寒さが厳しい東北地方の冬。厳寒期しか出会えない異世界のような歴史遺産がここ数年福島市で人気を呼んでいる。それは、歴史を感じながら進む冬山で出会える驚きの光景、それはかつての重要な交通路「万世大路」(ばんせいたいろ)だ。
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スノートレッキングで感じる歴史の足跡
福島市北部の厳しい冬の中、まるで異世界のような美しい風景が広がる場所がある。雪に覆われた山道を進むと現れる「二ツ小屋隧道」(ふたつごやずいどう)には、自然の芸術が織りなす「氷の神殿」が姿を現す。
万世大路は福島と米沢を結んでいた板谷(いたや)街道に代わる新道として計画され、1881(明治14)年に開通した。その後も山形と福島を結ぶ要の道として物流を支えていたが、自動車の普及や急勾配の多さ、雪による閉鎖などにより、物流の進歩に次第に対応できなくなり、1966(昭和41)年に現在の国道13号栗子ハイウェイが完成したことでその役目を終えた。
最寄りのチェーン着脱所で車を降りた後は、雪に覆われた1.5キロの道を歩く。標高差180メートル、雪で滑りやすい斜面を慎重に一歩一歩踏みしめながら進むと、そこはまるで別世界。周囲には、かつてスキーヤーたちでにぎわっていたであろうスキー場の跡や、雪に埋もれた古い標識が静かにたたずんでいる。その静けさの中で、過去のにぎわいを想像しながら、ゆっくりと進む。
スノートレッキングを終えて到着したのは、目的地である「二ツ小屋隧道」。ここで待っていたのは、まさに氷の芸術だ。トンネルの中、冷たい空気と雪解け水が作り出した氷柱は、ライトに反射してまるでクリスタルのように輝き、まさに「氷の神殿」と呼ぶにふさわしい光景が広がっていた。
寒さが生んだ自然のアートは、年によって形を変え、その年にしか見られない特別なものだ。私が訪れた際には、暖冬の影響で氷柱はやや小さめだったが、それでもその輝きは想像以上で、心に残る美しさだった。
探検心をくすぐる、スノートレッキング
二ツ小屋隧道に到着し、一息ついた後は、スノーシューを履いて下山。登りのときの緊張感と違い、下りは自由に道を選んで降りていける楽しさがあった。時には前のめりに滑ってしまうこともあるが、その瞬間がまた楽しく、あっという間に集合場所に戻ることができた。
スノートレッキングはただの運動ではなく、大人の好奇心をそそる探検そのものだ。冷たい空気と雪に包まれながら、まるで未知の世界を歩いているかのようなわくわく感が常に感じられる。そして、最大の魅力は、自然が作り出す幻想的な景色を目の当たりにできることだ。
冬の福島、感動のひととき
万世大路と二ツ小屋隧道でのスノートレッキングは、単なる冬のアウトドア体験ではない。歴史と自然が交錯するこの場所で、足元に広がる雪の世界に触れ、氷柱の神秘的な美しさに感動することができる。
冬の福島には、これまで気づかなかった隠れた絶景が待っている。氷の神殿と呼ばれる氷柱の前でのひとときは、まさに心に残る特別な瞬間となるだろう。今季も2025年1月から2月にかけてこのトレッキングツアーの開催*が予定されている。
探検心をくすぐる冬の福島、あなたもその魅力を体験してみてはいかがだろうか。
注:上記は取材時点での情報です。最新の情報については関係各所から発信される情報をご確認ください。
*いいざかサポーターズクラブ「万世大路スノーシュー」
https://iizakasupporters.com/snowshoe/