開花を見守り続けた70年。朽ちた姿の「桜橋」に吹き始める、新しい風【秋田県秋田市】

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桜橋を自転車で渡る人。2023年4月15日撮影

春は桜。樹齢70年を超えるソメイヨシノの並木を見渡せた「桜橋(さくらはし)」。昭和23年、秋田県の広山田村(現:広面地区)と下北手村(現:桜地区)との間に架かる木造の橋として、今も秋田市に残っています。

地域住民が植樹したという桜の木々は、毎年花を咲かせ、行き交う人たちに春の訪れを感じさせてくれますが、2023年7月の記録的大雨で一級河川「太平川(たいへいがわ)」の水位は上昇し、橋の中央部は突き流されてしまいました。

かつては主要道路として、多くの人が行き交った桜橋。もう渡ることができなくなった今だからこそ知り得た、桜橋の70年を振り返りたい。

◆かつても、桜橋は木造だった◆

芽吹き始めた桜の木々と朽ちた桜橋が写る、晴れた朝。「桜大橋」より撮影

「昭和23年発行の国土地理院の航空写真に、うっすらと木造の橋が見えており、現在の桜橋とほぼ同じ所に位置するため、木造の橋はその頃には存在しました」と話すのは、秋田市道路維持課課長の工藤暢(くどう・とおる)さん。

今どき木で作られた橋はとても珍しい気がしますが、秋田市には主要部材の半分が木で構成される橋は、桜橋以外に5つあるとのこと。

橋台(きょうだい)は年代物のコンクリート製に見えますが、いつからあるのか不明だそうです。朽ちた姿は史跡にも似た風合いを感じさせます。

桜橋の橋台と樹齢70年を超える桜の木。2023年4月15日撮影

◆木と人の温もり、そして桜を愛でる◆

「桜橋は、木の温もりと昔ながらの手作り感があったよね」と話すのは、桜橋の近くに住む、私と同じ中学校に通っていた福島美和(ふくしま・みわ)さん。

長さ25.18m、幅は2.18m、人や自転車が通れるほどの桜橋は、自然木のような足の着地感で、橋の真ん中で満開の桜を眺めることを、今年も、私は楽しみにしていました。

桜橋には、近隣にある高齢者施設を利用する人たちが訪れて、桜と一緒に記念撮影をする風景があったと言う美和さんは、「寒い冬が終わってやっと春が来た、きれいだなぁっていうのを見るとね、こっちもうれしいなぁ」と話します。

桜を愛でる人の姿が微笑ましく、自分も幸せな気持ちになる。ここ数年で、私もそれを知りました。

かつて桜橋には、保育園の子どもたちが散歩にやって来て「わぁ〜っ!」と喜ぶ姿がありました。今年もそんな風景が見られたらと思います。

桜橋を渡ろうと、ベビーカーを押す女性。空に桜の花びらが写る。2023年4月15日撮影

◆桜橋は、暮らしの延長◆

「昔は今よりももっと大きな橋だったの。車も通ってたけど、交差できないから運転手がお互い車を停めてケンカし始めることもあってねぇ」と美和さんの義母、俊子(としこ)さん(79)は、懐かしそうにそう話します。

学校から帰ると、瓶を持って川の水を汲みに歩いたという俊子さんは、昭和30年頃の水害時、舟に乗って水難に遭った民家に握ったおにぎりを配ったことがありました。

「昔、ここらの村同士は家族のようなつながりがあったからねぇ」と俊子さん。

何十年もの時が経ち、ここ数年の間に、美和さんがよく見かけていたという、川の鯉に餌をあげる高齢の男性は、多分私の同じ町内に住む一人暮らしのおじさんであっただろうなぁ。

「鯉に餌をあげてみて?と言われ、パンをもらってあげてみたり、知らない人との会話が生まれる。久しぶりに見かけた人の元気な様子が見えたりと、桜橋はただふつうに通るためだけのものじゃなく、生活の一部だったんだって今思う」。

空高く泳ぐ福島家所有の鯉のぼり。2023年5月3日撮影

◆新たな息吹を感じて…◆

秋田県が管理する太平川の改修は現在、5〜6年計画で進行中ですが、「川をどのように改修するかによって桜橋の今後が決まる」と工藤さん。

川幅が広がると、橋を架け替える必要がある。川の水の流れを良くするため不要となれば、撤去もあり得るとのこと。

「桜橋がなくなっても、たぶん生活はできる。だけど、あたりまえのように映っていた橋のある景色がなくなると、さみしいかなぁ」と美和さん。

「全面通行止」と書かれた看板を目の当たりにして俊子さんはこう話します。

「橋なんとかしてくれればいいなぁ。一日いっぱいこんなふうに見てるから、忘れることはできないもんねぇ…。時代の流れ、しかたないと言えばしかたない」。

平成17年の改修後、桜橋の渡り初めを経験した俊子さんは今、桜橋と共に過ぎた70年に新たな風を感じています。

取材後の夕暮れ、桜橋の前で。左から順一さん、美和さん、俊子さん

こどもの日が近づくと見えた鯉のぼり。「今年はね、無理なんでねぇがと思う。ここの橋あればね、そっち渡って行けるけど」と、桜橋の川沿いに毎年鯉のぼりをあげている美和さんの義父・順一さん。

※2022年4月桜橋より筆者撮影

「ず〜っと向こうまでだよ。ここらの人たちが昔に植えた桜。それが今ある。みんな見に来るよ、ここは観光地だからね」。

桜橋は朽ちた姿でも、自身と同じように年を重ねた桜の開花を、見届けることでしょう。

■桜橋へのアクセス

【車の場合】秋田駅東口より9分

【バスの場合】

秋田駅東口3番のりば・広面御所野線・バス停「広面宮田」下車、徒歩2分

秋田駅東口1番のりば・桜台線・バス停「桜橋」下車、徒歩8分

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田畑詞子

田畑詞子

秋田県秋田市

第1期ハツレポーター

1978年秋田県生まれ。清泉女子大学文学部英語英文学科卒。東京で就職後、いったん帰秋。2017年、横浜在住時にライター養成講座に通い、その後地元秋田でWeb記事の取材・執筆活動に携わるようになる。
日々の暮らしをブログに綴ったり、親しい仲間や縁遠くなった友人へ手書きのZINEを書いて送ったりと、書くことが好き。エッセイや小説へも関心がある。

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