60年以上、神輿を乗せて海を渡った御座船が引退。「塩竈みなと祭」で最後の航海【宮城県塩竈市】

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東北地方に暮らし始めて、もうすぐ3年。

山形の花笠まつりをはじめ、東北各地の祭りへ足を運ぶようになったが、これまで知らなかった「東北の夏の先陣を切る祭」があった。

宮城県塩竈(しおがま)市で毎年、海の日に開催される「塩竈みなと祭」である。

しかも2026年の第79回は、60年以上にわたって祭りを支えてきた2艘の御座船(ござぶね)にとって、最後の航海となる特別な年だった。

その歴史の節目を見届けるため、7月20日、塩竈へ向かった。

日本三大船祭りの一つ「塩竈みなと祭」

「塩竈みなと祭」は、広島県宮島の「管絃祭」、神奈川県真鶴(まなづる)町の「貴船まつり」とともに、日本三大船祭りの一つに数えられている。

始まりは、戦後間もない1948(昭和23)年。戦争によって疲弊した港町・塩竈の産業復興と、市民に元気を取り戻すことを願って始まった祭りである。

現在は海の日に本祭、その前日には花火大会が開催され、塩竈の夏を代表する祭りとして受け継がれている。

筆者が今回見てきたのは、本祭で行われる陸上パレードと、この祭り最大の見どころである「神輿海上渡御(みこしかいじょうとぎょ)」だ。

海の上だけではない 街を彩る陸上パレード

神輿海上渡御が行われている間、塩竈の街中も祭り一色になる。市内では陸上パレードが行われ、地元の団体を中心に、多くの人たちが踊りを披露する。色鮮やかな衣装に身を包み、それぞれの団体が個性あふれる振り付けで街を進んでいく。

沿道には観光客だけでなく地元の人々も集まり、踊り手に声を掛けたり、手拍子をしたりしながら祭りを盛り上げる。御座船が海を巡っている間も、陸では人々が踊る。

海と街の両方が一日を通して祭りの舞台になることも、塩竈みなと祭の面白さだった。

神輿が海を渡る「神輿海上渡御」

そして、塩竈みなと祭を象徴するのが神輿海上渡御である。

陸奥国一宮(むつのくにいちのみや)である志波彦(しわひこ)神社と鹽竈(しおがま)神社、2基の神輿をそれぞれ御座船「龍鳳丸」と「鳳凰丸」に奉安する。

2艘の御座船は多くの供奉(ぐぶ)船を従え、塩釜港を出発。日本三景・松島湾を巡幸した後、夕方に西埠頭へと戻ってくる。

筆者は今回、その御座船が長い海上渡御を終えて港へ帰ってくる瞬間を見届けた。

これまで各地の祭りを訪れてきたが、神輿が船に乗り、海を渡って巡幸する神事を実際に見るのは初めてだった。神輿といえば、人々が担いで街を練り歩く姿を思い浮かべる。

しかし、ここ塩竈では、その舞台が海へと広がる。

古くから海とともに暮らし、港町として発展してきた塩竈。祭りを見ていると、この土地にとって海が単なる景観ではなく、人々の暮らしや信仰と深く結び付いた存在であることが伝わってくる。

60年以上、祭りを支えた2艘の御座船

そして、第79回となった今回の塩竈みなと祭には、例年とは違う特別な意味があった。

神輿を乗せる2艘の御座船「鳳凰丸」と「龍鳳丸」が、この祭りを最後に引退することになったのである。

鳳凰丸は、鹽竈神社の神輿を奉安する御座船。現在の船は1965(昭和40)年に建造され、長年にわたり塩竈みなと祭を象徴する存在として海を渡ってきた。

一方の龍鳳丸は、志波彦神社の神輿を奉安する御座船。1964(昭和39)年に建造され、辰年にちなみ、その船首には勇壮な龍頭があしらわれている。いずれも60年以上にわたり、年に一度、神輿を乗せて松島湾を巡ってきた。

祭りの歴史そのものを背負ってきた2艘と言ってもいいだろう。しかし老朽化により、第79回をもってその役目を終えることになった。

2026年7月20日。この日の海上渡御が、2艘にとって最後の航海となった。

2艘が並んだ、最後の帰港

夕方、海上渡御を終えた御座船が西埠頭へ帰ってくる時間が近づく。

そして最後の帰港では、特別な光景が待っていた。

それまで別々に松島湾を巡っていた鳳凰丸と龍鳳丸が並び、そろって西埠頭へと帰ってきたのである。

海の向こうから、2艘の御座船が少しずつ近づいてくる。

60年以上、同じ海を渡り続けてきた2艘が、最後に並んで港へ戻ってくる。

今回が初めての塩竈みなと祭だった筆者にとっても、会場でこの帰港が特別なものであることを知り、不思議な縁を感じずにはいられなかった。

祭りの歴史を長く知っているわけではない。それでも、長い役目を終えようとする2艘が並んで海を進む姿には、自然と目を奪われた。荘厳な御座船と、その背後に広がる塩竈の海。

60年以上続いた一つの時代の最後にふさわしい、神々しさを感じさせる光景だった。その瞬間を写真に収めることができたことも、今回この祭りを訪れてよかったと思えた理由の一つである。

次の航海へ

2艘の御座船が最後の航海を終えたことで、塩竈みなと祭の歴史に一つの区切りがついた。

しかし、祭りそのものが終わるわけではない。

次回、第80回という節目からは、新しい御座船へと役目が受け継がれていく予定だ。

戦後の復興を願って始まり、海とともに歩みながら79回を重ねてきた塩竈みなと祭。

60年以上祭りを支えた船から、新しい船へ。2026年は一つの時代の終わりを見届けた。そして次回は、新しい時代の始まりを見届ける祭りになる。

次の海の日には、新たな御座船が塩竈の海へ漕ぎ出す姿を見に、この港町を訪れてみてはいかがだろうか。

※写真は全て2026年7月20日に筆者撮影

情報

塩竈みなと祭 概要
開催日:毎年「海の日」に本祭を開催
開催場所:宮城県塩竈市内
主な会場:塩釜港西埠頭、マリンゲート塩釜周辺、市内中心部など
アクセス:マリンゲート塩釜・西埠頭まで、JR仙石線「本塩釜駅」から徒歩約10分

田口雄太

田口雄太

神奈川県出身。現在は山形県で探究教室の運営に携わっています。アフリカ・ルワンダでの2年間の生活経験もあり、旅と写真を通して、その土地ならではの感動を伝える記事づくりを目指していきます。

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