阿蘇の外輪山の千年続いている草原で、古くから伝わる「草泊まり」を体験しました。ひとりぼっちで、満天の星空と大地に抱かれて眠り、朝は大観峰から雲海を望みました。
熊本県阿蘇市は、大きなカルデラ(スペイン語で大鍋)として、360度を山に囲まれた場所です。
阿蘇の草原では、冬の間に牛たちが食べる草を刈っていた歴史があります。その仕事は重労働で草原に泊まってまでも行われていました。その時の草原に泊まる仮の住処が「草泊まり」です。
まるで竪穴式住居のような雰囲気の住居は、毎年、内牧小学校の4年生が、地域のお年寄りや住民たちに教えてもらって作るものです。
それを特別なルートでお願いして、お借りしたということになります。
と言っても、「是非、行きたい。」という方は、阿蘇夢☆大地グリーンバレーで見ることができます。http://www.gv-aso.com/
夕方に着いた時は、今年も作ってくれていたことに感謝して、スーパーで買った700円のお肉を焼き、6等星以下も見えるほどの星空の下で食べました。阿蘇の満点で満天の星の下、遠くからシカの遠吠えを聴きながら、草泊まりの中で寝たのでした。
大地に抱かれて寝るとはこのことです。次の工藤直子さんの詩を体験したのでした。
おやすみ おけらりょうた
すなつぶ まくらに めをつぶって
ちっちゃなこえで いったんだ
――おやすみなさい ちきゅう
そしたら おなかのしたから
しずかなこえが きこえたんだ
――あさまで だいててあげよう
わあい こんやは よくねむれるぞ
次の日は4時に目が覚め、大観峰で雲海を見ました。
阿蘇の草原ハンドブックより
https://www.aso-sougen.com/teaching/03/05/03.html
以下、『一の宮町史/草原と人々の営み』より引用。
草泊まりとは、採草作業の期間中に、ススキで作った小屋に野営することをいう。
阿蘇では、農家の人々が住むカルデラ内の水田地帯と採草地のある北外輪山上との高低差が300m以上もあり、蛇行する坂道を往復するには多大な労力を必要としていた。草泊まりは、こうした労力を節約するため、道路の整備が進まず自家用トラックもなかった昭和30年代まで、北外輪山地域の端辺原野で行われていた。多い時は150戸余りの農家が長い道のりを経てやって来ていたという。
ススキの小屋は、小川の畔などに、割り竹の骨組みにススキで屋根を葺いてつくった。この草宿づくりは、草刈りの前日までに行われる「小屋掛け」という作業として定着していた。
この中に、ふとん、食料、炊事道具などの生活用品を持ち込んで寝泊まりをする。
昔は、採草作業の時期は学校も臨時休校となったので、子どもも含めた家族全員がこの草宿で暮らしながら草刈りをした。長い時は、1回の草泊まりで10日間ほど滞在したという。