「悪くなってから支える」では遅い。高齢者の孤食を見てきた介護のプロがつくる、世代を超えて集うこども地域食堂 (前編)【宮城県名取市】

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向かって左が阿部崇子さん、右が阿部拓磨さん

子どもたちの笑い声のそばで、地域の人たちが言葉を交わし、同じ食卓を囲む。そんなあたりまえで、あたたかな風景を名取市みどり台に根づかせようと始まったのが、こども食堂運営団体「にっこにこの会」が運営する「丘のうえこども地域食堂」です。

代表の阿部崇子さん(以下、崇子さん)は、ケアマネジャーや介護福祉士などの資格を持ち、長年介護の現場に携わってきました。その中で、高齢者の孤食が心身に及ぼす影響を目の当たりにし、その課題は子どもたちにも通じるのではないかと感じたといいます。

そんな思いから始まった活動の歩みとこの場所に込めた願いを、崇子さんと副理事の阿部拓磨さん(以下、拓磨さん)に伺いました。本記事は前編・後編の2部構成でお届けします。前編では、食堂が生まれたきっかけから、立ち上げまでの道のりをご紹介します。

孤食は高齢者だけの問題ではない。こども地域食堂が生まれたきっかけ

――丘のうえこども地域食堂を始めようと思ったきっかけを教えてください。

崇子さん:私は介護の仕事を始めて26年になります。最初は訪問介護、ホームヘルパーとして働いて、その後はケアマネジャーとしても高齢者の生活に関わってきました。

その中で、高齢者の孤食は、心にも体にも影響を与えると感じてきました。介護の現場で、一人で食事を続けることで健康状態が悪くなるのを間近で見てきたんです。「悪くなってから支援する」のではなく、「悪くならないように予防すること」が大切だと考えていました。

――「予防」という視点から考えたとき、どんなことが必要だと思われたのでしょうか。

崇子さん:誰かと一緒にご飯を食べる機会を、地域の中につくることかなと思ったんです。

そこで、自分が暮らしている地域で何かしたいと考えたときに、最初に思い浮かんだのが子ども食堂でした。

介護の現場で高齢者の孤食を見てきましたが、今は共働きの家庭も増え、一人でご飯を食べている子どもたちもいます。孤食は、高齢者だけの問題ではないのです。

だったら、子どもも高齢者も、地域のみんなが一緒に食卓を囲める場所を作りたいという思いが、この活動の出発点でした。

――どんな行動から始めたのですか?

崇子さん:まずみやぎこども食堂ネットワークに連絡をして、お話を伺う機会をいただきました。そこで、今の子ども食堂は、子どもだけではなく、高齢者も多く利用していることを教えていただいたんです。

地域全体の居場所として活動する食堂が増え、「こども地域食堂」という表現で活動するところも増えていると伺いました。

私が目指すのは、子どもから高齢者まで地域のみんなが自然に集まり、食卓を囲む場所をつくることです。「こども地域食堂」という形がしっくりくると感じました。

「3人いれば始められる」。仲間と踏み出した最初の一歩 

こども地域食堂という形は見えてきたものの、「一人ではできない」と感じていた崇子さん。そんなときに相談したのが、10年以上子ども食堂を続けている先輩でした。

――先輩にはどのようなアドバイスをいただいたのですか?

崇子さん:先輩に一人でできるか不安であることを伝えました。すると、「まず仲間を3人集めなさい。3人いれば始められるから」というアドバイスをいただいたんです。その言葉を聞いて、「一緒にやってくれる仲間を探そう」と動き始めました。

――最初に声をかけたのが、同じ介護業界で働く拓磨さんだったんですね。

崇子さん:そうです。一緒にやってくれる人を考えたときに、最初に思い浮かんだのが拓磨さんでした。以前、拓磨さんから「いつか独立したい」という話も聞いていたんです。

今回のような、何もないところから一つのものをつくる経験は、今後にもつながるんじゃないかなと思いました。

――拓磨さんは、崇子さんから誘われたときどう思いましたか?

拓磨さん:悩んだ記憶はほとんどないですね(笑)。崇子さんから「一緒にやらない?」と声をかけてもらって、「ぜひやりたいです」と、その場で返事をしました。

何をするのか全くわかっていませんでしたが、「地域のみんなが集まれる場所をつくりたい」という話を聞いて、純粋に面白そうと思ったんです。

それに、声をかけてくれたのが崇子さんだったことも大きかったですね。介護の仕事を通じて人柄を知っていましたし、この人が本気でやろうとしているなら、一緒に挑戦してみたいと思えました。

不安よりも、「やってみよう」という気持ちの方が強かったです。

こども地域食堂は本当に必要?対話を重ねてたどり着いた場所

崇子さんは、拓磨さんとご友人にも声をかけ、こども地域食堂を始める仲間をそろえました。

しかし、大変なのはこれから。活動を始めるまでには、場所の確保や団体の立ち上げ、ボランティア集めなど、多くの準備が必要でした。

――こども地域食堂を開くにあたって、一番苦労したことは何でしたか。

崇子さん:場所探しですね。地域の人が来やすいみどり台集会所がいいなと思っていましたが、当時は、こども地域食堂というと、食事に困っている家庭を支援する場所というイメージが強かったんです。「この地域に本当に必要なんですか」というご意見もいただきました。

しかし、共働きの家庭は多くあります。一人でご飯を食べている子どもは決して少なくないと思っていました。

こども地域食堂は、食事を提供するだけではなく、地域交流や孤食を防ぐ居場所としての役割もあります。だからこそ、この地域にも必要だと考えていることを、一つひとつ丁寧にお伝えしていきました。

――地域の方と対話を重ね、みどり台集会所で活動できるようになったんですね。実際に始めてみて、いかがでしたか。

崇子さん:活動そのものは大丈夫なんですが、課題は設備面でした。電気をたくさん使うと、ブレーカーが落ちることもあったんです。

参加してくださる方も少しずつ増えてきて、不自由さを感じるようになりました。

――そこで、ゆりが丘公民館へ移ることになったんですね。公民館へ移って実際に何が変わりましたか?

ゆりが丘公民館にてご飯を食べる様子

崇子さん:みどり台集会所で活動していた頃は、来てくださる方も、ほとんどがみどり台の方でした。

でも、ゆりが丘公民館は、みどり台とゆりが丘の真ん中にあり、両方の地域から来やすい場所なんです。そのおかげで、ゆりが丘の子どもたちやご家族も来てくださるようになりました。

最初は20人ほどだった参加者も、今では毎回50人ほどが集まっています。調理室や食事をするスペースも広くなり、みんなで料理をしたり、ゆったり食事をしたりできるようになりました。

介護の現場で感じた孤食への問題意識から始まり、仲間を集め、地域との対話を重ねながら形になった「丘のうえこども地域食堂」。しかし、場所をつくるだけでは、活動を続けていくことはできません。

後編では、食材や資金、ボランティアなど、食堂を支える地域の人々とのつながりと、崇子さんがこの場所に託す未来への願いを紹介します。

※写真提供はすべて阿部拓磨さん

情報

丘のうえこども地域食堂
開催場所:ゆりが丘公民館
住所:名取市ゆりが丘2丁目1の1   
開催時間:11:30~13:30(食事がなくなったら終了)
料金:未就学児 無料、小中学生 100円、高校生・大人 300円
主催者:にっこにこの会
Instagram:https://www.instagram.com/okanouekodomotiikishokudo/

西田ゆき

西田ゆき

山形県出身、宮城県在住。地域で出会った人たちの想いや活動を記事にして届けます。

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