雪で整う!移動式軽トラサウナが雪原に現れた【秋田県湯沢市】

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2026年2月22日、秋田県湯沢市秋ノ宮にある、湯沢市雄勝スポーツセンターのグラウンドを覆った雪原に、煙突が立っている軽トラが現れました。その日は「秋ノ宮雪っこまつり」が開催されていて、多くの人で会場がにぎわっていました。

焼き芋屋さんなのかと思って近づくと、その正体はなんと、移動式サウナ!

煙突から煙。焼き芋屋さんと見間違えそうな軽トラ

一面真っ白な駐車場に停まった軽トラック。荷台の上には木製の小屋が載り、後部から突き出た煙突からは煙が立ちのぼっています。その光景はあまりにも不思議で、思わず「焼き芋ですか?」と声をかけてしまいました。

「サウナなんです」

そう答えてくれたのは澤屋敷海(さわやしき かい)さん。お名前の漢字をたずねると、「難しい方のサワと、お化け屋敷のヤシキ、そしてカイは海です」と答えてくれました。お名前もなかなかのインパクトで、一度聞いたら忘れられません。

海さんは岩手県出身で、現在はお隣の東成瀬村の地域おこし協力隊として活動しながら、移動式「サウナ灯火(ともしび)」を手がけています。この日はかねてからお手伝いをしていた友人の「井戸端サウナ」の車で現場に来ていました。

中を見せてもらうと、そこには一台の薪(まき)ストーブ。その上には「サウナストーン」と呼ばれる石が積まれていました。薪で石を熱し、その熱した石に水をかけて蒸気を発生させ、室内の湿度と体感温度を一気に上げます。

この“熱した石に水をかける行為”をロウリュといいます。フィンランド発祥の入浴法で、蒸気が立ちのぼることで体感温度がぐっと上がり、発汗を促します。

温度管理には少しコツがいるそうですが、条件が整えば100度近くまで上がることもあるのだとか。

私の目の前で実際にサウナを体験した人が雪にダイブをしていました。「なかなかできない体験だからあなたもぜひやってみるといいよ」と体を真っ赤にして豪快な笑顔で声をかけてくれました。

私の中で、「整う」の意味が少し変わりました。

「整った」サウナの価値観が変わったきっかけ

移動式サウナを手がける海さんは、実はもともとサウナが苦手だったといいます。「息苦しく感じてしまって」。密閉された空間でじっと熱に耐える感覚が、自分には合わなかったそうです。

転機は、まさに現地に来てくれた、友人が運営する移動式の「井戸端サウナ」に初めて入ったときでした。外に開かれた空間で、薪に火をくべて、汗をかき自然の中ですごす。そのときは「全然苦しくなかった。むしろ爽快感があった」と振り返ります。

その秘密は、コンパクトな空間ゆえにロウリュの蒸気が充満しやすく、高い湿度を保ちやすいことと、そして、自然が「整えて」くれること。

その体験が、海さんの価値観を変えました。

「自然を味わうためのアクティビティ」を自分の手で

室内で整うのではなく、自然の中で整う。川の音、風の冷たさ、雪の白さ。五感が一斉に目覚めるような感覚。

「サウナって自然を味わうアクティビティのひとつだなと思ったんです」

ただ汗をかくための場所ではなく、自然を存分に肌で感じる体験。だからこそ、自分でもやってみようと思ったそうです。友人の手を借りつつ小屋を建てて、ストーブも設置。今日は自宅に置いてきたけど、自分の軽トラに手作りのサウナを載せたのはその決意の形でもあります。

そして、地元岩手はもちろん東成瀬村をはじめ秋田県内の川や海、大自然が残るフィールドにサウナを運ぶ理由もそこにあります。特に東成瀬では釣りができる川、広がる山々。そのスケールの大きさに惚れ込み、「ここでやっていきたい」と思ったといいます。

実際にサウナと雪原の前に立つと、熱と冷気の対比がはっきりと感じられます。薪のはぜる音、煙の匂い、足元の雪の感覚。整うとは、ただ汗をかくことではなく、五感が一斉に目覚めることなのかもしれません。

「お金をあまり使わずにできる、自然と共生するような人間本来の暮らしがしたい」

もともと、釣りも自然の中に身を置くのも大好きだった、という海さんのその言葉が静かに響きました。軽トラというコンパクトな移動手段+サウナで成り立つ、生き方まで整うような時間。軽トラの煙突から上る煙は、澄んだ青空の中で勢いよく広がっていました。

今年は、もう少し暖かい季節になったら東成瀬村の須川湖でのサウナも予定しているそうです。五感が一斉に目覚める「整う」体験を、ぜひ。

2026年2月22日筆者撮影

情報

サウナ灯火(ともしび):https://www.instagram.com/sauna.tomosibi_iwate/
井戸端サウナ:https://www.instagram.com/idobata.sauna/

天野崇子

天野崇子

副編集長/第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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