栃木県栃木市の中心部にある嘉右衛門(かうえもん)町は「国選定重要伝統的建造物群保存地区」に指定されている。漢字が多いが、ざっくりいうと、ここには文化財としての価値がめちゃくちゃ高い建物があるぞ!と国が選んだ場所のことだ。そんな文化的な建物が立ちならぶ一方、新しい素敵なお店も増えてきていることから、嘉右衛門町は栃木市のホットスポットの1つとして注目されている。
嘉右衛門町の文化的価値が高い理由…そのヒントは徳川家康にある。この町には、日光例幣使(れいへいし)街道というものが通っていた。これは、朝廷の使者が徳川家康をまつる日光東照宮へお供え物を持っていくために使った道のことである。日光例幣使街道沿いは、宿場町として栄えたのちに大規模な商店街へと姿を変えていった。このため、嘉右衛門町には歴史的な建造物が立ち並んでいるのだ。
まずは伝統的スポットのご紹介。
嘉右衛門町は何度歩いても別世界にきたような気分になる。木造瓦屋根というなかなかお目にかかれない建物が大切に保存されている街並みは、まるで映画のセットのようだ。なかでも「岡田記念館」は嘉右衛門町を代表する旧家で、館内の見学もできる。実際に映画やドラマの登場実績もあり、貴重な美術品は一見の価値アリだ。
つづいて江戸時代からつづく「油伝味噌 田楽あぶでん」!登録有形文化財である建物の一角に店舗があるあぶでんは、田楽をはじめ、お味噌・甘酒などを販売している。夏季は甘酒のかかったかき氷が期間限定メニューとして登場するなど、世代を問わず長く愛されいているお店だ。江戸時代の嘉右衛門町に思いをはせながら食べる田楽は絶品!ひと休みにはうってつけのスポットだ。街歩きの醍醐味、それはひとやすみにあるのかもしれない…。
もう1つ、街歩きで見つけた魅力満点スポットがある。戦後まもなくから続くお菓子屋さん、廣田菓子店だ。お店の窓に貼られた毛筆の文字「すいとぽてと」がどうしても気になり立ち寄ったのだが、この判断は大正解だった。店内に足を踏み入れた瞬間、おもわず「ただいま!」と言ってしまいそうになる懐かしさと温かさ。あぁ、また素敵な場所を見つけてしまった。パッと見たところお目当ての「すいとぽてと」はなく、あきらめ半分にお店の方にたずねたところ、ラスト1「すいとぽてと」がお店の奥から登場!金色にかがやく「すいとぽてと」のまぶしさに目を開けるのがひと苦労だった。
今回はすいとぽてとと黒糖まんじゅうをいただいたが、お店の雰囲気とおなじく優しい味で、お店が長続きする理由が恐縮ながら分かった気がした。とくに「すいとぽてと」は皮ごと食べられるつくりになっていて、素材を丸ごとたのしめるまさにサステナブルなお菓子だ!嘉右衛門町を訪れたら、「冷やし中華はじめました」ならぬ「すいとぽてとあります」をぜひ見つけてほしい。
お次は新しいスポットをご紹介したい。どこも昔ながらの蔵を活かした建物をつかっていて、懐かしさと新しさのフュージョンを見事に成功させている。
2018年1月6日に開業した「Spirée fleuriste」は、蔵づくりの建物のお花屋さんだ。重要な建造物をリノベーションしてつくったお店で、古い建物の中にある花たちは自然の中に溶け込んでいてとても綺麗だ。わたしは余裕があれば部屋に花を飾るタイプの人間なのだが、Spirée fleuristeにある花は見たことのない種類が多くとてもワクワクする。
オーナーの芹澤さんにお話を伺うと、パリで花の勉強をした経験があったり、仕入れに東京まで赴いていたりと、花が好きだという真っ直ぐな思いを話してくださった。好きなものと毎日向き合う芹澤さんがとてもキラキラしていて、素敵な生き方をされていることが伝わりとても感動した。
「物華 工藝と喫茶」は100年以上つづく蔵を改装したお店だ。喫茶店とショップを兼ねそなえており、落ち着いた空間の中にとけこむ工芸品が実に魅力的である。イチオシは自家製プリン!カラメルがプリンの素材の味を引き立てて、口いっぱいにプリンの味が広がる。蔵とプリンの組み合わせは、どんな人でもグッとくるにちがいない。非日常を味わいたときにぴったりの空間だ。
これからまだまだ活性化しそうな嘉右衛門町。古きよきものを活かしつつ、新しい物が生まれていく様子は、嘉右衛門町にとって理想の街づくりに思う。その素敵なストーリーをこの目でしかと見届けたい。
参照:栃木市ホームページ:https://www.city.tochigi.lg.jp/soshiki/5/1568.html