幻の白いアザミ…野に咲く奇跡、シロバナノアザミ【兵庫県丹波篠山市】

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筆者の自宅近くのあぜ道に毎年決まって白いノアザミが咲きます。

10年ほど前にこのアザミを教えてくれたのは、近所にお住まいの鹿児島出身の女性です。

それ以来、ほぼ毎年その場所で花を咲かせています。

今年もやはり1株だけ花を咲かせました。

隣につぼみがもう一つ枝分かれしてできていますね。

丹波篠山市内にノアザミが群生しているところは至るところにありますが、15年以上住んでいても白花を見つけたことは皆無で、それほどに希少なものであるということを筆者も身をもって実感しています。

ノアザミは通常、紅紫色の花を咲かせる野草ですが、ごくまれに白い花をつける個体が見られます。

白い花が咲く理由

本などで調べてみましたら、ノアザミ(野薊)の本来の花色は紅紫色(ピンク〜赤紫)ですが、ごくまれに白い花を咲かせる個体があります。これは一般にシロバナノアザミ(白花野薊)と呼ばれます。白い花が咲く主な理由は、花色を生み出す色素の生成や蓄積に関わる仕組みが変化するためのようです。

植物の赤や紫などの花色は、細胞内にアントシアニンなどの色素が生成されることで決まります。DNAの突然変異により、花弁に色素(色素体)を作れなくなったり、蓄積されなくなったりすることが原因です。

色素が欠乏した結果、光が乱反射して白く見えるようになります。動物にもまれに発現することがある、いわゆるアルビノ(色素欠乏)の一種です。突然変異で生まれた白花の遺伝子がその地域で固定され、白花だけを咲かせる系統として自生しているケースもあります。

なお、シロバナノアザミは非常に珍しいため、野山で見つけるのは極めて困難とされています。花の色が違っても、葉の形状や花の構造、開花時期(5〜8月頃)といった他の特徴は通常のノアザミと同じです。

野生での出現確率

野生でシロバナノアザミに出会える可能性は非常に低く、一般的にはきわめて珍しい変異と考えられています。野生のノアザミの中で白花(シロバナノアザミ)が出現する確率は、おおむね0.01%〜0.001%程度とされます。株数で換算すると、約1万株〜10万株に1株という非常に低い割合だそうです。

見つけにくい背景

シロバナノアザミが野生で見つけにくい背景には、突然変異そのものの少なさに加え、自然環境での生存の難しさや人為的な影響があります。

動物のアルビノ個体でもたとえば白いカラスなどは群れから爪弾きにされたり、カエルなどは保護色になれないので簡単に外敵から捕食されやすかったりして、最初に淘汰(とうた)されてしまう存在なのです。

筆者は数日に渡ってこの花を観察していましたが、実際、ほぼ同時に咲いた通常色のノアザミよりも、白花のほうが太陽光線とりわけ紫外線に弱いようではるかに早くしおれてあわれな状態になってしまいました。

シロバナノアザミは愛好家の間で非常に人気が高く、野生で見つかるとすぐに持ち去られてしまう(盗掘される)ケースが後を絶ちません。そのため自然界に個体が残らず、目撃する確率がより一層低くなってしまうのです。

出会えた場合は自然界のまれな営みの表れとしてまた来年も同じ場所でその姿を拝めるよう、敢えて現場が特定できる情報は載せておりません。

珍しくて貴重な存在を手元に置いてみたいという愛好家のお気持ちはわかるのですが、保護目的以外のいたずらな採取はせず、毎年その季節になる毎に自然の中で世代を繰り返す様子が見られるとやはり嬉しさが込み上げてきます。

荒らされないようあたたかい目で見守ってあげられればといつも思っています。

※写真は筆者が6月17日に撮影

参考文献:原色牧野植物大図鑑(北隆館)

椛澤弘之

椛澤弘之

"東京都大田区で生まれ育ち、中学・高校時代は神奈川県茅ケ崎市で過ごす。
高卒後、旧ソビエト連邦を経てギリシャ共和国に渡り、サウンドエンジニアとしてミコノス島の劇場で働く。
欧州言語に興味を持ち、スイスの商業高校と州立大学で学ぶ。
帰国後、輸入雑貨買い付けの傍ら、レシピ復刻料理研究家、翻訳家(英・仏・独・伊・西)、写真家、ジャーナリストとして活動する。
現在は地方から世の中を見渡すため、兵庫県丹波篠山市在住。"

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