「独眼竜」伊達政宗が開いた城下町、仙台。現在の仙台市は人口約109万人と東北地方最大で、唯一の政令指定都市でもある。宮城県の中央部を奥羽(おうう)山脈から太平洋まで貫く市域は自然が豊かで、街路樹も多く「杜の都(もりのみやこ)」として知られている。
東京から東北新幹線で最速1時間30分というアクセスの良さもあり、年間を通して多くの観光客で賑わっている。しかし、仙台城(青葉城)跡を見学して牛タンとずんだ餅を味わった後は、「日本三景」松島や「陸奥国一宮(むつのくにいちのみや)」塩釜(しおがま)神社などに向かう人がほとんど。残念ながら「杜の都」の魅力を堪能しているとは言い難く、本当にもったいない。
そこで、暇にまかせてカメラ片手に仙台市内を歩き回っている筆者が、とっておきの散歩スポットをいくつか紹介したい。
仙台散歩スポット「定禅寺通」
仙台の都心に緑豊かな森が広がる。宮城県庁と仙台市役所の南側を東西に伸びる定禅寺通(じょうぜんじどおり)。勾当台(こうとうだい)公園から西公園までの約700メートルにケヤキ並木が続き、「杜の都」を象徴する景観となっている。
藩政時代、仙台城の鬼門を守る位置に定禅寺が置かれ、奥州街道から寺に向かう参道が定禅寺通と呼ばれた。1945(昭和20)年7月10日の仙台空襲で中心市街地は焦土と化したが、翌年には戦災復興事業が始まり、定禅寺通は幅員46㍍の街路に生まれ変わる。6車線の中央に12㍍の緑地帯が整備され、1958年に両側7㍍の歩道と合わせてケヤキの若木166本が4列に植えられた。
60年余りが経過した現在、ケヤキ並木は樹高15㍍を超える大樹に育ち、幹の上に広がる枝葉が通りを覆っている。緑地帯の遊歩道には彫刻やベンチが置かれ、「せんだいメディアテーク」や県民会館などの公共施設が沿道に並ぶ。
春から初夏には新緑を愛で、盛夏は緑陰に涼を求める人が絶えない。9月の「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」、12月の「SENDAI光のページェント」など仙台を代表するイベントの会場でもある定禅寺通は、市民にとって四季を通して癒しの空間となっている。仙台を訪れた際には、是非足を伸ばしてほしい。
写真1 定禅寺通に隣接した建物から見下ろすと、ビルの谷間に“緑の大河”が広がる。
写真2 新緑の定禅寺通。木漏れ日の下、散策には絶好の季節だ。
写真3 道路沿いには外壁がガラス張りのビルも多い。ハーフミラーの中にケヤキ並木がさらに続いていく。
写真4 1991年から開催されている「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」。県内外から音楽愛好家が集まり、ジャズやロックなど幅広いジャンルのメロディーが街路樹の下に溢れる。
写真5 「SENDAI光のページェント」は仙台の冬の風物詩。冬枯れの並木を数十万個のLED電球が彩る。
写真6 定禅寺通の遊歩道には仙台市の「彫刻のあるまちづくり」の一環として、いずれもイタリアの彫刻家の作品3体が設置されている。(左から)エミリオ・グレコ『夏の思い出』、ジャコモ・マンズー『オデュッセウス』、ヴェナンツォ・クロチェッティ『水浴の女』
写真7 定禅寺通に面して建つ「せんだいメディアテーク」は市民図書館やイベントスペース、ギャラリーなどからなる複合施設。建築家・伊東豊雄の代表作品の一つで、総ガラス張りの外観がケヤキの緑に映える。
写真8 時間帯や季節によって、定禅寺通はさまざまな姿を見せる。