千年に一度の大震災と言われた東日本大震災が起きてから、今年で10年が経った。津波により被災した人々の想いを全国や後世に伝えていこうと、キャンドルを作り、灯す活動をしている人々が宮城県気仙沼市にいる。「ともしびプロジェクト」と名付けられたその活動で使うろうそくを、自分たちのキャンドル工房で作ってきた。「千年に一度の大震災と呼ばれた出来事を、千年先まで伝えたい」。代表の杉浦恵一さん(35)は、キャンドル工房に込めた想いを語る。【連載:灯し続ける人々②】
東日本大地震にて、甚大な被害を受けた気仙沼市。震災ボランティアとして気仙沼を訪れた杉浦さんは、「この記憶を忘れないで」という地元の人の声を耳にした。杉浦さんらは、「灯す」という行為を通じて、震災の記憶を伝える「ともしびプロジェクト」を、2011年11月から始めた。毎月11日に、ろうそくに火を灯す「ともしびプロジェクト」の参加者は、SNSを通じて全国、そして世界へ広がっていった。
ともしびプロジェクトが、自らキャンドルを製作し始めたのが、「キャンドル工房」だ。キャンドル工房は、2012年に気仙沼市鹿折地区の「復幸マルシェ」にある仮設商店街からスタートした。設立時の苦労について、杉浦さんは次のように語る。
「キャンドル屋さんをやっていたメンバーで始めたわけではなかった。キャンドルの作り方もわからなかったし、どうやって販売していけばいいかもわからなかった。全部、一から作るのが大変だった」
その後、仮設商店を転々とし、2014年7月に現在の気仙沼市南町にキャンドル工房を移転した。南町のキャンドル工房は、津波で大きな被害を受けた建物をリノベーションして作られた。暖かい陽の差し込む店内には、色とりどりのキャンドルが並べられている。
「キャンドル工房」では、気仙沼市にある海岸や小泉、大谷、鮪立(しびたち)という地域の風景をイメージしたキャンドルをひとつひとつ手作りで製作している。キャンドル工房で作られたキャンドルには、「忘れないで」という気仙沼の人々の思いが込められている。
「共感者が増えること、その人に何かが灯された感じが嬉しい。一緒に千年、灯していきたい」と杉浦さんは語る。
杉浦さんの話を聞いて、千年に一度の震災を経験した私たちだからこそ、この出来事を後世に伝えていかなければならないと思った。「忘れないで」という想いを込めたキャンドルは10年、気仙沼市から灯されてきた。次の10年、そして100年は、気仙沼の人たちだけではなく、同じ時代を生きている私たちも灯していく番だと感じた。