本好きな人と書店と出版社による本のフリマ!「本のさんぽみち」でにぎわう商店街【愛知県名古屋市】

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レトロな魅力で人気の愛知県名古屋市にある円頓寺(えんどうじ)商店街で毎年秋に開催される「本のさんぽみち」は、フリーマーケット形式のブックイベントです。一般の本好きの参加者が本を持ち寄って販売する古本市とともに、全国から選りすぐりの書店、古書店、出版社がゲスト出店します。掘り出し物に出会いに毎年多くの人でにぎわいます。2026年10月17日(土)・18日(日)と10月24日(土)・25日(日)に開催されます。

名古屋でも最古の商店街の一つといわれる円頓寺商店街。独特な雰囲気のあるアーケード内には、個性豊かな小さな本屋さんがずらり。私が伺ったのは、2026年開催の初日である17日で、秋晴れのとても気持ちのいい日でした。

商店街は本好きのお客さんでにぎわい、本との出会いを楽しんでいました。出版社のブースではアウトレットの新刊本が割引価格で買えるところもあるので要チェック。

会場を歩いてみると、自分の作品を発信し続けるギャラリー店主や、懐かしい少女漫画を並べる個人出店者など、本を持ち寄る人たちの個性もさまざま。どんな本を選び、どんな思いで出店しているのか、お話を伺いました。 

「自分」がテーマのZINEを作り続ける、柳ヶ瀬商店街の若きギャラリー店主「ニュー銀座堂」

TOMさんのZINE「TOM TOM GIRLS」

いろいろなお店を見て歩いている中で、パッと目に飛び込んできたのがこの表紙。岐阜市の岐阜柳ヶ瀬商店街にあるアートスペース「ニュー銀座堂」のブースにありました。店主TOMさんが作る「TOMしか出ないファッション雑誌ZINE『TOM TOM GIRLS』で、企画・編集・モデル・執筆・デザインすべてTOMさんによるものです。

「ZINE(ジン)」とは個人や小規模グループが手作りで発行する小冊子のことで、近年若い世代を中心に秘かなブームになっています。

2026年8月11日に開催された、「本のさんぽみち」主催のZINEイベント「イマZINE」の取材にも行ってきました。

140組の自作本に詰まった熱い想い! 自主出版物「ZINE」の東海最大級即売会「イマZINE」 【愛知県名古屋市】(ローカリティ!)

「TOM TOM GIRLS」Spring号

フルカラー20ページのファッションZINEには、TOMさんの好きなファッションや映画、音楽などがカラフルに詰まっています。毎号共通のグラビアページ「川SNAP」では、川(長良川でしょうか?)をバックにTOMさんのかわいいコーディネートが楽しめます。巻末にはクスッと笑える「架空広告」があります。ガールパワーにあふれた、キュートでおしゃれなTOMさんの魅力がいっぱいのZINEです。

「TOM TOM GIRLS」Spring号裏表紙 TOMさん自作のマスコット人形

お話を聞いている時にいらしたお客さんがこのZINEを指して、「新しいのまだ出てないの?」と言っていたので、すでに固定ファンが付いているようです。「TOM TOM GIRLS」はこれまで3号出ていて、2025年Winter号は売り切れだそうです。「自分の好きなもの」をポップなビジュアルセンスで非常に魅力的にまとめているので、人気があるのもうなずけます。自分の内面を形にした、一つのアート作品でもあります。

TOMさんはこれまで数冊のZINEを作り続けてきて、全国のZINEイベントにも出展されています。

ニュー銀座堂のブースでは、TOMさんのZINE数種とともに、お店で委託販売しているZINEも販売していました。また古書は岐阜県高山市の本屋「住職書房」によるセレクトだそうです。オカルト雑誌「ムー」がありますね。

ニュー銀座堂は柳ヶ瀬商店街の空き店舗をリノベーションして、2022年12月にオープンしたアートギャラリーです。初代店主さんが高山に転居することになり、2026年4月よりTOMさんが二代目を引き継いだそうです。

ギャラリー展示をメインにしていますが、TOMさんが引き継いだことにより、岐阜のZINE拠点としての活動も活発化しています。ZINEイベントの開催、ZINEの委託販売など、柳ヶ瀬のカルチャー発信地として注目されているようです。

柳ヶ瀬の風景を写した、委託販売のZINE「柳ヶ瀬残景」です。歌手・美川憲一さんのヒット曲「柳ヶ瀬ブルース」で知られる柳ヶ瀬は、昭和の高度経済成長期に中部地方随一の規模を誇った繁華街で、かつては多くの人でにぎわっていました。しかし1980年代以降は郊外型大型店の出店で空洞化し、「日本一のシャッター街」とまで言われるほどに。また柳ヶ瀬は繊維問屋街とともに発展してきましたが、バブル崩壊後に繊維産業が衰退したことも、シャッター街化の一因だそうです。

柳ヶ瀬商店街のInstagramを見ると、確かにシャッターが閉まっているお店も多いようですが、最近は新規オープンのお店も増えていて、若い世代による新たな動きもあるようです。ニュー銀座堂もその一例ですね。商店街の理事長さんもお若い方で、地方商店街再生テーマでABEMAに出演したりと活発に活動されています。

レトロな映画館や喫茶店など、ノスタルジックな風景が残る柳ヶ瀬は、Z世代にブームの「昭和レトロ」そのもの。私も撮影に行ってみたいです。

こちらも委託販売のZINEです。柳ヶ瀬は歓楽街としても栄え、かつては多くの映画館やキャバレー、バー、スナックなどが密集していました。しかし2012年に開催された「ぎふ清流国体」に向けて、西柳ヶ瀬地区などを中心に存在していた風俗店や関連する夜の飲食店が徹底的に排除・一掃されました。これが契機となり、シャッターを閉める店舗が急増し、シャッター街化が加速したと言われます。それでも、柳ヶ瀬には現在でも東海地方唯一のストリップ劇場「まさご座」が残っています。ここが普通の商店街とはちょっと異色な、ディープな側面ですね。

このZINEのように、ストリップに芸術的な魅力を感じる女性ファンも多いようです。柳ヶ瀬の「まさご座」では女性は割引料金で、安心して見ることができます。

柳ヶ瀬のカルチャー発信地、ニュー銀座堂は10月25日にも出店するそうですので、ぜひブースに寄ってみてください。

ニュー銀座堂 公式Instagram:https://www.instagram.com/new_ginzado/

懐かしの昭和少女漫画コレクション「木ノ実書房」

「木ノ実書房」さんは個人での一般出店者です。懐かしの昭和の少女漫画コレクションに目が釘付け! 私が子どもの頃に親しんでいたような漫画家さんの作品が多く、一気にあの頃にタイムスリップ。 

文庫本はH.G.ウェルズやアルチュール・ ランボー、ニコライ・ゴーゴリなど海外の古典文学や、茨木のり子、寺山修司の詩集など。店主さんは普段は書店員として働いていらっしゃるそうですが、さすがの素敵なセレクトですね。

少女漫画は店主さんのご友人のコレクションだそうで、前原滋子さんがお気に入りだそうです。店主さんは私と同世代だということが分かり、「あの頃の少女漫画」のおしゃべりで盛り上がってしまいました。

※「はいからさんが通る」で知られる大和和紀さんの作品もありますが、シブいチョイスです。「源氏物語」の理解のために、「あさきゆめみし」がどれほど役立ったことか。
※昔の劇画雑誌や絵本も。雑誌が70円の時代! 表紙のイラストはフランスの女優ブリジット・バルドーの頃のフランス映画のような、ちょっとおしゃれな雰囲気です。ハンドメイド雑貨もありました。

昭和のレコードもありました。調べてみると「小さな体験」は郷ひろみさんのセカンドシングルで、1972年11月1日に発売され、同時にファーストアルバム「男の子女の子」も発売されたそうです。郷さんは50年以上経った今でも現役バリバリで、本当に唯一無二のエンターテイナーだと感嘆します。

今、私はほとんど漫画は読まなくなっているのに、昭和の少女漫画のコレクションに思いの外、心動かされたのが意外でした。ちまたでは「平成女児」ブームで盛り上がっていますが、「昭和女児」でも何かやってくれませんかねぇ? と昭和世代同士でおしゃべりしたのでありました。

「懐かしのあの頃」に特化した、楽しいセレクトのお店でした。

「本のさんぽみち」について

「円頓寺本のさんぽみち」チラシ

2026年の「円頓寺本のさんぽみち」は、1日当たり約40店、4日間で約160店が出店するそうです。2018年からスタートし、2020年のコロナ期間の休止を挟んで、今年で8回目の開催となります。

「円頓寺本のさんぽみち」は、2008年から2017年まで開催されていたブックイベント「ブックマーク・ナゴヤ」を引き継いで始まりました。「本のさんぽみち」実行委員長の上原敏さんによると、ブックマーク・ナゴヤは1か月間に渡って、名古屋市内各所でトークショーなどのイベントを開くという形式だったそうです。2000年代はまだ全国的にもブックイベントは少なく、ブックマーク・ナゴヤは古参の一つだったようです。

この一企画として、円頓寺商店街で一般参加者による古本市が開かれていたのだとか。ブックマーク・ナゴヤと円頓寺商店街からこの古本市を続けてほしいと請(こ)われ、「円頓寺本のさんぽみち」が始まったそうです。

「本のさんぽみち」オリジナルトートバッグやTシャツも販売。文庫本の奥付のようなデザインが、本好きの心をくすぐります。

ブックマーク・ナゴヤの古本市は一般出店者のみでしたが、「本のさんぽみち」ではゲスト枠として全国から新刊書店や古書店、出版社も参加することになりました。個性的なプロの参加によって、総合的な本のお祭りへと生まれ変わりました。

回を重ねるごとに参加者も増えていきました。応募者が殺到するため、出来るだけ多くの方が参加できるように、一般枠は1日のみの出店となっているそうです。

これをどうするかが悩みどころのようで、上原さんは日数を増やすか、開催する季節を増やすか、思案中とのこと。もしかしたら来年は春と秋の開催になるかも知れないそうです。

ボランティアも42名もの応募があったといい、大人気イベントに成長しました。

呉服屋さんも店先に古本ブースを出していました。雑誌「宝島」の読者投稿コーナー「VOW(バウ)」の単行本、私も持ってました!

「イマZINE」での取材時にも上原さんにお聞きしましたが、このようなブックイベントが人気なのは、ネット空間が日常になり過ぎて、非日常としてのリアルイベントが求められているからなのだろう、とのことでした。お客さんと直接やり取りしたい、アルゴリズムから離れた新しいネットワークを作りたい、日常のストレスを癒したい、というような理由からなのではないかと上原さんは推測します。

各ブースを見て歩いていると、商店街の放送で上原さんが町田町蔵(※)の曲をかけていました。ローリング・ストーンズもかかっていたと思います。パンクがかかるなんて意外!

上原さんによると、会場内BGMは時代や国を問わず「今の時代感」を重視し、メッセージ性も踏まえながら不快にならないよう選曲しているそうです。

こうした意外な選曲も、リアルイベントならではの楽しみですね。

※町田町蔵は芥川賞作家の町田康のパンクミュージシャン時代の名前

いろいろなブースを見てみよう♪

古書ますく堂

「本屋百景 独立系書店をめぐりめぐる」(講談社)より

「古書ますく堂」は大阪市阿倍野区の書店です。新刊本と古書を扱っています。独立系書店102店を訪ね歩いた渾身のルポルタージュ「本屋百景 独立系書店をめぐりめぐる」でも紹介されています。

BOOKSOUNDS「何者からかの手紙」

こちらのお店にお話を聞いたのは、これ↑を見かけて「なんだこれは?!」と思ったからです。BOOKSOUNDSというレーベルが出している、「何者からかの手紙」という覆面作家による手紙小説だそうです。茶封筒の中には便箋2〜3枚の短編小説が入っていますが、開けても作家が誰なのかは分からないそうです。1通220円なので何通か買ってみたくなりますし、面白い仕掛けですね。

「サイゼリヤ ファンブック」は店主さんも関わっているZINEで売れ行きがいいそうです。

しほほんや

イラストレーターのクワハラシホコさんのブースです。ご自身でシルクスクリーン印刷と縫製まで手掛けた、猫のイラストのミニバッグとブックカバーがかわいい! 書籍はご主人との本棚からのものだそうです。普段はイラストグッズで「東別院暮らしの朝市」などのマルシェに出店されているそうです。

タバブックス

「タバブックス」は東京・下北沢の出版社です。ジェンダー、フェミニズム、働き方、反戦などのテーマの本を出版しています。

「男には簡単な仕事」(ニイマリコ 著)は、やまだないとさんによる表紙の絵がとても印象的です。ミュージシャンであるニイマリコさんは、30歳を過ぎて「ノンバイナリー」という言葉を知ります。「自分らしく生きる」 ことについて全てを記した、渾身の初エッセイです。

「仕事文脈」は働くことについて考える雑誌で、2026年春号でVol.28になるそうです。noteで記事の購入もできます。

フィルムアート社

「フィルムアート社」は東京都渋谷区の出版社です。その名の通り、映画や芸術関係の本が充実しています。

フィルムアート社と言えば、現在大ヒット中のホラー映画「バックルームズ」の影響で、「リミナルスペース 新しい恐怖の美学」が売れているのは知っていました。映画の世界観である、新しいインターネット美学「リミナルスペース」の解説本です。私自身、誰もいない長い廊下や寂れたショッピングモールのような世界観がもともと好きで、そういう写真をよく撮るので買おうと思っていた本です。

ブースにいらした方に「リミナルスペース、売れてますねぇ」と言うと、「映画のヒットのおかげです」とニヤリ(笑)

返品された本を訳ありということでアウトレット価格で販売していました。さすがに「リミナルスペース」はないので、本屋さんで買います。

実は今回はフィルムアート社さんでお買い物をする気マンマンで来ました。「色のコードを読む」は以前書評で読んで気になっていた本で、ちょっとお安く購入出来ました!

円頓寺商店街の見どころ

会場の円頓寺商店街は、とても情緒のある商店街で見どころいっぱいです。話題の飲食店が多数オープンし、歴史的な町並み保存地区四間道(しけみち)に接しているので、最近は観光スポットになっています。古い下町の雰囲気と、新しさが混在した魅力的な商店街です。

円頓寺本のさんぽみち チラシより

円頓寺商店街は「那古野(なごの)」と呼ばれるエリアにあり、名古屋駅と名古屋城の中間に位置します。名古屋駅からも十分徒歩圏内です。20分弱でお散歩にちょうどいい距離です。

円頓寺商店街の歴史は江戸時代にさかのぼるそうですが、アーケードが完成したのは1964年だそうです。柳ヶ瀬商店街のように、高度経済成長期に発展した商店街です。

私が名古屋に来たばかりの2000年代前半に一度ここを訪れたことがありますが、その当時はやはりシャッターの閉まったお店が目立っていたのを覚えています。しかしその後「那古野下町衆」と呼ばれる建築家や若い商店主による那古野地区の町おこし団体が発足し、商店街の空き家対策や古民家のリノベーションが進められました。その甲斐あって新しいお店がオープンし、イベントも頻繁に開催して徐々に復活していきました。「ブックマーク・ナゴヤ」もちょうどその頃に始まりました。

この復活劇については「円頓寺商店街の奇跡」(山口あゆみ 著 講談社α新書)という本に書かれていると、上原さんに教えていただきました。柳ヶ瀬商店街も復活戦略が上手くいくといいですね。

galerie P+EN

上原さんによると、2010年にオープンし、円頓寺商店街復活の中核の一つになったのが、アートギャラリー「galerie P+EN」だそうです。お店の前では野菜が売られていました。

なごのや

円頓寺商店街で80年以上も営業してきた老舗喫茶「西アサヒ」は、カフェレストラン&ゲストハウス 「なごのや」として生まれ変わりました。2階がゲストハウスで、1階はたまごサンドが名物のレトロ喫茶店になっています。お客さんでとてもにぎわっていました。

カブキカフェ ナゴヤ座

2016年に名古屋の新名所として円頓寺商店街に誕生した「カブキカフェ ナゴヤ座」は、名古屋山三郎一座による新感覚エンターテイメント「ナゴヤカブキ」が上演される劇場です。若い女性がかなり並んでいて、「2.5次元ミュージカル」と大衆演劇を足して2で割ったようなものなのかな、と推測。イケメンモダン歌舞伎という感じでしょうか。

ボルダリングハウスノット

名古屋市の登録地域建造物資産である、旧サカエ堂をリノベーションした「ボルダリングハウスノット」。円頓寺でちょっとひと汗かいて行きましょう!

四間道

四間道は円頓寺商店街と接する、蔵の残る名古屋市の街並み保存地区です。戦争で焼失した名古屋城の近くでありながら、奇跡的に城下町の町家街が残っています。昔ここに来たときは、観光地でも何でもない、誰もいないところでした。喫茶店などが2、3軒あるだけで、「こんな素敵なところなのに、なんで観光スポットにしないんだろう」と不思議に思いました。今では蔵や町家は店舗として使われているところが大幅に増え、大人のグルメスポットになっています。

町家街にも新しいお店がどんどんオープン!

「円頓寺本のさんぽみち」では、レトロ感と新しいセンスが絶妙にミックスされた円頓寺商店街の魅力も堪能してくださいね!

※写真はすべて2026年10月17日に筆者撮影

情報

「円頓寺本のさんぽみち」https://hon3pomichi.localinfo.jp/

日時:2026年10月17日(土)・18日(日)/ 24日(土)・25日(日)11:00~16:00

会場:円頓寺商店街 https://endojishotengai.com/home.html

アクセス:地下鉄桜通線「国際センター」駅2番出口より徒歩8分、または地下鉄鶴舞線「丸の内」駅8番出口より徒歩8分

公式Instagram:https://www.instagram.com/hon3po/

公式X:https://x.com/hon3po

うえだ あさこ

うえだ あさこ

東京で生まれ育ち、名古屋に住んで20年以上になるフリーライターです。電動自転車に乗り、趣味の写真撮影を活かして取材先を回っています。音楽とアートと建築とお笑いが好きです。

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