宮古島出身ではないからこその視点で島の魅力を伝える“キビおじさん”【沖縄県宮古島市】

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沖縄県は2023年度、たくさんの「お宝=魅力」をもつ離島各所の事業者さんたちが、SNSなどの『デジタルツール』を利用してさらに魅力的な発信をしていけるように「沖縄県主催🌺価値を伝えて売りまくるためのデジバズ講座」という取り組みを行っています。
この記事は、参加された事業者さんを対象に、「ローカリティ!」のレポーターがその輝く魅力を取材し執筆したものです。沖縄離島の魅力をご堪能ください。

“キビおじさん”宮古島と出会う

宮古島の“キビおじさん”こと、松本克也(まつもと・かつや)さん。有機サトウキビや有機島バナナの栽培、黒糖蜜やキビ砂糖などの加工品製造をする傍ら、「黒糖&島バナナスイーツづくり」体験を行っています。

「宮古島との出会いは旅行。いいところだなあ、こんなところで仕事ができればいいなあとあこがれていました。前職は自動車会社の研究職でしたが、農業にも興味がありました。当時は子どもが小さくて、食事や食材にも気を遣うようになっていたので」と語る松本さん。

そんな松本さんに訪れた転機が、2011年に見つけた宮古島で農産事業を始めるという求職の案内。これだ!と思った松本さんは家族とともに宮古島へ移住し、新たな挑戦を始めることになりました。

五感をフル活用して、美味しく・楽しく・学べる。“キビおじさん”の体験プログラム

松本さんは2012年8月に「オルタナティブファーム宮古」を創業。当初は慣れない農業で大変なこともありましたが、いろいろ試して、サトウキビや島バナナの有機栽培に焦点を絞ったそう。その後、「サトウキビ」の魅力を伝えたいと2017年から体験プログラムを始めました。

<サトウキビを圧搾機で手絞り>

「五感をフル活用して、美味しく・楽しく・学べる」というプログラムですが、体験場所はサトウキビ畑のど真ん中。畑でサトウキビを手刈りし、かじって、圧搾機で絞って、サトウキビのジュースを試飲します。その間にも松本さんは丁寧にわかりやすくサトウキビの特徴を説明してくれます。筆者も4年前に体験に参加しましたが、初めてのサトウキビ丸かじり、固い繊維の中から染み出るジュースの甘いこと!絞ったジュースにシークワサーを加えるとまた味がさわやかになって、初めての美味しさに感動しました。サトウキビは絞ってすぐに色が変わって品質が変わってしまうため、製品化が難しく、本当に現地でしか味わえない美味しさです。

サトウキビについて学んだ後は、それを煮詰めた黒糖蜜をさらにフライパンで煮詰め、黒ゴマやピーナッツ、フルーツグラノーラをトッピングしたオリジナルの黒糖作り。また島バナナを使って焼きバナナを作り、バナナアイスと一緒に試食することもできる、盛り沢山な体験です。

「万人に通じる美味しさと、年代ごとに学べる要素をふんだんに取り入れています」という松本さん。今は生産は縮小して、体験と食育のプログラムに注力しているそうです。年間2000人が訪れるというオルタナティブファームの体験は、身近にある「砂糖」や「バナナ」がどんなふうに作られているのか、その奥深さ、面白さを発見できる貴重な機会になると思います。

“キビおじさん”の新たな挑戦はディープなツアー

松本さんはまた、新しい試みとして、昨年2月に「オルタナティブツアー宮古」という沖縄宮古の歴史文化を体験するプライベートガイドを始めました。

「宮古島に来て12年、まだまだ島の歴史や文化を知らないなあと思いながら、ちょっとずつ勉強を始めました。オーバーツーリズムによる環境破壊が懸念されていますが、観光で来た人と地元の人が交流することで、地元の人が大切に思っているものを共有して理解してもらえるような活動ができれば、観光客と地元の人が一緒になって明るい宮古島の未来を協創できるのではないかと思っています」

と語る松本さん。このオルタナティブツアーは「生産者を訪ね歩く」というのが特徴で、地元の自然環境と、人の努力で作られてきた宮古島の歴史や文化を体験してもらうことによって、「消費される観光」から「創造する観光」へ、ということを目指しているそうです。

アダンやススキなどを使った「縄ない体験」や、生活用水確保のため、約100段の崖下まで水汲み往復していた様子を体感する「水汲み体験」、伝統的なお菓子作りや農園訪問など、「旅行会社さんではなかなかご提供できないような」ディープなツアーがたくさんあります。

<オルタナティブツアーのひとつ、入り江の環境保全活動を紹介してくれる蟹漁師、蟹蔵(かにぞう)の吉浜さん>

   例えば、「入り江の自然保護活動家訪問」では、蟹漁師の吉浜さんと一緒にマングローブが独特の景観を作る入り江を散策します。吉浜さんは一度は島を出ましたが、戻ってきたときに子供の頃から知っていた風景が失われていることに衝撃を受け、蟹漁師として入り江の環境を取り戻す取り組みを始めたそうです。

“キビおじさん”の「“よそもの”にしかできない」これからのこと

「もともと好きな宮古島ですが、知れば知るほどもっと好きになって、そんな感動やびっくりしたこと、それをお客さんと共有できればいいなあと思っています」

という松本さん。今後は、もっと社会貢献できるようなことを増やしていきたいと語ります。

特に力を入れたいのが教育関係で、子どもたち向けに3年ほど前からオンラインと出張体験も始められているそうです。観光客の少ない10月から2月には地元の子ども向けにサトウキビ体験の無料開催を計画しています。オルタナティブツアーのほうも、地元の子供向けに、野菜収穫体験やうみぶどう栽培体験などの無料開催について生産者さんと相談を進めています。

「宮古島の魅力を知ってほしい。今でこそ便利になりましたけど、昔は不便だったからこその、人の知恵や努力が作ってきた独自の文化があるので、それをお伝えしたいと思っています。地元の人にとっては当たり前でやらないようなことを、他所から来た僕だから新鮮な思いで伝えられるということもある。この島で、そういう役割を果たせたらいいなと思います」

僕にしかできないことがあるはずだ、という言葉がとても印象的でした。

みなさんも、ぜひ宮古島の食と歴史と文化にふれる体験をしてみませんか。

情報

オルタナティブファーム宮古

https://alternative-farm.com/

オルタナティブツアー宮古HP

笠原 磨里子

笠原 磨里子

千葉県浦安市

第3期ハツレポーター

東京都港区生まれ。世田谷区を経て千葉県浦安市在住。3人の男の子を育てながら、PTAや自治会、ボーイスカウトの指導者など、地域と繋がる活動をしてきました。
「食べること」「体を動かすこと」「歌うこと」「旅すること」が大好き♬
楽しく地元の魅力を発信していければと思っています!*

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