厳しい冬が過ぎ去り、ようやく春の日差しが心の中にも届くようになってきた。
この時期になると、冬の間、除雪車によって沿道に寄せられた大きな雪の塊たちが、なんとも面白い造形を見せてくれる。
私はそれらを勝手に「ゆきぼうず」と名づけて呼んでいる。
海には「うみぼうず」という妖怪が存在するらしいが、「ゆきぼうず」は妖怪ほど怖くはない、春を告げる妖精だと思っている。
それらは一雨ごとに、気温の上昇とともに、春の日差しとともに、刻一刻と姿を変えていく。
儚い妖精たちのささやきに耳を傾け、ゆっくりと季節を感じながら散歩するのが、雪国の農村に住む私の楽しみのひとつなのだ。