初めての本物の採れたて筍に挑む
東京から愛媛県今治市の大島に来て、3年目を迎えました。
島で暮らすにあたり、釣り、家庭菜園、料理など趣味の幅を広げて試してみたいことがたくさんありました。
釣りはまだ出来ていませんが、家庭菜園や料理はぼちぼちとがんばっています。
そんな折、地域の方から春の旬の野菜、筍をいただきました。
「竹害」なんて言葉がありますが、この辺りの山には竹林が多くあり、しかもどんどん広がっています。
今回はもちろん
「増え続ける放置竹林の現状と課題・対策を考える」
という内容ではなく、
「田舎暮らしで初めて筍を調理した」
という、とてつもなくスケールの小さい話です。
私の50年間の人生で、ガッツリ本物の採れたて筍を調理したことなんてありません。
私にとって筍は、ビニール袋に入って水に浸かって売っているものです。
しかしながら、やってみたいリストに料理を掲げている以上、筍から逃げる訳にはいきません。
この旬という字に竹冠を付けた筍をやっつけてやろうじゃないですか。
皮まみれ!筍の正体は皮なのか?灰汁抜きは30円の米ぬかで
ということで、手元にはいただいた筍と、スーパーから30円で買ってきた米ぬかがあります。
筍に関しては、
「デカいのを持っていけ」
と言っていただいたのですが、何分私は一人暮らしなので食べきれずに余らしてしまうのも勿体ないので、小ぶりなのをチョイスさせていただきました。
またその時、「筍は米ぬかで煮て灰汁を取る」ということも教えてもらいました。
これでもう準備は完璧です。▼いただいた筍と30円の米ぬか。
ついさっきまで土に生えていただけあって筍はなかなかの存在感です。
なんでもそうですが、初めて触るものってちょっとおっかないですね。
▼小ぶりといえどもそれなりにデカいので、必死になって真っ二つにしてやりました。
ここで意外だったのが、皮なんてちょっと剥くだけと思っていたら先端の方に幾重にも皮が重なっていたのです。
「イメージと全然違う!」
と思いながら、狂ったように皮を剥きまくります。
わさわさと大量の皮が溜まっていき、あっという間にまな板が皮まみれになります。しかも皮の産毛が抜けてまな板に散らばって、何だかすごくイヤな感じです。
皮め。
▼この子も数時間前までまさかこんな姿になるとは思ってもみなかったことでしょう。
それにしても勿体ないのが、皮を剥いていくと上は茶色いいわゆる皮で、下が食べられそうな白っぽい状態という、食べられない所と食べられそうな所があるハイブリッド皮が結構出てくるのです。
下の白っぽい所は食べられそうな気もしますが、何せ筍ビギナーとしては、無理に調理して、食べたら筋だらけだった、ということは避けたいので、ハイブリッド皮は泣く泣く廃棄することにしました。
それにしても皮を剥くと思ったより小さくなりました。
こんなことならもっと大きいのを所望すれば良かったです。
チッ!
まさか!痛恨のミステイク
下の紫の何だか気持ち悪いイボイボのところを包丁で削ぎ落して丸裸にして、いよいよ茹でます。
茹でて茹でて茹でまくってやろうではないですか。
沸騰したお湯に筍と米ぬかを全部ぶち込んでやりました。
それにしても米ぬかを使って灰汁抜きだなんて、いかにも料理ができる男みたいで格好良いですね。
もしもこんな時に急に電話がかかってきたら、低めの声で、
「ごめん。オレ今、筍の灰汁抜きしてるから後でかけ直すわ」
と言って相手の返事も待たずに切ってやるところです。
一人でニヤつきながら鍋の様子を見ていたのですが、どうもイメージしていた感じと違います。
深く考えずに、というか何も考えずに投入した米ぬかがやはり大量過ぎたのか。
何だかもうドロッドロなのです。
「…ん? これでいいの?」
急激に不安になり、慌ててネットで検索してみました。
何ということでしょう。
やはり思った通り、米ぬかを既定の数倍もの量を投入しているようです。
そして更にとんでもないミステイクが見つかったのです。
なんと筍は、【皮を剥かずに茹でる】というではありませんか。
いったい皮を剥かずに茹でるなんて誰が思いますか。
まず剥くでしょ。
え? 常識? そうなの?
……。
…あ、そう。
しかし愛しの筍はすでに皮をズルズルに剥かれ、信じられないくらい大量の米ぬかの中で身悶えています(姿は見えませんが)。
せっかくいただいた筍を私は食すことができるのでしょうか。
しかし、ここまで来たらもう引き返す訳にはいきません。
男には引き下がれない時があるのですよ。
このまま突き進もうではありませんか。
GO!GO!GO!(ヤケクソ)
ヘドロのような米ぬか鍋
▼落し蓋代わりにアルミホイルをのっけて暫く茹で続けます。
そうして30~40分ほど茹で続けるのですが、部屋中に充満する息苦しくなるほどの米ぬかの臭いがますます不安を掻き立てます。
「もうそろそろか…」
恐怖とちょっとした恐いもの見たさのせめぎあいの中、ドキドキしながらアルミホイルを外しました。
▼もちろん筍の姿は見えず、とても口に入れるものが漬かっているとは思えない地獄のような米ぬか鍋の姿がありました。
私はあまりの惨状に呼吸が浅くなり、パクパクと口を動かしながらむせ返るほどの米ぬか臭を嗅ぎ分け、新鮮な酸素を求めて窓を開けて気を落ち着かせます。
このまま逃げ出したかったのですが、料理下手な50歳の初老男性に無茶苦茶にされた筍のことを思うと、逃げ出すなんてできません。
ヘドロに埋まっている生身の筍を救い出し、
「ごめんね! ごめんね!」
と狂ったように謝りながら水で洗い流しました。
ヘドロの中から再生した神々しい姿の筍
すると一体どうしたことでしょう。
再起不能かと思われた愛しの筍が神々しく輝いていたのです。
▼美しくツヤツヤとした筍様。
この日は、筍ご飯、スナップエンドウと筍のガーリック炒めと、味噌汁にもぶち込んで、筍様を食いまくってやりました。
先に皮を剥いて茹でてしまいましたが、結果的にはとても美味しくいただくことができました。
感謝。
ちなみに筍は食べ過ぎると便秘や下痢や肌荒れになったりするそうなので貴兄らも注意してくださいね。
そして、ここまで何枚も写真を撮っておいて、作った料理の写真を撮り忘れるというミステイク。
重ね重ね筍に申し訳ない。