石が意思を持って旅をするWA ROCKという遊び【秋田県北秋田市・大仙市】

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※2024年5月撮影 佐々木真理さんが描いたWAROCK

WA ROCK(ワロック)という遊びをご存じだろうか?石に絵や文字などを自由に描き、街中に隠したり、交換所とよばれる場所に置き、引き換えに気に入った石を持ちかえることができる。こうすることで、石が人から人の手に渡りあちこち旅をするという遊びだ。

国内のWA ROCKは秋田県北秋田市阿仁合(あにあい)地区で2017年からはじまった。

当時、西オーストラリアのパースで暮らしていたひとりの日本人女性が阿仁合を訪れた際、オーストラリアの友人が遊んでいた遊びを知り、自らも石に絵を描いて阿仁合の街にいくつかの石を置いたのが始まり。

「広めたい」その意思が地元の人に届いた

その女性がWA ROCKを広めたいと、地域の小学校を通して子どもたちに遊び方を記載したお便りを配ったところ、偶然石を拾っていた保護者の女性が、子どもが持ち帰ったお便りを目にして興味を持ち、その方を中心に阿仁合地区にこの遊びが広まっていった。

阿仁合コミューンというコミュニティスペースでWA ROCKのワークショップが始められ、阿仁合地区はWA ROCK作りの拠点として知られるようになった。

現在、公式のFacebook WA ROCK JAPANグループ(以下公式FBグループ)を運営するのは最初に石を拾い、お便りに興味を持った女性の夫、田中峰樹さん。北秋田市から発信されたWA ROCKという遊びに共鳴した人は増え続け、今やそのメンバーは1800人以上に及ぶ。

さらに拡大した「広めたい」という意思

※2023年8月5日撮影  大仙市協和市民センター和ピアにて開かれたワークショップ

2023年8月5日。秋田県大仙市協和市民センター和ピアで開かれたWA ROCKのワークショップ。大人から子どもまで思い思いに石に絵を描いた。

この地域ではWA ROCKを知る人はまだ多くなく運営側も手探り。そして参加する方も初めてという方が多かった。

「初めての人にもわかりやすく伝えたい」と、近くに住み普段からWA ROCKに親しんでいる田中さくらさんが会場に来た人たちに手ほどきをしてくれた。田中さくらさんの描く絵の美しさに子どもも大人も大喜びで、会場は多くの人で賑わった。

※2023年8月5日撮影 田中さくらさんお気に入りのWA ROCKと、WA ROCKのFBグループが公開している注意書きのリーフレット
※2023年8月5日撮影 田中さくらさんの製作途中のWA ROCK

そんな田中さくらさんを紹介してくれたのは、ワークショップの運営チームの佐々木真理さん。ふたりはWA ROCKが縁で知り合った。

佐々木さんもまた同地区に住み、美容室を構える敷地内に交換所を設置している。もちろん多くのWA ROCKを描いている。

※2024年5月撮影 佐々木さんの美容室ぽっぷ前の交換所
※2024年5月撮影 右下の福笑いのパーツもWA ROCK 訪れた人が変顔にしていくという粋な遊び(笑)!
※2024年5月撮影 佐々木さんが描いたWA ROCK 秋田県非公認ヒーローのあーまんがたくさん!!

小さなアートに意思を込める

※2023年8月撮影 サッカーの応援かな?

WA ROCKに使う石はどんな石でも良い。

「形や触った感触次第でその石に魂を込められる」多様性があるのが良いところ。

※2024年5月撮影 美容室ぽっぷ交換所にて OKサインの一部かな?リアル!
※2024年5月撮影 美容室ぽっぷ交換所にて 美郷町のラーベンダーさん!!
※2024年5月撮影 美容室ぽっぷ交換所にて ブック型も!横から見たら本のページのようにちゃんと線が描かれていた!
※2024年5月撮影 美容室ぽっぷ交換所から連れてきた筆者お気に入りの「稲ちゃん」

何気ない散歩で見つけた石が大変身を遂げる。石はキャンバスであり、もはやアート作品だ。ことばを書くこともでき、まさに石に意思を込めることができるのだ。

ルールを管理することでさらに意思が伝わる遊びに

公式FBグループを管理する田中峰樹さんは「たった一つの石が日本を旅して、各地の人とつながるのが、この遊びの素晴らしいところ」と話す。

※2024年5月撮影 佐々木真理さんのWA ROCKの裏書き、誰が描いたかわかるように店名の「POP」の文字が入る
WA ROCKの描き方
1.絵が描きやすそうな石を用意する
2.アクリル絵の具、もしくはポスカで絵を描こう!
3.絵が描けたら、塗料を保護するための上塗り材(透明ラッカースプレー)を使用
4.石の裏側に「WA ROCK JAPAN」とFacebookの「f」を油性ペンで書きます
「WA ROCK JAPAN」ではなく自分の住んでいる地域「WA ROCK〇〇(地名)」と描いてもOK!
※WA ROCK公式FBグループより引用

時に、草むらや芝生に隠された石は芝刈り機によって石が飛ばされる危険があったり、重要文化財や世界遺産、登山に伴う場所などは自然の景観を乱すことがあるため禁止されている。許可のない店舗や個人宅に置くのはもちろん禁止だ。

田中さんは公式FBグループの中でルールを明確に提示し、必要があればその都度改正し、「ここには置かないで」と申し出のあった場所には置かないようにFBグループ内で注意喚起をしている。WAROCKのルールや遊び方 を動画でも説明している。

逆に、自分の地元でもひろめたいという人から、「交換所を設置したのでWA ROCK交換所マップに登録してください」という申し出も多くあり、その都度田中さんがマップに地点を登録している。

運営管理者として多くの人の意見を聞き、きめ細かいルールを定め、それを遵守してもらうことでトラブルなく楽しんでもらう。そのための努力を惜しまない。「WA ROCKが好きなこのグループの皆さんがとても優しいから、6年も続けられているんだなぁ〜っと思います」と田中さん。

石に込められた意思は人と人をつなげ強い意志を持つ

最初に石を広めようとした日本人女性の名前は、チョールトンかやのさん。WA ROCKを広めたことがきっかけになり、2019年、それまで住んでいたオーストラリアからオーストラリア人の夫と二人の子供とともに阿仁合に移住した。「この遊びがきっかけで秋田に移住しちゃった我が家!石ころがつなぐ縁と絆」とかやのさんは話す。

また、大仙市協和のワークショップに参加した田中さくらさんのご出身は熊本。知り合いのいないこの地域で人と交流するきっかけになったのはWA ROCKがあったおかげだそうだ。

秋田市の吉田早苗さんはワークショップにさくらさんが参加されると聞き、会場を訪れ、さくらさんとともにWA ROCKを描きながら来た人へのサポートをしてくれた。さくらさんと吉田さんはWA ROCKがつないだ縁で、イベントがあるたび県内各所に一緒に訪れるという。「WA ROCKは最高だよね」とふたり声を揃えてそう話す。

※左から吉田早苗さん、田中さくらさん、筆者。筆者もおふたりにご縁をいただいた。2023年8月撮影
名前の由来「WA」とは「Western Australia」を略したもので、日本ではじめる時に「WA」を日本語の「輪(ワ)」として、WA ROCK(ワ ロック)と呼んでいます(西オーストラリアではダブリュエーロックスと呼ばれています)。
あなたが描いたWA ROCKが人と人、地域と地域をデザインするようにつながっていく遊びです。
※公式FBグループよりWA ROCKの由来について抜粋

WA ROCKの由来は、ひとつの石が人と人、地域と地域をデザインし輪になってつながる遊び。旅する石に込められた意思は人と人をつなげ、強い意志を持ち地域と地域もつなげていく。

ぜひ、あなたのお住まいの地域にも旅する石を受け入れる場所を作ってみてはいかがだろうか。  

※2024年5月撮影 大仙市協和市民センター和ピア近くのカフェ ネノリアにも交換所が新設された
※2023年8月撮影 協和市民センター和ピアで子どもたちが描いたWA ROCK 「がんばれ!」などポジティブな言葉が目立つ
※2023年8月撮影 協和市民センター和ピアで子どもたちが描いたWA ROCK 「日本サイコー!」

(写真は全て筆者撮影)

情報

Facebook WA ROCK JAPANグループ
https://www.facebook.com/groups/185201152115009

WA ROCK JAPAN ホームページ・ルール&マナー
https://warockani.localinfo.jp/pages/2403399/rules

WA ROCK交換所マップ
https://www.facebook.com/groups/185201152115009/posts/887450155223435?locale=ja_JP

WAROCKのルールや遊び方動画
https://www.facebook.com/100003492969963/videos/2889812004478537

天野崇子

天野崇子

秋田県大仙市

編集部編集記者

第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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