福島県の猪苗代湖(いなわしろこ)に自生する水草『菱(ひし)』が近年増殖を続けている。
増殖しすぎた水草は秋頃になると枯れてしまい、最終的に腐敗し湖に留まることから水質汚濁の要因の1つとされ問題視されている。
猪苗代湖では、菱を回収する為の船の導入や、ボランティア活動を通じ毎年100トン近い量の水草が回収され、そのほとんどが捨てられている。
そんな地域の厄介者『菱』の実を活用したお茶の商品が、今月から道の駅猪苗代にて販売が開始された。
本記事では、『猪苗代湖産ひし茶 いなびし』の特徴はもちろん、地域の厄介者が今後どのように観光資源として活用されていくかについて紹介したいと思う。
まずは、既にご存知の方も多いかもしれないが、菱の実は忍者が使用していた道具『マキビシ』の元になったと言われている。
外見の特徴としては高強度な殻とトゲを有しており、見た目通り踏むと非常に痛い。
お茶として使用できる実が採取できるのは、猪苗代湖の場合9月に限られており
最初は緑色をしているが、月日が経つにつれ黒色に変わる。
菱の実の外皮にはポリフェノールが豊富に含まれており、血糖値上昇の抑制等生活習慣病予防の効果も期待できるという論文も発表されている。
※9月以降に採取した菱の実は、ポリフェノール量の数値が減退する
採取した菱の実は洗浄と乾燥作業の後、殻ごと粉砕され焙煎しパック詰めと袋詰め作業の工程を経て、商品として完成する。
長い工程を経て完成した『いなびし茶』の売り上げの一部は、「きらめく水のふるさと磐梯」湖未来基金に寄付され、猪苗代湖および裏磐梯(うらばんだい)湖沼流域内の水環境保全活動の助成などに活用される。
実際に飲まれた方の感想としては『飲んだことがありそうでない、香ばしさと独特な風味のある美味しいお茶』という感想を持たれる方が多いようだ。
地産地消のオーガニックな茶として、猪苗代湖の湖畔沿いで湖や磐梯山、そして夕陽や朝焼けを眺めながら、是非いなびし茶を飲んでみて頂きたい。
現在、猪苗代湖の新しいお土産として『道の駅猪苗代』にて1袋10パック入り 1,080円(税込)で販売中だ。
ここまで述べていくと、菱が厄介者という感覚は少し薄くなってきているかもしれないが、冒頭で述べた通り水質汚濁の要因の1つとして、菱刈り船の導入やボランティア活動を通じ毎年100トン近い菱が回収されても尚、増殖を続けている。
また、観光スポットという観点から見ても、猪苗代湖の湖畔沿いに腐敗した水草が残留してしまうということは、景観までも損ねてしまいマイナスイメージに繋がりかねない。
その為、菱は厄介者としての認識が非常に強く、事実として厄介者に変わりはない。
しかし、菱の実を利活用した商品の誕生により、徐々にではあるが見方は変わりつつある。
昨年の夏には『菱の実収穫体験』も開催され、参加者達は胴長を履き湖に入り広大な大自然の中で菱の実の収穫と、収穫した実の殻剥き&実食体験まで行われた。
収穫体験を通じ、自然や水環境について学ぶだけでなく、厄介者を観光資源に転換し地域に眠る観光コンテンツとして利活用するという観点から、教育旅行や企業研修の要素も兼ね備えている。
夕方の時間帯の収穫体験では、天候の条件が合うと上記の写真のように、雲や夕焼けが湖面に反射し、非常に美しいリフレクションを拝むことができる。
今年の夏も開催を予定しているので、是非実際に現地に足を運んで頂き最高のロケーションの中、収穫を体験して頂きたい。
菱の実の収穫体験の情報は『猪苗代湖産ひし茶いなびし』公式Instagramを要チェックだ。
https://www.instagram.com/inabishi_lake_inawashiro_tea/?hl=ja
これらの取組や課題感は、あくまでも福島県の猪苗代湖での事例だが、他の地域でも活かせる事例だと筆者は考えている。
地方で活動していると、地元の年配の方から「この地域には何もない・田舎だからしょうがない」等々しばしば言われることがある。
地域の強みや良さ的な部分は、地域の中からだけでは見えづらいのかもしれない。
その地域では観光資源として全く捉えられてこなかったものが、傍から見ると磨けば光るダイヤのように見えることもある。
どんな課題を抱えていたとしても必ずその中にはチャンスがあり、何かできることがあるのではないだろうか。
あなたが住む地域にも、きっとまだ眠っている魅力があるはずだ。
是非改めて探してみてほしい。
◇猪苗代湖産ひし茶いなびし 公式Instagram
https://www.instagram.com/inabishi_lake_inawashiro_tea/?hl=ja
◇道の駅猪苗代HP
http://www.michinoeki-inawashiro.co.jp/