「羽後町を、やりたいことが絶対に肯定される場所にする」学べる・繋がれる・泊まれるレンタルスペースUGO HUBが示す関係人口の形【秋田県羽後町】

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あきたの物語」は、物語をとおして「関係人口」の拡大を図ることで、県外在住者の企画力や実行力を効果的に生かした地域づくりを進め、地域の課題解決や活性化を促進する事業として秋田県が2023年度から始めました。秋田県や秋田にまつわる「ローカリティ!」のレポーターや地域の関係者が、秋田県各地の人々の活動を取材し「あきたの物語」を執筆して秋田県を盛り上げています。

羽後町は秋田の県南にあり、西馬音内(にしもない)そばや羽後牛、西馬音内盆踊りで知られています。羽後町では、地域内外の人々が関係人口として積極的に交流しています。今回は、羽後町の地域内のキープレイヤーとして、村岡悠司さん(40)を紹介します。村岡さんは、宿泊、飲食、レンタルスペース、起業支援の4つの機能を兼ね備えた複合空間UGO HUBを運営しています。

文字通り地域の「ハブ」となっているUGO HUB。その活動や、立ち上げに至った経緯、地域が求める関係人口の形についてお聞きしました。

地域の人が外の人と関わりながら、「やりたいことを、やりたいように」に試せる場

UGO HUBは、羽後町西馬音内本町(にしもないほんちょう)の元パチンコ屋をリノベーションし、2020年4月25日にオープンしました。リノベーションには、地域内外から延べ100人以上の協力者が関わってくれたそうです。

UGO HUBは、毎日を楽しんで生きる大人たちが集う空間を作ることで、子どもたちに「大人って楽しい!」「社会人って楽しい!」と感じさせることをコンセプトに運営されています。ゲストハウス、喫茶、レンタルスペースの他、起業支援も提供しており、1日単位のキッチン出店や様々な体験イベントが行われています。

UGO HUBは地域内外から、多様な人が集まる「ハブ」として機能している

実施されたイベントの数は延べ450回以上にものぼります。カフェのお試し出店がされている間、テーブル席では裁縫のワークショップやボードゲームの大会、フロア全体を活用した映画の上映会などが行われるそうで、空き家の利活用推進のイベントや、鹿児島県の口永良部島(くちえらぶじま)を紹介するコンセプトイベントなども開催されたそうです。

村岡さんは、「この空間は偶発性が高いことが特徴です。レンタルキッチンで出店してる人と、ワークショップをしている人の間に繋がりが生まれる確率は9割9分と言っても過言ではありません。お互いに繋がって、アドバイスし合うこともあります。その結果として、挑戦する人の『やりたいことをやりたいように』が実現するのが嬉しいんです」と語ります。

「やりたいことがやりたいようにできない」理想と現実のギャップから気付いた地元秋田の魅力

「やりたいことを、やりたいように」。UGO HUBの運営にあたり、村岡さんはこのコンセプトを徹底しています。羽後町では、この場所をきっかけに、若者を中心に新たなチャレンジに踏み出す人が増えています。

秋田県仙北市出身の村岡さんは、競馬の騎手やアナウンサーの夢を追い、東京の大学に進学しました。大学時代、大学祭の実行委員長を務めるなど、好きなことに情熱を注いでいました。しかし、社会人になると、全力で仕事を楽しむことができない現実に悩むこともあったそう。「今思えば、就活はやりたいことじゃなかったですね。キャリア支援などで、人の人生に深く関わる仕事は楽しいと思えましたが、やらされている感じはどうしても拭えませんでした」と、当時を振り返ります。

そんな時に起こったのが東日本大震災です。震災をきっかけに村岡さんは地元秋田に目を向け、盆や正月休みには、秋田で楽しく仕事をしている人達にSNSを通じて会いに行くようになりました。「2012年から3年間は東京と秋田を行き来していました。この活動を通じて、秋田でも暮らせるという確信が得られたように思います」と村岡さんは語ります。

こうして、村岡さんは関係人口として、秋田に関わりを持ち始めました。

「行動力には自信があった」その時々、最善の選択をした結果辿りついた羽後町。

2015年、村岡さんは秋田に帰る決心をします。その折、先輩から「次の仕事が決まっていないなら、海外に一人旅でも行ってみたら?」と勧められます。

村岡さんは、翌日のバンコク行きの飛行機を予約し、そのまま一カ月間、タイとカンボジアとラオスに滞在します。「一ヵ月間、知らない土地でもたくましく生きられるという自信が得られました。その時に、自分の強みは『行動力』なんだって気がつきました。この原体験がUGO HUBに繋がっているんです」と村岡さん。

「秋田へ帰る」という決断が、海外一人旅への扉を開いた。この決断はUGO HUBの設立にも繋がっていく

その後、秋田に帰った村岡さんは、秋田市でインバウンドに特化した旅行企画会社を見つけ、すぐに連絡、就職を決めました。その仕事を通じて出会ったのが羽後町です。村岡さんは、仕事以外の場面でも羽後町に何度も足を運ぶようになりました。こうして、村岡さんは秋田の関係人口から、羽後町の関係人口になったのです。羽後町の一体何が村岡さんを惹きつけたのでしょうか。

未知のモノを受け入れるノリの良さが羽後町の魅力。それが関係人口としての関わりしろを生む

「(インバウンドの仕事なので)どの国の人に何が刺さるかを常に考えていましたが、実は地域の日常が一番魅力的なんです。『ハレの日』ではなく、『ケの日(日常)』こそが地域の価値だと気が付きました。西馬音内盆踊りだけではなく、田植えや雪寄せ、単に地域の人と話すだけでも、海外の人にとっては魅力あることなんです」と村岡さんは、地域の日常の価値を強調します。

地域の何気ない日常が、海外の人にはかけがえの無い経験となる

また、羽後町の良さについて、地域の人の『ノリの良さ』も魅力であると村岡さんは語ります。「外国人旅行者を羽後町に招きたいと相談した際、地域の人達は初めての経験に直面します。西馬音内盆踊りのような大イベントでも外国人の参加はほんの少ししかないので……それでも羽後町の人々は、未知のものに対して開かれており、好奇心と面白さを感じながら、積極的に受け入れてくれました。そのことが印象的でした」。

そうして、羽後町への熱が高まっていった村岡さん、2019年9月に羽後町に移住し、「やりたいことを、やりたいように」が実現するUGO HUBの構想を形にしていきます。

「地域に暮らす人の内面のハッピーに貢献する」UGO HUBが描く関係人口の姿

羽後町の住民となった村岡さんは、地域と他の都市とのつながりの少なさを大きな問題と感じました。特に、中心部から離れた「田代」という地域の子供たちは、他の地域の人々や新しい経験と出会う機会がほとんどありません。

村岡さんは、子供たちが他の地域の人々や、自分の好きなことを楽しんでいる大人たちと出会える場所が必要だと考えました。その想いを形にしたのが、UGO HUBなのです。

UGO HUBで開催されたハロウィン親子イベントの様子

先述のように、UGO HUBでは、地域外から多様な人が訪れ、子ども達が関わりを持てるようなワークショップ等の企画が日常的に開催されています。そうすることで、地域の子ども達が自身のキャリアについて考え「大人になるって楽しい」と思えるようになっていくのが、村岡さんの仕事のやりがいになっています。

村岡さんに地域の理想の姿について質問すると、「地域に暮らす人の内面のハッピーが実現できれば最高だと思います。皆の毎日が、やりたいことをやっているハッピーな時間で埋め尽くされている状態が続くことですね。そういう地域にしていくために、関係人口として、外から関わってくれる方の力は必要不可欠だと思います」と答えてくれました。

UGO HUBには「やりたいことを、やりたいように」挑戦できる場所があります。この場所は地域の人にだけ開かれているものではありません。これまでも地域外から、たくさんの人が訪れて、地域の人との繋がりを育んできました。

UGO HUBでは、何かやりたいことを試してみたい方、地域の子ども達のキャリア教育のお手伝いをしてみたい方、羽後町ならではのノリの良さの中で自分の可能性を拓いてみたい方の、多様な関わりをお待ちしております。

関わり代

・ワークショップやコンセプトイベントを通じた、地域の子どもへのキャリア教育支援

UGO HUB

公式HP:https://www.ugohub.jp/

所在地: 〒012-1131 秋田県雄勝郡羽後町西馬音内本町19

問い合わせフォーム:https://www.ugohub.jp/inquiry/

畠山智行

畠山智行

神奈川県横浜市

副編集長

ローカリティ!エヴァンジェリスト
ふるさと:
宮城県仙台市(出身地) 
秋田県湯沢市(自分で選んで移住した土地その1) 
神奈川県横浜市(自分で選んで移住した土地その2)

何気ない日常がどんなに尊く、感動に満ちているか、そのことに読者の皆さんが気付けるメディアに成長させていきたいと思います!

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