約200年間愛される四日市のソウルフード・金魚印の冷麦!乾麺の抜群のコシ、香り高い「だし」を味わうお店がオープン【三重県四日市市】

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お食事処 手延麺いとう様提供

四日市の特産品の一つが、大矢知地区で生産される「金魚印」の乾麺です。その始まりは、約200年前、江戸時代末期に旅の僧が冷麦そうめんの製法を伝えたことだそう。朝明(あさけ)川の水、鈴鹿山脈からの季節風、三重県北西部で小麦の生産が盛んだったことから、冷麦やそうめんづくりが農家の副業として広がりました。

昔は夏休みのお昼ごはんといえば、金魚印の冷麦やそうめんだったねえ……そんな元四日市っ子もたくさんいることでしょう。しかし、現在、生産しているのは5軒だけになり、贈答品としての利用も減少しています。

「大矢知の乾麺を知ってほしい!」――2026年2月、気軽に冷麦、そうめんを食べられる「お食事処 手延麺いとう」が四日市市諏訪町にオープン。オーナーは生産者の一人・伊藤製麺所の伊藤寿人さんです。これはぜひ食べねば……!ランチをいただき、お話を伺いました。

外食としていただく冷麦って初めて……おいしい!

開店から2カ月が過ぎたころ、「お食事処手延麺いとう」を訪ねました。近鉄四日市駅から歩いて10分弱。カウンター6席、4人掛けのテーブル1卓と小さなお店です。食券を買い……いや、簡単に買えません。だって、冷麦とそうめん、冷と温、つけめんとかけめん、かけ・きつね・肉・カレーと、メニューを選ぶのに迷ってしまいます。やっとのことで、まずは基本的なものを食べてみようと、「そうめん・つけめん・冷たい」を選びました。

調理するのは宮野敏樹さん。長くうどん屋さんで調理を担当してきた麺類のプロフェッショナルです。宮野さんが一人前のそうめんを熱湯にバラッと入れます。湯気の立つ中で2分30秒ゆで、氷水にとってしめたあと、「はい、どうぞ」とトレーにのったそうめんを出してくれました。「つけ汁が足らなかったら、おっしゃってくださいね」。

あ。外で食べるそうめんだ。それが第一印象です。母がつくってくれるそうめんや冷麦は、こんなにおしゃれをしていません。エビ、しいたけ、しその葉を飾ってもらったそうめんは、よそ行きの表情です。氷水からお箸ですくい、つけ汁につけてつるっと一口.……おいしい!細いそうめんなのに、しっかりコシがある。のどごしがいい。気がつけば一杯を食べ終えていました。

外食で食べる乾麺ってこんなにおいしいのか。きちんと作るとこんなにコシがあるのか。正直、驚かされました。

おいしさのポイントは時間をかけた調理法。メニューにも仕掛けあり

左が調理担当の宮野さん、右がオーナーの伊藤さん

乾麺のコシを味わってもらうために大切にしていることは、時間通りきちんとゆでること。当たり前のようですが、扱いに時間のかかる乾麺の場合、あらかじめ麺を水に浸けておき、オーダーが入ったらそれをゆでる店も少なくないようです。「乾麺の良さを知ってほしいから、乾麺のままお湯に入れて調理します。冷麦は7分30秒、そうめんは2分30秒、しっかりゆでるんです」と伊藤さん。お客様の回転率に影響しそうですが、そこは譲れないポイントです。特に、冷たい麺をいただくと、乾麺のコシを堪能することができます。

だしにもこだわります。宮野さんは、前日から昆布だしを準備し、かつおだしを合わせて麵つゆをつくっています。「温かい麵はより香りがたちますので、これもぜひ味わってほしいですね」。

手をかけ、時間をかけることで作業は非効率的になります。けれども、効率を求めるなら電子レンジや冷凍食品を使って家庭で調理できてしまいます。せっかくの乾麺の店なんだから効率的でない調理で、乾麺のおいしさをたくさんの方に知ってほしい。2人のそんな願いが見えてきます。

「かけ、きつね、肉、カレーって、このメニューってなんだと思います?」と伊藤さんが私に質問します。え?えええ?なんですか?「これね、冷凍食品として売られている麺類のメニューなんですよ」。なるほど!そういえばそうだ!メニューの仕掛けに感動!「だから、効率的に家庭で食べている麺類と、この店で食べた乾麺を食べ比べてほしい。ぜったい、乾麺はうまいから!」と語る伊藤さん、隣で笑う宮野さんに脱帽です。

金魚が楽しい内装。いろんな物語があります

食器が置かれているトレーには金魚を描いた紙が敷かれ、箸袋にも金魚が泳いでいます。浴衣の反物のような金魚柄です。

カウンターの背後には、知人の書道の先生が書いた「手延麺いとう 伊藤製麺所」の文字、その息子さんが書いた「金魚印」の文字があります。金魚のイラストは伊藤さんの娘さんが描きました。たくさんの人の手でできあがったお店です。

お客様からもさまざまなエピソードが語られます。「金魚印ってなつかしいから食べに来た」「この辺に店ができたって聞いたから」「冷麦やそうめんの店ってなかなかない」「実はこの近くに昔住んでてね」――オープンして2カ月、お昼時には行列ができるほどになったのは、金魚印ファンの口コミが大きいようです。客層は30代以降、どちらかというと年配に近い人が多く、将来はそこを軸にしながら若い人たちにも来店してもらえたらと夢が広がります。

「店には、いろんな人やストーリーがあるからこそ楽しい」と伊藤さんは語ります。金魚印を目印にして、たくさんの人のストーリーが集まる場所になったらいいなと思いつつ、店を後にしました。

※TOPの冷麦の写真は、お食事処 手延麺いとうさまよりご提供いただきました。ありがとうございました。その他の写真は、2026年5月11日の取材時に筆者が撮影したものです。

情報

お食事処 手延麺いとう
場所:三重県四日市市諏訪町12-3
電話:059-340-4413
営業時間:11:00~14:00/17:00~20:00
定休日:水曜日
公式サイト:https://tenobemen-ito.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/itoseimenzyo/

加藤道子

加藤道子

ひとり旅と温泉が好きなフリーライター。運転免許がないため、どこへでも公共交通機関を利用して出かけていましたが、加齢のためか左ひざを損傷中…泣。

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