環境を考え、耕作放棄地で肥料を使用しない無農薬野菜の栽培を試行錯誤。島の美しさを後世に残す活動「そらいろのたね」【沖縄県久米島町】

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沖縄県は2023年度、たくさんの「お宝=魅力」をもつ離島各所の事業者さんたちが、SNSなどの『デジタルツール』を利用してさらに魅力的な発信をしていけるように「沖縄県主催🌺価値を伝えて売りまくるためのデジバズ講座」という取り組みを行っています。この記事は、参加された事業者さんを対象に、「ローカリティ!」のレポーターがその輝く魅力を取材し執筆したものです。沖縄離島の魅力をご堪能ください。

沖縄県久米島(くめじま)は、琉球列島の中にある美しい島のひとつです。

その海の美しさに魅せられた町田名保絵(まちだ・なおえ)さんは、久米島の自然を後世に残すために「そらいろのたね」として環境問題を考えつつ無農薬野菜づくりなどを実践し、現在はハーブの栽培に注力しています。

そんな町田さんに、久米島の自然や環境についてお話を伺いました。

海の美しさに魅せられ移住し、環境問題を考える

北海道出身の町田さんは、趣味のダイビングで知り合ったご主人との結婚を機に久米島に移住しました。移住した理由のひとつとして大きかったのは「海の美しさです」と、町田さんはいいます。また、「自然が手つかずのところが多く、人工物が少ないところが良いと思います。都会はいろいろな情報が雑多すぎて疲れてしまいます。久米島のような自然に満たされて何もないところは、逆に感覚が研ぎ澄まされてとても気持ちがいいです」と、久米島の魅力を語ります。

しかし移住後、もずく漁の手伝いをしていたときに「海水の温暖化でサンゴが真っ白になったのを見て驚き、とても広い海だけどデリケートでもあると感じました。また、海の沿岸部と沖合では海の豊かさが違います。沿岸は生活排水もあり、陸上からの汚染も気になりました」と、久米島の自然環境について考えるようになりました。

その後町田さんは農業の統計調査員の仕事を行った際に、サトウキビに使用する農薬やその影響のことなどを聞く機会があり、環境活動への思いがますます募ったといいます。

肥料を使用しない無農薬栽培を試行錯誤

転機になったのは、2011年の東日本大震災でした。福島の子どもたちのための久米島の保養所が完成し、だんだん移住者が多くなるにつれて、町田さんも「自分も何かをしなくては」と、以前から興味のあった環境問題を解決する方法のひとつとして耕作放棄地を借りて無農薬野菜を作りはじめました。

肥料も使用しない”自然栽培”といわれる農法で、いわゆる”雑草”と呼ばれる草を敵とせず、そのまま生かした”土づくり”をすることがポイントです。

無農薬栽培で苦労したのは除草剤の存在でした。ほかの農地で使用していると地下から滲み出たり、風で飛んできたりなど、隣接する土や植物に影響があるとのことでした。

その後2021年に借りていた土地を返還しましたが、町田さんのお義母さんがほかの方に貸していた農地を使い、刈草や剪定枝、若干の鶏糞、米ぬかボカシなどを使用した土づくりをしながら、改めて桑やグァバ、梅、月桂樹やシークワサー、アセロラ、バナナ、パパイヤなど苗木を植えたり、豆類(ウツマミ(下大豆)や、ムクナ豆)、雑穀(タカキビ)、サトウキビ、ウコン、インド藍、ハーブ、芋類、野菜など多品種少量栽培をしています。

 育てている植物は 食べられるものだけではなく、虫よけや化粧品づくりなどに使用できる香りのよいハーブ、染色に利用できるものなどあり日々の暮らしに役立てています。

「今後は食と健康にフォーカスし、雑穀や豆類を発酵させ野草や薬草と共に楽しむベジタリアン料理会や、元エスティシャン、トリートメントサロンで勤めていた経験とヨーガ療法の知識を融合させたリラクゼーションや畑ヨーガの開催など、もっと身近に草木とふれあう暮らしの提案をしていきたいです。

同居している母も月桃(げっとう)という植物の茎から籠づくりをしていますので、月桃づくしの体験会も面白そうです」と、町田さんは語ります。

無農薬・無化学肥料栽培のサトウキビ酢(写真右)と、ムクナ豆のピクルス(写真左)

町田さんのお義母さんが作った月桃かご。体験講座を開催しています。

たわわに実るムクナ豆(八升豆)。無農薬・無肥料栽培で育てられる在来種の普及活動をしています。

ムクナ豆と焙煎裸麦を金山寺麹で醸し、久米島深層水塩、ミネラル水で醤油を仕込みました。

同時に、「食の安全の確保と環境保護のため、持続可能な農法、作物の地産地消をすることが島全体の目標ではないでしょうか」と、問題提起も。

町田さんは食の安全に関して“沖縄県食と農を守る連絡協議会”や、遺伝子書き換えのゲノム編集種苗・食品が出てくることに懸念を感じた市民が立ち上げた共同プロジェクである”OKシードプロジェクト”の加盟店として、シェアシード活動をしています。

また島内では、講師を招いての講演会や、上映会の開催、行政や議員の方々へ資料配布、子育て支援サークルやJA女性部などへお伝えするなど、草の根活動をしてきました。

「そこで気がついたことですが、これだけ環境の変化があり、食の安全性、食糧自給率の低さが危ぶまれているにも関わらず、関心をもち調べたり、実際に行動する人が少ない」と、伝え方を変える必要を感じたとのことです。

「庭や農園を暮らしの延長線におき、自然に寄り添う暮らしを楽しみながら、持続可能な生きかたにトランジション(移行、変化)していきましょうということを体験し、共感していただけたら良いなぁと思いました。人と自然が共存できる新しい暮らしづくりであるパーマカルチャーの手法も取り入れ、この環境を後世に残すため、自分のできることを行いたいです」と、町田さん。

久米島の環境を持続可能にするために、できることを

久米島について、町田さんは「サンセットビーチまで車で15分くらい。島全体も大きくないのでいろいろな名所に気軽に行けます。この規模感が久米島のいいところだと感じています。最近若い移住者の方が多くいてFacebookなどを通してつながったりしています。久米島全体が大きな家族や親戚という感じで、なんとなくお互いが何をしているのかがわかるんです。でもお互いが干渉しすぎずに過ごしていて、そこが暮らしやすい環境だと個人的に思っています」とのこと。

だからこそ、「この環境を後世に残すため自分のできることを行いたい。ひとりでは到底達成できない目標なので、何かを批判する環境活動ではなく、共感を得られ、わくわくする楽しみを創造していくような活動を目指しています」。

町田さんの「そらいろのたね」の活動には、そんな思いが込められています。

「琉球は古くから中国、日本、そして米国という大国との関わりのなかで、その経験から平和意識がとても高くなっています。沖縄が変われば日本が変わり、日本が変われば世界が変わるということで、物質的豊かさから精神的な豊かさへと意識を変え、今まであたりまえにあったことも、一つひとつ見直していくタイミングのようです。地球のヘソといわれる琉球諸島の久米島で、ぜひこのエネルギーも体感していただきたいです」と、久米島への思いを語ってくれました。

森川淳元

森川淳元

秋田県秋田市

編集部編集記者

第1期ハツレポーター
秋田県北秋田市出身です。少しばかり出版や取材などに関わったことがあり参加させていただきました。レポーターになり、改めて秋田ならではの面白いところを深掘りできたらと思います。

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