「近くにいるのにメールでやり取り」。コミュニケーション不足による課題を解消した仙建工業のオフィスづくり

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「当初は会話しづらい雰囲気があり、ギスギスしてしまうこともありました」。それまで多拠点に分かれていた部門を一つに統合した仙建工業株式会社福島支店の新社屋。仕事のスタイルが違う他部門同士で、意識をすり合わせるのは簡単ではなかったと、新社屋のオフィスづくりを統括した同社の菊地広志さんは振り返ります。

しかし新たなオフィスに生まれ変わった今、他部門とのコミュニケーションが良好になったという福島支店。「ここまで仲良くなるとは思わなかったです」と、菊地さん。変化の背景には、コミュニケーションをはじめ、業務課題を解決するための工夫をちりばめたオフィスづくりがありました。仙建工業の事例から、これからの時代に必要とされるオフィスの形を探ります。

「自分だけサボってる?」休憩するのに負い目を感じたオフィス

仙建工業は、JR東日本のパートナー会社として、東北地方を中心に、鉄道インフラの整備をはじめとしたさまざまな土木、建築を行う会社です。全社的な組織改革の中、福島支店はこれまで複数に点在していた部門を新社屋に統合。これからの時代に向けた組織づくりを行っています。

【リフレッシュスペースにて、新社屋のオフィスづくりにおける中心メンバーのみなさん。左から、福島支店総務部の菊田史彦さん、狩野安則支店長、総務部の菊地広志さん(現在は仙台支店営業部)、建築部の作間和彦部長、総務部の三浦俊志部長。インタビューは菊田さん、菊地さん、作間さんを中心に行った】

「休むときはしっかり休んで、集中するときは集中できる環境が絶対に必要でした」。オフィスづくりを統括した菊地さんは、新社屋のオフィスづくりにおいて解決すべきだった課題の一つが、しっかりと休憩をとれる環境づくりだったといいます。

社員の席がすべて固定で休憩スペースもなかった以前のオフィス、社員はほとんどの時間を自分の席で過ごすしかありませんでした。

建築的観点からオフィスづくりを支えた作間和彦さんは、「仕事が一段落して休んでいても、周りでは電話が鳴っていたりして、自分だけサボっているような気持ちになっていました」と、以前の様子を振り返ります。

以前のオフィスは、とにかく黙々と仕事に取り組む場所でした。そうした環境では、社員は休憩をとることに負い目を感じてしまい、身体と心をしっかりと休めることができなかったのです。

オンとオフを切り替えられる空間づくり。気をつかわず休憩できる環境へ

新社屋のオフィスは、空間づくりで会社の課題を解決する「コクヨ東北販売株式会社」の支援を受けて進められました。この課題を解決するために、コクヨ東北販売が提案したのは、カフェカウンターのような雰囲気のリフレッシュスペースでした。

リフレッシュスペースは、照明やオフィス家具、床材をカフェのような雰囲気にすることで、執務スペースとひと続きの空間でありながらも、気持ちが切り替わりやすいようになっています。

「より深く休めるようになりました」と、作間さん。リフレッシュスペースがあることで、オンとオフの切り替えがしっかりとできるようになったといいます。「以前は、終業まで自分の席に居なくてはいけない雰囲気がありましたが、逃げ場ができたようで気持ちが非常に楽になりました」

【4階、手前の執務スペースと、奥のリフレッシュスペース。雰囲気の違いにより、オンオフの切り替えが自然と行えるように工夫されている】

リフレッシュスペースには、畳を敷いた小上がりもあり、昼休みに横になるといった使い方も可能。のびのびと休憩できる環境を作り上げることで、社員は負い目を感じることなく堂々と、思い思いに身体と心を休めることができるようになったのです。

\コミュニケーションを活性化/

「近くにいるのにメールでやり取り」。業務の妨げになっていたコミュニケーション不足

福島支店新社屋のオフィスづくりにおいて、もう一つ解決すべき大きな課題が、コミュニケーション不足でした。同じ支店でありながら、以前は別々の場所に出勤し、それぞれまったく違う仕事をしてきた各部門の社員たち。同じ支店であってもお互い顔すら知らない、そんな状況にあって、各部門の意識はバラバラでした。

「最初は物事がなかなか決まらない。打ち合わせの時間が長かったですね」。オフィスづくりで、菊地さんや作間さんとともに各部門とのやりとりを行ってきた菊田史彦さんは、部門を越えたコミュニケーションの難しさをこう振り返ります。

同じ部門内でもコミュニケーションが不足していました。お昼休みは社員がそれぞれの席で黙々と食事をとるのが普通。職場で気軽に声を交わす様子はあまり見られなかったといいます。

そんな環境で、「近くにいる人でも、メールで業務のやりとりをすることもありました」と、菊田さん。直接声をかければすぐに進む話にも時間を要してしまうこともあったといいます。社内コミュニケーションの不足が、さまざまな場面で業務に悪影響を及ぼしていたのです。

空間づくりの仕掛けでコミュニケーション活性化

こうした弊害をなくすため、新社屋のオフィスには、社員のコミュニケーションを促す空間づくりの仕掛けがちりばめられています。

仙建工業内で設計された執務エリアは、仕切りや柱のないワンフロアで、社員の顔が見渡せるようになっています。

また、上下関係の隔たりを感じさせないように、上長と部下とでグレードが違っていた椅子は、同じグレードのものに統一しました。

コクヨ東北販売は、自由に座る場所を選べるフリーアドレス制を提案。執務エリアのある2~4階のうち、4階は固定席を廃止してフリーアドレス制に移行しました。2,3階についても、個別の机ではなく切れ目のない1枚のテーブルを使用し、「自分の範囲はここ」という意識を取り払う工夫をしています。

【4階の執務スペースの様子。天井を高く取り、柱や仕切りのない空間は開放的で、みんなの顔が見渡せる】

【かつては会議室をとる必要があった簡単な打ち合わせも、リフレッシュスペースで行えるようになった】

リフレッシュスペースでも、お昼休みになると自然と社員が集まり、会話を弾ませながら一緒にランチを食べる光景が見られるようになりました。畳敷きの小上がりは、毎日さながら「女子会」だとか。

こうした普段からのコミュニケーションが業務の効率アップにつながっていると、菊田さんはいいます。「今は直接仕事の話ができる環境になりました。それだけでも効率はすごく違います」

オフィスの空間づくりで、働く人の意識も変わる

「コミュニケーションが増えたことでお互いの理解が深まって、風通しが良くなりましたね」と、作間さん。以前はまったく見えなかった他部門の仕事も見えるようになり、部門間の意識のズレがなくなってきたといいます。

職人気質の部門もある仙建工業では、何十年も続く仕事の様式を大事にする考え方もあります。そうした中での組織改革は容易ではありませんが、自然と行動が変わる空間づくりが、そこで働く社員の意識も変えていったのです。

「ここまで仲良くなるとは思わなかったよね。今は支店全体が同じ目標、同じ方向を向いています」。そう話す菊地さんに、作間さんも菊田さんもしみじみうなずきます。新社屋のオフィスづくりによって、福島支店がひとつの組織として団結しはじめています。

 

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ローカリティ!編集部

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