「ゲームサーバー開発という、脇役を極める」。創業から目指すエンジニアファーストの意図は?【北海道札幌市】

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株式会社スタジオセム 代表取締役

Shinya Otaki
大瀧 真也氏

「ゲームサーバー開発という、脇役を極める」をスローガンに、ゲーム開発者が開発に専念できるようにと、サーバサイドの開発事業を展開している札幌の株式会社スタジオセム。代表取締役の大瀧 真也(おおたき しんや)さんが、大手ゲーム会社でのプログラマーや個人事業主の経験を生かし、2017年に元同僚2人とともにスタートしました。「プログラマーに優しい会社」を目指すとともに、自らプログラマーを世の中に輩出するフリースクールも運営する大瀧さん。あえてバックエンドにこだわり、無料でその技術を教える大瀧さんに、これまでのキャリアや事業にかける思い、展望などを伺いました。

ガラケーアプリ開発、ゲームサーバー開発と10数年プログラマー一本で積んだ経験を糧に、元同僚と起業

立ち上げまでのキャリアを教えてください。

新卒から数年間、Web開発系の会社でプログラマーとして働いていました。当時主流だったガラケーのアプリ開発をメインに任されていたのですが、年々仕事に物足りなさを感じ、もっとプログラマーとして上を目指そうと転職を決めました。
転職先は、大手ゲーム会社の札幌スタジオです。ここで約7年間、有名IPのサーバサイドの開発を任されていました。
ゲーム関連の開発はとても新鮮で、日々刺激を受ける環境でした。

スタジオセムを設立したきっかけを教えてください。

実は転職先が17年に解散になってしまい、そこで東京の会社に転属するか退職するかを選ばなくてはならなくなりました。地元の札幌を離れることは考えにくく、同僚の2人とともにそれぞれがまずはフリーランスでプログラマーを続けようと決めました。
仕事は前職からの繋がりもあったので順調に進みました。
案件も増えてきたタイミングで元同僚の2人と一緒に3人で会社としてやっていった方がいいのではないか、と話し合い法人化しました。

同業他社との差別化のために選んだのは「ゲームサーバー開発に特化」すること

立ち上げに際し、どのような会社づくりを目指していましたか?

創立メンバー3人が全員プログラマーであることから、これからメンバーになるプログラマーのことも考慮して、「プログラマーに優しい会社」にしようと思いました。「エンジニアファースト」を目指そうと。その思いは今も変わっていません。
ですが正直、スタジオセムは必要に迫られてというか、流れで創業にいたってしまったので、経営理念とかビジョンを意図するものがないままスタートしてしまいました。方向性が定まらないまま走り出したことで、後々さまざまな決断シーンで苦労しましたが、今では、社員全員が、ゲームサーバー開発をベースに幅広く事業を展開していこうという同じベクトルで日々頑張っています。

現在の事業内容について具体的に教えてください。

ソーシャルゲーム、コンシューマーゲームなどのゲームサーバ・バックエンドサーバの開発が主な事業です。
ほかにはWebシステムやメタバース関連の制作も対応しています。最近ではゲームサーバー開発で技術的にお困りの同業者向けに、ゲームサーバー開発のコンサルティングも行っています。

ゲームサーバー開発に特化しているのはなぜでしょうか?

この業界でゲームサーバー開発に特化した会社はほぼないので、その部分で他社と差別化しようと思いました。
ゲームサーバー開発は、通常のサーバー開発に比べて、サーバーの負荷を意識する必要があります。急なアクセス集中によるサーバーダウンを回避したり、プレイヤーのチート行為を防止するためセキュリティーを高めたりなどに重きをおいた開発技術が必要です。私たちは、前職含め某大型IPで高負荷なサーバサイドの開発は十分経験済みです。
超高負荷のサーバサイドの開発を高品質で提供できているからこそ、「ゲームサーバー開発に特化している」と自信を持って言えます。

社員への「尊重」「感謝」。プログラマーが損をしないための「セム10カ条」を制定

プログラマーの就職支援として“修行制度”と呼ばれる完全無料のスクールを運営されているそうですが、始められたきっかけや展望について教えてください。

自社にプログラマーを増やしたいという思いから、フリースクールを運営し始めました。3人とも採用や人事の知見がないので、募集方法がまるでわからなかったことや、元同僚仲間で始めた会社でもあったので、まったく知らない人を採用することにも抵抗がありました。
通ってもらっているうちに、人となりもわかってきますし、プログラマーとして適性があるかどうかの判断にもなると考えました。今ではスクールからのジョインメンバーも増えています。

ユニークな働き方を提唱した「セム10カ条」というものがございますが、制定された経緯を教えてください。

冒頭にも話したのですが、狙いは「プログラマーに優しい働き方」です。能力の高いプログラマーが損をしない環境が理想です。自分のタスクがしっかりできていれば、働き方についてはこだわらないです。それぞれの生活スタイルにあわせた働き方をしながら、スキルや能力で正当に評価されるプログラマーになってほしいと思い、作りました。

お仕事をするうえで一番大切にされていることを教えてください。

社員への“感謝”と“尊重”を忘れないことです。 私1人では到底会社は回りません。「スタッフがいてこそ会社は成り立つ」という、一見当たり前に見えることに感謝を忘れてはいけないと思うんです。
また、プログラマー1人1人のプログラミングのやり方について、尊重するよう意識しています。プログラミングには正解はないので、その人が何を考えこれを作ったかを意識するようにしてます。きちんとアウトプットができていれば、あまり作りに関して押し付けない。
決して否定はせず、「こういうやり方もあるよ」と提案するに留めます。提案を選ぶかどうかは自分で判断してもらうというスタンスです。

ゲームサーバー開発の技術を生かした新事業とゲーム自体の開発も視野に。「バックエンドのスペシャリストに」

今後はどのような会社にしたいとお考えですか?

やはりゲームサーバーにこだわっていきたいですね。弊社のスローガンにもあるとおり「ゲームサーバー開発という、脇役を極める」ということです。脇役であること。バックエンドのスペシャリストでありたいです。

手がけてみたい、挑戦してみたい事業があれば教えてください。

ゲームサーバー開発の技術をもっと生かした、ゲーム以外の新事業を今後進めていきたいです。
また、フリースクールの多様化にも力を入れたいです。もっとたくさんの人に対応できるような体制ができたらと考えています。今は少人数しか受け入れできないので、より多く学べる環境を作りたいですね。
もう一つは、ゲーム自体を作ってみたいです。これからもゲームサーバー開発に特化していくのはもちろんですが「サーバー屋が作るゲーム」という新しい分野に挑戦したいとも考えています。

仕事じゃなくてもいい、「やり切る」経験を積むこと。社外活動で自分だけの武器づくりを

一緒に働くスタッフに対して、会社としてどのようなことを求めますか?

何でもいいので新しいことにチャレンジしてほしいです。趣味のコミュニティーでもボランティアでも、興味の湧いたことなら何でもいいです。さまざまな経験を積むことは、ものづくりのシーンにおいて、発想力や企画力を豊かにする効力があると思っています。
また、技術者目線だけでなく、経営的視点も見えてくると思うのでそのためにもやはり会社以外の場所を持てる社外活動は、ぜひやってほしいですね。

クリエイターを目指す人にアドバイスをお願いします。

同じような答えになってしまうのですが、仕事以外でいいので、何かをやり切る経験を積んでください。取り組むだけではなく、発案者となって最後までやり切ること。その経験は絶対に自分だけの武器になります。そしてやり切った回数が多ければ多いほどその武器は強くなります。何かのコミュニティーに参加してもいいし、自分で立ち上げてもいい。自分の今の活動内容をSNSや動画サイト、ブログなどで発信してもいい。
そういう意識は、ものづくりの考え方の基盤を作るだけでなく、クライアントとのコミュニケーション、課題発見力、提案力の強化にも役立ちます。自分だけの武器や引き出しをたくさん作って、クライアントの目標達成に伴走していけるクリエイターになってください。

取材日:2024年3月27日

株式会社スタジオセム

  • 代表者名: 大瀧 真也
  • 設立年月:2017年12月
  • 事業内容:ゲームサーバー開発事業、Webサービス事業
  • 所在地:〒060-0062 札幌市中央区南2条西5丁目10-2 サンワードFビル4階
  • URL:https://studiosem.co.jp
  • お問い合わせ先:011-596-0106

この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。

宮本 和加子

宮本 和加子

北海道札幌市

クリエイターズステーション

15年間出版社に勤めた経験を活かしてフリーライターとして活動中。フェローズでは風雲会社伝の札幌を担当。普段は雑誌やWebでグルメ系や人物取材記事などを執筆している。ライター以外には、マヤ暦アドバイザーという別の顔も持つ。

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