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「バーに年越しそばがある!? しかもお雑煮まで!?」
これまで年末は、家族で過ごすか、1人でろくに料理もせずに家でごろごろ過ごすかしていた私には、どれだけ衝撃だったことか。まさか大人の空間であるバーで、お酒を楽しみながら、年越しそばやお雑煮が食べられるなんて……。誰が想像したでしょう!
しかも、お餅は自分でつき、年越しそばのだしは可能な限り、醤油・みりん・砂糖を合わせた「かえし」から作るという、こだわりっぷり。おいしくないわけがありません。
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「そう? 海外の視点から見れば日本の文化だし、バーで年越しそばやお雑煮が出てきても何の不思議もないと思うよ」
そう言ってのけるのは、和歌山県田辺市のJR紀伊田辺駅前に店を構える「Bar Oct.」のマスター、岡本格さん。約8年ほど前からほぼ毎年、大みそかには年越しそばやお雑煮を準備しているといいます。
年越しそばを出す理由を聞くと「そばが単純に自分が好きだから」。お雑煮は、毎年、バーで知り合った知人の家で臼と杵でお餅をつくので、それを使って提供したいという思いからだそうです。
「自分の作ったものを喜んでもらえることが一番の幸せ」
そんなふうに話して笑い、手料理をふるまってくれるマスターの姿に、私は母のようなぬくもりを感じ、まるで家族と過ごしているようなほっこりとした大みそかを過ごすことができました。