
タイ北西部、ミャンマーとの国境にも近いメーホンソーン県。山々に囲まれた小さな町、メーサリアン(Mae Sariang)を訪れたのは、2025年10月のことである。
この町を訪れたきっかけは、そこで日本語教師としてボランティア活動をしていた後輩だった。彼がこの場所で暮らしていなければ、メーサリアンという町の名前を知ることも、ましてやそこで行われる伝統行事に出会うこともなかっただろう。
2025年、祭りが行われたのは10月6日から8日。文化広場での催しや音楽、伝統芸能、灯りのパレード、そして「Miss Ok-Wa」のコンテストなど、町全体を舞台にさまざまな行事が行われた。メーサリアンの自治体も、この祭りを地域を代表する文化行事として紹介している。
そもそも、なぜ雨季の終わりが祭りになるのだろうか。
その背景には、タイの人々の生活に深く根付いた仏教の存在がある。



タイの暮らしに根付く仏教
タイでは上座部仏教が広く信仰されている。
タイ政府によれば、国民の90%以上が仏教を信仰している。
一方で、憲法上、仏教が「国教」と定められているわけではなく、信教の自由も保障されている。
そして筆者が驚いたのは、仏教は寺院の中だけに存在しているものではないことだ。
朝、僧侶に食事を捧げる托鉢や、寺院で功徳を積む習慣など、宗教は人々の日常生活と密接に結びついている。
その中でも、タイの仏教文化を知るうえで欠かせないのが「雨安居(うあんご)」である。



3カ月の修行が終わる「雨安居」
仏教では、雨季の3カ月間、僧侶が一つの寺にとどまり修行に専念する期間がある。タイではこれを「Phansa(パンサー)」と呼び、その終わりの日が「Ok Phansa(オーク・パンサー)」である。
旧暦11月の満月の日にあたり、僧侶たちの約3カ月間の雨安居が明ける。
日本人の筆者にとって、仏教の行事といえばお盆や彼岸を思い浮かべる程度である。しかしタイでは、仏教が人々の生活の中により身近な形で存在している。
そして、雨安居の終わりを迎える日には、各地でさまざまな行事が行われる。
その一つが、メーサリアンの「Ok-Wa」である。


「Ok-Wa」は雨季の終わりを祝う祭り
雨安居の終わりはタイ各地で祝われるが、地域によってその形は異なる。
メーサリアンで行われる「Ok-Wa」は、その中でもこの地域独自の伝統として知られている。
「Ok-Wa」という言葉には「雨季から出る」「雨季が終わる」という意味があり、メーサリアンではOk Phansaに合わせて独自の祭りが受け継がれてきた。
Thailand Foundationも、Ok-Waをメーサリアン地区に特有の祭りとして紹介している。山あいに位置し、比較的隔絶された環境にあったことが、独自の文化を残す一因になったとも説明されている。


この祭りを象徴する光景の一つが、午前4時から始まる托鉢である。
祭りの期間中、まだ空が暗い時間から僧侶が住民の家々を訪れ、人々が食べ物などを捧げる。これが3日間続くという。
さらに日中から夜にかけては、寺院や家々が灯りや装飾で彩られ、伝統芸能やパレードなど、町全体を巻き込んだ祝祭へと姿を変えていく。
宗教的な節目であると同時に、地域の人々がともに過ごす祭りでもあるのだ。
筆者自身も、後輩の伝手(つて)でいくつもの寺院を巡ることができた。
まだ夜が明ける前の托鉢から、夜の通りを彩る灯りまで。
雨季の終わりを、人々はどのように迎えるのだろうか。
次回は、祭り当日のメーサリアンを写真とともに紹介したい。
(後編へ続く)








アクセス
メーサリアンへは、タイ北部の中心都市チェンマイから陸路で向かうことができる。grabなどのタクシーサービスは、2025年時点では利用できなかった。
□筆者が利用したバス予約サイトクレジットカード支払いができなかったが、コンビニでバーコードを見せると払えた
□チェンマイのバス停(第2バスターミナル)
□2025年のOk-Wa Traditionサイト:https://www.thailandfestival.org/events/ef34a7c3-c60d-44db-b9f9-ae891f209cca
※写真は全て筆者が撮影(2025.10,06-08)






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