創業208年、店舗は京都市登録有形文化財。老舗「するがや祇園下里」の“ひやしあめ”で夏を乗り切ろう!【京都府京都市】

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「昔は銭湯の帰りにひやしあめを飲んだんよ」「遠泳の後であめ湯を飲むと、体が温まったわ」――するがや祇園下里(京都市東山区)では、そんな声が年配のお客さまから寄せられるといいます。「ひやしあめもあめ湯も、暮らしの中に普通にあった飲みものなんです」と話す店主の井上真由美さん。するがや祇園下里は、あめ菓子を軸に京菓子を商うお店です。井上さんにお話を伺いました。

▲「ひやしあめ」「あめ湯」は、ラベルは季節で異なりますが、どちらも同じものが入っています。夏は冷水で割る「ひやしあめ」、冬はお湯で割る「あめ湯」。瓶は昔ながらのレトロなかたち、ラベルの文字は八坂神社の野村明義宮司が書いてくださったものです。※するがや祇園下里提供

あめ菓子がずらっと並ぶ店内。人気のひやしあめはテイクアウトもOK!

するがや祇園下里は、1818(文政元)年、総本家駿河屋の別家として創業しました。当初、駿河屋から伝授された練羊羹(ねりようかん)を扱っていましたが、3代目当主が八坂神社境内で売られていた「かんかん飴」をヒントに「祇園豆平糖」を考案。あめ菓子を商うようになったそうです。

のれんをくぐって店内に入ると、あめ菓子が並んでいます。店舗は、京都市の登録有形文化財に指定されている建物です。「THE 老舗」という雰囲気の中、井上さんが明るく「こんにちは」と迎えてくれました。

お店では、ひやしあめやアイスクリームをテイクアウトすることもできます。最近は、海外からの観光客も増えてきました。メニューには、ひやしあめ、ひやしあめソーダ、ひやしあめクリームソーダなどのほか、ウイスキーやジン、焼酎などで割った「祇園ハイボール」もあり、散策の途中で様々なひやしあめを楽しめます。

この日、筆者は赤紫蘇で割ったひやしあめをいただきました。ひやしあめは重いため、上が赤紫蘇、下にひやしあめと、見た目も美しく、涼しげです。ストローでゆっくりと混ぜていただきます。紫蘇の風味とひやしあめの甘さがほどよく混ざり、生姜の清涼感で後味もスッキリ。目にも口にも楽しいドリンクです。

厳選された天然素材のみを使い、職人がていねいに製造

ひやしあめの原材料は、ふくよかな甘みが特徴の最高級麦芽飴に、中ざらめ、生姜のしぼり汁、蜂蜜。昔から伝わる味を守るべく、原材料一つひとつを吟味しています。保存料や添加物は一切使用していません。

いちばんのこだわりは、後味がスッキリすること。そのため、生姜汁は作り置きをせず、絞ったらすぐに使っています。

ひやしあめ以外のあめ菓子にも生姜がよく効いているものがあり、「のど飴」として愛用する方がたくさんいらっしゃいます。歌舞伎役者さん、舞妓(まいこ)さんや芸妓(げいこ)さんなど声を使う仕事の方からの注文も多いそうです。

▲左:「大つゝ」。生姜と黒糖のあめを煎餅で巻いた珍しいあめ菓子で、生姜の辛みが特徴。のど飴として愛用される方もいらっしゃいます。右:お店の看板にもなっているあめ菓子、「祇園豆平糖」。長いものを自分で割っていただきます。※するがや祇園下里提供

なお、井上さんを悩ませるのが、製造現場で使われている尺貫法。例えば、「祇園豆平糖」の長さは4寸(約12センチ)とされます。「原材料も昔の単位ではかるので、材料計算は全て今の単位に直しています。これが混乱するんですよ……(笑)」。老舗ならではの悩みです。

疲れを癒す飲みものとして、トレイルランなどでも注目

するがや祇園下里のひやしあめは、トレイルランなど激しいスポーツの補給食として脚光を浴びています。「当店のひやしあめは自然由来のため、おいしく、安心してエネルギーを摂取できるとして注目されているんです」と井上さんは言います。

これまでにも、建築業者さんなど屋外で働く方がひやしあめを愛用していた例があるそうです。暑い夏に向け、熱中症予防などにもよいのかもしれません。

店舗がまるごと文化財

するがや祇園下里の店舗は京都市の登録有形文化財。1895(明治28)年にお茶屋として建てられたものです。通常、見学はできないのですが、今回は特別に内部に入らせていただきました。

2階の座敷には、廊下側に畳敷きのスペースがあります。宴席などで使用する時には、ここに金屏風を立て、舞妓さんや芸妓さんが舞を披露します。

床の間には端午の節句の兜(かぶと)が飾られていました。「季節は過ぎてしまっていますが、海外からのお客さまが来る予定があり、見ていただきたいなと思っています」と井上さん。

座敷へ上がる階段は、人がすれ違うことのできるほどの広い幅。黒光りして、時代を感じさせます。かなり急です。

1階には中庭があり、半間の廊下がぐるりと囲んでいます。照明も古いもので、装飾の美しさ、繊細さが見事。この日は雨だったため、明かりの美しさが際立って感じられました。

土間の吹き抜け。明かり取りの窓があり、太い梁が何本も通っています。まっすぐな材木は寺社建築に使用され、ここでの梁(はり)は少し曲がったものが見えます。「曲がってはいますが、その代わりにデザイン、形の違う木材をどう組み合わせるかが大工さんの腕の見せどころなんだそうです」と井上さん。

こちらは登録有形文化財には含まれていませんが、大小2つのお茶室も敷地内に建てられています。お茶会が開かれることもあるそうです。

前述したように、この建物は公開していません。「ご要望があれば、結婚式の写真の前撮りやお座敷でのお食事などに使っていただいています」とのこと。お店、住まいとして生活しながら、文化財としても守っていく大変さが想像できます。

お店は、江戸時代につくられたお茶屋街の町の一つに含まれています。八坂神社とのご縁も深く、職人さんも井上さんらも祇園祭が行われる7月は「お祭りが忙しくて、お店はお休みをいただきます」とのこと。京都の暑さは格別のものですが、ひやしあめが暑さにもお祭りにも涼やかさとエネルギーを添えています。

古くからの製法に従ってつくられ、京都の暮らしに息づいてきたひやしあめ、あめ菓子、京菓子の文化を味わい、今年の夏を乗り切ってみませんか。冬のあめ湯も格別です。

※するがや祇園下里さまよりご提供いただいた写真以外は、全て筆者が2025年6月20日に撮影しました。

情報

するがや祇園下里
営業時間:11~18時
定休日:水曜日(7月は変則的ですので、ご注意ください)
住所:京都市東山区八坂新地末吉町80番地
電話:075-561-1960
公式サイト:https://gionshimosato.com/
Instagram:https://www.instagram.com/gion.shimosato/

加藤道子

加藤道子

ひとり旅と温泉が好きなフリーライター。運転免許がないため、どこへでも公共交通機関を利用して出かけていましたが、加齢のためか左ひざを損傷中…泣。

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