「宇宙への玄関口」は世界のビジネスチャンス。「共同戦線」で東北の地域産業を巻き込む【宮城県仙台市・福島県南相馬市】 

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世界各地に「宇宙への玄関口」となるスペースポートをつくろうとしているASTRO GATE株式会社。その代表取締役社長を務める大出大輔(おおで・だいすけ)さんが、2026年9月3日、4日に仙台市で開催されるビジネスカンファレンス「ATERUI 2026」に登壇する。東北で新しい事業に挑む起業家や企業の後継者、地域の未来を担う人たちが集う場で、今年のテーマは「共同戦線」だ。

大出さんは大学で建築を学び、東日本大震災をきっかけに耐震研究へ進んだ。株式会社大林組の研究者として熊本城の復興などに携わった後、新規事業で宇宙産業と出会い、北海道スペースポートを企画運営するSPACE COTAN株式会社を共同で立ち上げた。そして現在はASTRO GATEを率い、世界各地のスペースポート事業に関わっている。

2026年8月7日には、スペースポートを起点に生まれる物流、エネルギー、製造、観光などの事業を、異業種の企業とともに形にするアライアンス「SAKURA」の設立を発表。世界で見つけた課題やビジネスの可能性を、日本の企業とつなごうとしている。 

世界で広がる宇宙港事業を、どのように東北の企業とともに進めようとしているのか。 ATERUI登壇を前に大出さんに話を聞いた。

世界各地の「宇宙への玄関口」を手がける

ASTRO GATEについて、大出さんは「スペースポートの会社です」と話す。

スペースポートは、ロケットの打ち上げや着陸などを行う、いわば宇宙版の空港。現在の宇宙産業では、ロケットをつくる会社が発射場も整備し、人工衛星やそのサービスまで自社で担う「垂直統合」も多い。

しかし大出さんは、産業が成熟すれば航空業界と同じように役割が分かれていくと見る。

「航空業界も、もともとは飛行機をつくる会社が、滑走路をつくって運営するところまでやっていました。でも今は、飛行機をつくる会社、運航する会社、空港の会社に分かれている。宇宙産業も、これからどんどん水平分離していくはずです」

ASTRO GATEが担おうとしているのは、その「空港」にあたる領域だ。

さらに、一つの地域のスペースポートを運営するだけではなく、そこで培った企画や運営の知見を世界各地へ展開していくことを目指している。

その背景には、大出さん自身が北海道でスペースポートを立ち上げてきた経験がある。

大林組を辞めた後、大出さんは北海道広尾郡大樹町で北海道スペースポートを企画運営するSPACE COTANを共同で立ち上げ、取締役COOに就任。約3年半にわたって、発射場の企画運営やロケット打ち上げの実現に携わった。

「これからスペースポートが世界中に増えていく。その中で、SPACE COTANにいるままだと北海道のスペースポートにしか関われない。それはもったいないなと思ったんです。ASTRO GATEなら、一つの地域に限定せず、北海道で培ったスペースポートの企画や運営の知見を、他の地域や世界中のスペースポートへ横展開できる。そう考えてASTRO GATEを立ち上げました」

宇宙港から見えてきた、世界の「困りごと」

世界でスペースポート事業を進めるうちに、大出さんのもとには、思いもよらない相談が持ち込まれるようになった。

「スペースポートをやろうとすると、その国のトッププレイヤーの方々とお会いする機会が増えるんです。大統領や副首相と会う国もあります。そこでスペースポートの話と一緒に、その国が今一番困っていることや、トップの方が抱えている悩みを聞く機会が出てきました」

ある国では、人材を日本で活躍させられないかと相談された。別の地域では、大規模なプランテーションで生産したものの市場を開拓できないかという話も出てきた。宇宙港を入り口に、その国が抱える産業や雇用、流通など、宇宙とは直接関係のない課題まで見えてくる。

しかも、一つひとつの規模は小さくない。人材の例では国を挙げて学校をつくり、プランテーションも大規模に展開されているという。

こうして世界で出合うビジネスチャンスに、ASTRO GATE一社で全て応えることはできない。そこで生まれたのが、新たなアライアンス「SAKURA」だった。

宇宙港の「その先」の仕事へつなぐ。新アライアンス「SAKURA」

2026年8月7日、ASTRO GATEは、スペースポートとその周辺ビジネスの実現を加速させるアライアンス「SAKURA」の設立を発表した。

対象となるのは、宇宙港の建設や運営だけではない。宇宙港を起点に生まれる物流、エネルギー、製造、観光などの事業にも、それぞれ異なる技術やサービスを持つ企業が連携して取り組む。

一般社団法人Space Port Japanと次世代型宇宙港ワーキンググループが支援組織として参画し、9月の本格始動に向けてパートナー企業を募っている。

「そういう相談は、僕らだけでは全く対応しきれません。スペースポートの企画運営と、そこをきっかけに出合ったいろんなビジネスチャンス。その両方にすぐ対応できるように、いろんな業種の方々と連携して実現していく。そのためのアライアンスがSAKURAです」

ASTRO GATEが世界各地で得た案件や情報と、日本企業が持つ技術やサービスをつなぐ。

「僕らが世界中を回って獲得してきたビジネスチャンスを、日本の最高のクオリティーで実現していく。それをより早めていきたいと思っています」

宇宙港を入り口に見つけた世界の仕事を、一社で抱えるのではなく、異業種の企業とともに形にする。そのための「共同戦線」が動き始めた。

スペースポートは、東北の「地元の仕事」になる

その可能性は、すでに福島県南相馬市でも見え始めている。ASTRO GATEは地域の人たちとともに、ロケットの実験ができる環境を整えてきた。

「ロケット会社は、軌道投入用のロケットを打ち上げる前に、小さいロケットで実験を重ねます。そのためには仮設の地盤工事やプレハブが必要なので、地元の建設会社さんに発注する。打ち上げでは、警備会社さんや漁協さんに陸と海を警備してもらう。燃料も現地で調達するし、作業員や見学者は地域に泊まって、飲食店で食事をする。その裏には地域の一次産業の方々もいます」

メンバーが着るASTRO GATEのシャツも、南相馬市内の事業者に発注しているという。

「すでにそういう形で地域に利益が生まれている。今後、軌道投入用ロケットの発射場になれば、それが何十倍、何百倍という規模になって、地域の既存ビジネスの需要も大きくなるはずです」

宇宙港は、最先端の宇宙企業だけで成り立つものではない。地域にすでにある仕事ともつながっている。

「スペースポートは、宇宙産業の中でも地球上のインフラを扱うビジネスです。それを起点に街づくり全般につながっていく。だから、あらゆる産業の方が関われるんです」

さらに将来、ロケットを使って地球上の2地点を結ぶPtoP輸送が実用化されれば、東北の立ち位置そのものが変わる可能性もある。

「福島にスペースポートをつくっていけば、福島、東北が世界と1時間でつながる場所になる。大きなアジアのハブになって、そこに新しいビジネスチャンスが生まれる」

東北を宇宙の拠点へ。ATERUIで広げる「共同戦線」 

SAKURAで異業種との連携を動かし始めた大出さんが、ATERUIで広げたいのも、宇宙企業だけに閉じない「共同戦線」だ。

「宇宙産業に関わっていない方からすれば、スペースポートという単語自体を知らない方がほとんどだと思うんです。僕自身も、ちゃんと分析するまでは、宇宙産業って憧れを追い求めている人がやっているものなのかなと思っていたぐらいです」

だからまず、宇宙産業の中にスペースポートという領域があること、そして東北にも世界で勝負できる可能性があることを知ってほしいという。

「スペースポートをきっかけに、さまざまなビジネスチャンスを今つかみかけています。直接スペースポートに関係ない業種の方でも、一緒に取り組むことができるビジネスなんだということを知っていただいて、東北一丸となって、このビジネスチャンスをつかめればと思っています」

ASTRO GATE自身も、世界で大きな案件に出合う一方、それを形にするための協力体制はまだ十分ではないという。

「ぜひこのATERUIをきっかけに、一緒になって動いてくれる企業が見つかったらうれしいですね」

世界で見つけた仕事を異業種で形にするSAKURA。その「共同戦線」を東北でも広げていくことが、大出さんがATERUIに期待していることだ。

世界の役に立ち、日本が誇れる仕事を次の世代へ 

「僕はもともと、そんなに宇宙に興味がなかった。建築が好きで、建築をやっていた人間なんです」

スペースポートを世界へ広げようとする大出さんだが、その原点に「宇宙への憧れ」があったわけではない。建築を通し、大林組で新規事業を担当し、AIやブロックチェーン、ロケット、人工衛星などを事業として分析した。その中で、資金やマンパワーだけではなく地理的条件が競争力になり、世界各地に必要となるスペースポートに、日本が世界で勝負できる可能性を見つけた。

その判断の奥には、自身が育ってきた時代への思いがある。

「僕は1991年、バブル崩壊とともに生まれたんです。この35年間ずっと、世界に対して日本が追い抜かれていくような、今日より明日のほうが状況が悪くなっていくと感じる社会で育ってきた。だから次の世代には、今日より明日のほうが良くなっていると感じられる、経済成長する社会を残したい。宇宙だからやっているのではなく、世界に対して日本人の僕らが役に立てる領域だと思ったから、このビジネスをやっています」

当日のピッチでは、そんな構想を夢物語だけで終わらせないことも意識している。

「感情だけあっても、『それって実現できるの?』と見られてしまう。特に宇宙産業はそうですよね。スペースポートが合理的なプロジェクトであることと、同時に、ものすごく面白くてワクワクするものだということ。その両方を感じてもらえるピッチにしたいです」

そして会場では、参加者と直接話す機会もある。

「ブースでもお待ちしています。どんなことが一緒にできるか、ぜひディスカッションできたらうれしい。お気軽に声をかけてください」

世界中につくられようとしている「宇宙への玄関口」。その拠点の一つを東北につくり、そこから生まれる仕事を世界へ広げる。その「共同戦線」に、どんな人や企業が加わるのか。ATERUIは、その仲間と出会う場になりそうだ。

情報

ATERUI 2026 開催概要

日時:2026年9月3日(木)9:30〜19:30、9月4日(金)10:00〜20:00
会場:
9月3日 SENDAI GIGS(宮城県仙台市若林区荒井東1-4-1)
9月4日 Communication Design Laboratory MEDIUM(宮城県仙台市若林区六丁の目西町6-5)
主催:ATERUI 2026 実行委員会
一般チケット:9,980円
学生:無料
アトツギ・起業家:無料(要件審査あり)
公式サイト・チケット申し込み:ATERUI 2026公式サイト

※大出さんの登壇は、9月3日のStageB「東北発・宇宙産業エコシステム創出のWhyとHow」(12:05〜13:00

ASTRO GATE株式会社 会社概要

会社名:ASTRO GATE株式会社
代表者:代表取締役社長 大出大輔
設立:2024年3月
事業内容:スペースポートの企画・設計・施工監理・運営、宇宙による地域活性化支援、宇宙ビジネス参入支援
本社:東京都新宿区四谷坂町10-10 NOW/HERE新宿四谷 2F 2003号
福島支店:福島県南相馬市小高区本町1-87
公式サイト:https://astrogate.jp/

天野崇子

天野崇子

第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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