地域と共に生きる3代目が営む昔から変わらない「人が集まる酒店」【和歌山県古座川町】

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「人が集まる場所というのは昔から変わらない」

古座川町にある酒店「もりとよ商店」を継いだ3代目の森武志(もりたけし)さんは、自身が営む店をこのように語る。生まれ育った町の景色は変わってしまったが、森さんの人生が詰まった古座川町で昔から変わらず「人が集まる酒店」を営む森さんに話を伺う。

【林業に携わる人が集まった酒店】

居酒屋という言葉は、味見に飲ませていた酒店が、店に居ながら飲めるようにしたことが語源と言われる。もりとよ商店は居酒屋ではなく酒店である。しかし、古座川町が古くから林業で栄え、特に戦後の住宅不足の時代は林業に携わる人々で賑わっていたため、店のすぐ近くにある製材所に行き来する人々が立ち寄って酒を飲む、いわゆる「角打ち」のようなスタイルで人が集まる場所となっていた。店に居ながら飲める酒店という形で言えば、昔のもりとよ商店は語源となった居酒屋を自然に体現していたと言える。

【店に飲みに来るお客さんに育ててもらった】

森さんは1975年に古座川町で生まれた。森さんが幼少の頃はまだ林業が栄えており、店の前にあった丸太置き場は、子供達の遊び場であった。店も酒を飲みに来るお客さんで賑わっていた。森さんは幼少の頃、飲みに来るお客さんから様々なことを教えてもらって育ったと語る。しかし、現在町には林業に携わる人はほとんどいなくなり、当時の賑わいは薄れてしまった。それでも、森さんは自分が幼少の頃に経験したことを次の世代にも繋げたいという思いを持つ。

【変わる景色、変わらない思い】

高校卒業まで町に住んでいた森さんは、東京の大学へ進学した。地域を愛する母親の影響で、店を継ぐのが当然という意識があり、アナウンサーの夢を諦め、地元に戻った。店を継いだが、林業は徐々に衰退していき、森さんが幼少期を過ごした丸太置き場だった場所は広場となり、すぐ近くにあった製材所はスーパーマーケットとなった。町の景色は変わってしまったが、もりとよ商店が「人が集まる場所」ということは今も変わらないと森さんは語る。角打ちのようなスタイルでだった飲み方は、時代に合わせてバー形式にし、「Bar & Cafe moritoyo」を併設した。Bar & Cafe moritoyoには、徒歩圏内にある旅館の宿泊客や、町の人々も飲みに訪れる。また、近所の駄菓子屋が廃業した際には、駄菓子を置き始めた。もりとよ商店は現在、子供達も集まる場所となっている。

【地域を愛し、愛される酒店の3代目】

4年前、森さんは同じ地元出身の方と結婚した。その際、古座川町内を練り歩き、獅子舞が踊る、お祭りのような結婚式を挙げ、町中の方々から祝福された。Bar & Cafe moritoyoを訪れると、店内のスクリーンで結婚式の映像を写しながら、森さんが当時のことを話してくれる。「地域を愛し、地域からも愛される」そんな言葉が似合う映像である。また、森さんと町内を一緒に歩くと、幼少の頃から現在までの様々な思い出を話してくれる。町にはまさしく森さんの人生が詰まっている。

ぜひ一度、もりとよ商店およびBar & Cafe moritoyoを訪れ、地域を愛する森さんから、町のことを話してもらいながらお酒を楽しむ一夜を楽しんでいただきたい。森さんの話を聞いてから町を歩くと、知らない人は素通りしてしまう何の変哲もない町の風景に、ストーリーが映し出されるようである。

田中 和広さんの投稿)

※このハツレポは「和歌山ローカル情報発信Lab.」から転載しました。

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「和歌山ローカル情報発信Lab.」は、和歌山県が2019年度から始めた「移住者情報発信力強化プロジェクト」事業。合同会社イーストタイムズのメンバーが講師となって、指導・フォローアップ。運営事務局も務める。県内にU・I ターンした移住者が、情報発信のスキルを身につけながら、住民しか知らない「わかやま暮らし」の魅力の可視化と発信を行って県内外の和歌山ファンを創出し、関係人口増や移住定住につなげる取り組み。