んでいます。今後の展開として、「知り合いの農家さんが作っているイチゴや富山の呉羽梨などをフレーバーにしたい」と、満裕さんの夢は広がります。
取材を通して、牧場の仕事は天然のエサを牛たちに与えるために稲作まで行い年中働きづめであると聞き、ジェラートのおいしさは、良いものを提供するためのたゆまない努力によるものだということを、改めて実感しました。
最後に、酪農を通じて地域と一緒に富山を盛り上げようとする「竹田牧場」の満裕さんから、「竹田ジェラート」を購入してくださるお客様へのメッセージをいただきました。
「富山県と言えば立山。竹田牧場は春になれば立山の雪解け水が流れ込む場所にあります。その水を使っている環境で育った牛たちから絞った牛乳、その牛乳を使ったジェラートを思う存分に味わってほしい。富山を味わってほしいです」。