
現在(2026年9月~10月)、愛知県各地で開催中の「愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会」のメイン会場、「パロマ瑞穂スタジアム」のすぐそばに、縄文時代の貝塚があることをご存知ですか?「大曲輪(おおぐるわ)貝塚」という遺跡で、当時この辺りは海岸でした。開会式の前日、スタジアム周辺をグルッと回ってみました。
目次
競技会場が集まった「パロマ瑞穂スポーツパーク」

第20回アジア競技大会(愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会、以下「アジア大会」)の開会式・閉会式会場のパロマ瑞穂スタジアム(名古屋市瑞穂公園陸上競技場)は、名古屋市瑞穂区の「パロマ瑞穂スポーツパーク」にあります。ここは長らく「瑞穂公園」として名古屋市民に親しまれてきましたが、アジア大会開催に伴い全面的に整備され、2026年4月に「パロマ瑞穂スタジアム」としてオープンしました。

約30,000席(うち、車椅子席300席)の屋根つき競技場に生まれ変わり、陸上競技以外にもサッカーやラグビーなども実施できる国際基準のスタジアムになりました。またここは、サッカークラブ「名古屋グランパス」のホームスタジアムでもあります。

パロマ瑞穂スポーツパークには15種類のスポーツ施設が集まっており、今回のアジア大会では複数の施設が使用されます。パロマ瑞穂ラグビー場は一足早く2025年11月にリニューアルオープンしました。総客席数は約10,400席です。
訪れたのは開会式の前日だったので、公園内はややピリッとした空気が感じられました。園内にはスポーツ施設以外にも多数の市民向けの施設があるのですが、あちこちに立入禁止のロープが張ってあり、アジア大会期間中は使えないようです。
大曲輪貝塚/大曲輪遺跡

スタジアムの周りを歩いていくと、「大曲輪貝塚」がありました。スタジアムの西側に接していて、広場になっています。

大曲輪貝塚は1939(昭和14)年、瑞穂陸上競技場の前身の名古屋綜合運動場の建設の際に発見され、1941(昭和16)年に国の史跡に指定されました。今から約6千年前(縄文時代前期)から約3千年前(縄文時代晩期)ごろを中心とする貝塚です。

当時の愛知県史蹟名勝天然紀念物調査会主事であった小栗鉄次郎氏によって発掘調査がおこなわれ、縄文時代の土器や石器など多くの遺物が出土しました。

1980(昭和55)年、競技場改築のために旧スタンドを取り壊した際の発掘調査で、その下に遺跡が良好な状態で残存していることが確認されました。貝塚の周辺に縄文時代の住居跡、お墓など、当時の「ムラ」の跡が次々と 見つかり、この一帯は「大曲輪遺跡」として詳しく調査されました。

またすぐそばの山崎川の対岸にも「下内田(しもうちだ)貝塚」が発見されています。そちらにも行こうとしたのですが、通行止めになっていて立ち入りできませんでした。

貝塚を囲むスタジアムの壁には、「10000年ウォール」として100mにわたって大曲輪遺跡の1万年の年表が描かれています。この遺跡から出土した遺物は6千年前から3千年前くらいのものが中心ですが、1万年以上前の旧石器時代の石器も見つかっているそうです。

貝塚があるということは、その付近に海があったことを意味します。今では「山崎川四季の道」 として日本さくら名所100選にも選ばれている、国内屈指の桜の名所である山崎川ですが、1万年前は大曲輪貝塚の近くが河口でした(縄文時代の海岸線)。

氷河期が終わり、縄文時代には急激な気候温暖化で海面が上昇し、現在よりも2〜3mほど高かったと考えられます(これを「縄文海進」と呼びます)。当時は名古屋市の西側から岐阜県大垣市付近まで海が広がっていたと言われています。 上の地図でいうと、大体青(標高0m未満)と水色(標高0m)、緑色(標高4m)で表示されたエリアは海でした。
後の熱田神宮や名古屋城は、地盤のしっかりした熱田台地の端に建てられていたことがよく分かります。名古屋駅は海の中にあります。

大曲輪貝塚からはハイガイ、マガキ、シジミ、ハマグリ、アカニシガイなどの貝殻、アジ、タイ、スズキ、マグロ、アカエイなどの魚骨、二ホンジカ、イノシシなどの動物の骨が見つかっています。当時は瑞穂公園のすぐ西側まで海が広がっていて、海の幸に恵まれていました。さらに周りの森にはニホンジカやイノシシなどの動物もいたため、縄文人にとってこの場所はとても暮らしやすく、竪穴住居を作り定住していました。

大曲輪遺跡からは土偶や祭祀(さいし)に関わる道具や墓も発見されています。1980年の調査ではイヌと一緒に葬られた人骨も見つかり、話題になったそうです。縄文時代、イヌは狩りの相棒として活躍していました。 愛犬とともに死後も過ごせるように、大切に埋葬されたのでしょう。

「10000年ウォール」をグルッと伝っていくと、スタジアムの建物の隅に「おおぐるわ縄文ミュージアム 」という小さな展示室があるのを発見! 大曲輪貝塚・大曲輪遺跡で出土したものが展示されていました。人骨のレプリカもありました。

無料の無人展示室ですが、没入型の映像が映し出されており、結構凝っています(館内の様子)。スタジアムに行ったらぜひのぞいてみてください。
スタジアム周辺を歩いてみた

アジア大会に伴い、日本、愛知・名古屋の歴史、文化芸術、自然環境、産業といった
様々な資源を紹介する 「文化プログラム」が、週末を中心に瑞穂公園南ひろばで開催されるそうです。

ステージもありました。トークショーやステージパフォーマンスなどが開催されるようです。他にもたくさんのブースがあり、ワークショップなどもあるようです。

スタジアムの裏側には「山崎川親水(しんすい)広場」がありました。まだまだ昼間は暑いので、水辺で涼んでみては?

スタジアムの下から滝が! 開会式の前日だったので、スタジアムからは楽団が練習している音が聞こえてきました。開会式は非常に洗練された演出だったそうなので、地上波でも放送してほしかったですねぇ。

山崎川の対岸には野球場があります。河原にも降りられますので、お散歩もできますよ。

現在なにかとネットを騒がせているアジア大会ですが(笑)、よくよく考えたらこのような国際大会の会場に来てみたのは初めてなので、スポーツには全く疎い私もちょっと参加した気分に。
大曲輪貝塚は知られざる穴場スポットなので、競技を見に行く方はぜひどうぞ! 大昔はここが海辺だったなんて、太古のロマンを感じませんか?

※写真は全て筆者が2026年9月18日に撮影
情報
■パロマ瑞穂スポーツパーク
住所:名古屋市瑞穂区山下通5丁目1番地 (瑞穂公園パークインフォメーション )
電話番号:052-836-8200
アクセス:名古屋市営地下鉄名城線「瑞穂運動場東」駅3番出口より徒歩6分、または桜通線「瑞穂運動場西」駅2番出口より徒歩10分
公式サイト https://mizuho-loop.jp/
■おおぐるわ縄文ミュージアム(パロマ瑞穂スタジアム1階)
開館時間:9:00~17:00
休館日:毎月第3月曜日と年末年始
お問い合わせ:瑞穂公園パークインフォメーションまで
■史跡 大曲輪貝塚の紹介(名古屋市)https://www.city.nagoya.jp/kankou/rekishi/1017203/1017387.html
■第20回アジア競技大会 (2026/愛知・名古屋)公式サイト https://www.aichi-nagoya2026.org/ja/
■文化プログラム 公式サイト:https://www.aichi-nagoya2026-culturalprogramme.org





