2024年4月9日の午前、東海地方を強い雨風が襲った。これで桜は散ってしまうかと思われたが、午後になるとさわやかなまでに天気が回復した。偶然通りがかった三重県四日市市にある鵜の森(うのもり)神社では見事な桜を見ることができ、「今年のお花見はこれで満足!」と感じた。
いわゆる「お花見の名所」ではないが、「私だけのお花見ポイント」として、定点観測をしようかと考えている。
鵜の森神社は、近鉄四日市駅から徒歩数分。芝生の広場や市の管理する茶室「泗翠庵(しすいあん)」があり、神社を含め「鵜の森公園」として市民に親しまれているスポットだ。広場にも桜並木があり、その下で家族連れがお弁当を広げたり、BBQを楽しんだりする光景が見られる。が、今回、ご紹介したいのは、「そっちじゃない」桜である。
ちょっとお参りしていこうと、うっそうと緑が茂る社殿に近づいたところ、お隣りのお稲荷さんを飾る桜が目に飛び込んできた。桜と朱塗りの鳥居が重なり合っているのを見て、思わず足を止めた。社殿は陰になり、風に吹かれて揺れる桜は陽光と遊ぶようにきらきらと光っている。境内には掃除する方がいるだけで、この光景を独り占め。ワクワクして、つい、お参りもおざなりになってしまう。神様、申し訳ない。
お参りの後で、もちろん、お稲荷さんの赤い鳥居をくぐってみる。この中を歩くと、桜や鳥居に自分も入ってしまったよう。だれもいないので、トントン靴音が聞こえる。風が吹くと花びらが落ちてきて、なおのこと楽しい。境内の奥まった場所で、人間とはあまりかかわりなく遊んでいる桜たちのお仲間に、しばし入れてもらった。
あまり時間がなかったので桜と鳥居を写真に収め、ぐるりと公園内を歩いた。社殿が奥まったところにあるため行きづらい印象があり、私も「今日は掃除の方がいるからだいじょうぶだな」と確認してからお参りをしたのだが、奥まっているからこその発見だった。ほかの人にも知らせたいような、そのままにしておきたいような、そんな気持ちがする場所である。