
朝露に濡れた草原は、まさに“目に染み入るような緑”だ。
生命そのものが芽吹き、風に揺れる草の一本一本が、朝日を浴びてきらめいている。
その手前に広がるのは、悠久の時を経て削られた「父なる岩肌」。
火の国・阿蘇の歴史をその身に刻んだ大地のしわ。
柔らかく瑞々しい若葉の緑と、厳しくも静かな岩肌——
そのコントラストは、まるで人の一生のように胸を打つ。
自然は語らない。だが、すべてを語っている。
草原は「今を生きよ」とささやき、岩肌は「過去の意味」を静かに教えてくれる。
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阿蘇スカイライン展望所から見た、地球の鼓動。
悠久の火山活動が創り上げたカルデラ、その中に広がるパッチワークのような田園風景。背後には阿蘇五岳が堂々と横たわり、「地球って生きているんだ」と語りかけてくるようだ。
風に揺れる草花、幾千年の火山の営みが刻まれた大地。ここ阿蘇は、まさに「地球の命が見える場所」である。
草原の一葉一葉、風の音さえも、命の響きを宿している。

けれど、ふと足元に目をやると——
そこにはプラスチックの袋や空き缶が、ぽつりと落ちていた。
その違和感は、まるで心に刺さる棘(とげ)のようだ。
この壮大な自然に、なんと不釣り合いな存在だろう。
自然は人間のものではない。
人間もまた自然の一部だ。
そのことを、落ちていたゴミが静かに教えてくれた。
拾いながら、私はこう思った。
「未来を拾う手になろう」
阿蘇の景色に心を動かされた、その感動を、次の行動へつなげたい。
阿蘇を守ることは、地球を守ることだ。
そして、それは自分自身の心の美しさを守ることにもつながる。
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たしかに、あの風景の中に立てば、思わず一服したくなる気持ちもわかる。
雄大な景色に心をほどき、日常のストレスがふっと抜けていく。それもまた、阿蘇が与えてくれる癒しの力だ。
しかし、吸い終えた一本の吸い殻。
その小さなゴミが、美しい草原を汚し、火種にもなり得る危険をはらんでいる。
感動をくれた自然には、感謝を返すべきだ。
吸い殻はポケットに、そして心には風景を残そう。
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阿蘇は、地球と出会える場所だ。その感動を、どうか次の世代にも手渡していきたい。
