破れた布を繕いよみがえらせる「襤褸(ぼろ)」「ボドコ」の温かさ 京都の長屋で刺し子を体験【京都府京都市】

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8月11日、京都市東山区の「あじき路地」にある「JunAle Sashiko Store Kyoto」で刺し子のワークショップが行われました。刺し子とは、布の補強を目的とした伝統の手仕事です。

JunAle Sashiko Store Kyotoを主宰する杉前潤(すぎまえ・じゅん)さんは、スニーカーやキャップ、Tシャツなどに刺し子をし、現代的な作品をつくりだしています。ワークショップに参加し、手仕事の楽しみを味わいました。

初めて見たボドコ。引き継がれてきた「襤褸」を間近で見る

「みなさん、ボドコってご存じですか?」と杉前さんが、繕って繕って繕って繕って繕って……という古い布を広げて見せてくれました。こうした布を「ボドコ」と呼ぶそうです。

ボドコを広げて説明する杉前潤さん

ほんの100年ほど前まで、麻や綿をはじめ布類は大変貴重なものでした。そのため、私たちの先祖は数センチほどの端切れ、いわゆる「襤褸(ぼろ)」をも捨てることなく大切に保存。敷布(しきふ)や衣類などが破れたり薄くなったりすると、それらを使って丹念に繕い、布を使い続けました。

また、繕う際に使われた裁縫の技法が「刺し子」です。刺し子は、縦、横、斜めにまっすぐ縫う「なみ縫い」だけで美しい模様があらわれます。

日本、特に東北地方では、襤褸や刺し子が生活文化として長く守られ、何世代にもわたって引き継がれてきました。こうした布文化の一つがボドコです。杉前さんはボドコを広げて「こうした布は、特に女性の出産時や、子どもたちとくるまって暖をとるときに使われたそうなんです」と話します。「ボドコのボは、『母』という字ではないかと思うんですけど、どうでしょうね」。人間の誕生という最も大切な瞬間に使われたボドコは、繕い続けることによって文字通りご先祖や家族をつないできた布。単なるリサイクルにとどまらない意味がそこにはあります。

繕うための夜なべとは? 「家族のためでもあり、自分のためでもある時間」という発想

ボドコを見た参加者からは、「母さんが夜なべをして……っていう歌みたい!」という感想が出されました。確かに、襤褸をやりくりしながら繕うのは女性の仕事だっただろうと想像できます。さらに、「夜なべして編物や裁縫をするのって家族のための仕事なんだけれども、みんなが寝てしまってからの、お母さん自身のための時間でもあったんじゃないかな」という声が……。

私のなかで一気に「夜なべ」のイメージが覆りました。その発想はなかった! 目からウロコ! 貴重な布のやりくりだけれども、私たちが手芸を楽しむような感覚、自分の楽しみの時間でもあったのではないか。一人になってもの思いにふけりながら、一針一針繕う時間ではなかったか。そうしてつくられるからこそ、私たちは襤褸に温かみを感じるのではないか。新しい発見に心躍ります。

杉前さんの素敵な作品を目指して(ムリ!)、刺し子開始。集中してリラックス

杉前さんは、もともと手縫いでの補修に興味をもっていたところ、襤褸やボドコ、刺し子に出合いました。脈々と受け継がれてきた手仕事に魅力を感じ、現代的なデザインに落とし込んでさまざまな作品をつくりだしています。

キャップやシューズ、Tシャツなど、幅広い作品は見る人を魅了します
ぶ厚い布や皮でできている靴に刺し子をするのは、なかなか針が通らず苦労するそう 提供:JunAle Sashiko Store Kyoto
古い布を裂いて織る「裂き織り」を使い、襟元や袖口を飾っています 提供:JunAle Sashiko Store Kyoto

ワークショップが始まると、参加者は針や糸、端切れなどの入った基本のセットをもらい、巾着やTシャツなど各自が選んだアイテムに端切れの位置を決めていきます。もちろん、どの位置に置いても自由。位置が決まったら、刺し子のスタートです。なみ縫いがうまくなくても、それが逆に「味わい」になり、オリジナルの価値を生み出します。

Tシャツの右胸に、細い縞(しま)の端切れを置いてみました
机にはさまざまな色の糸、刺し子の柄を描き写すためのシートなどが用意されています

最初はいろいろ質問も出ましたが、縫い始めるとみんな無口になり、部屋が静かになっていきました。ふんわりとした雰囲気のまま、集中します。一針一針、無心になり、心地よい、やわらかな集中が部屋に満ちていきます。本当に心地よいのです。

間違えばほどいて、縫い直せばよいというのも刺し子の良いところ。緊張感はなく、手仕事をしてリラックスするってこんな感じかなと思いました。ボドコを繕う夜なべが「自分のための時間でもあったのでは?」という発想は、この心地よさにつながっているのかもしれません。

2時間後。右側の小さい端切れには、「柿の花」という文様を刺してみました。刺し子模様のシートを水で落としたため、少しぬれています
昔ながらの路地にあるお店。周囲には、手仕事に取り組んでいる作家さんの工房が並んでいます

約2時間のワークショップは、一針一針、縫い進めている間に、いつの間にか時間がゆっくり流れていたように感じます。襤褸のもつ温かみや人間らしさ、手仕事の余韻を楽しみつつ、スッキリした気分で「あじき路地」を後にしました。

●JunAle Sashiko Store Kyotoからご提供いただいた写真以外は、2026年8月11日に筆者が撮影しました。

情報

●JunAle Sashiko Store Kyoto
住所:〒605-0831 京都府京都市東山区山城町284 あじき路地南3号 
Instagram:https://www.instagram.com/junalesashikostore/
お問い合わせ:InstagramのDMをご利用ください。
※店舗の営業日時やワークショップ開催日は不定期になります。Instagramでご確認ください。

加藤道子

加藤道子

ひとり旅と温泉が好きなフリーライター。運転免許がないため、どこへでも公共交通機関を利用して出かけていましたが、加齢のためか左ひざを損傷中…泣。

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