ハチミツおじさんの思い、3代目まで引き継がれる【富山県富山市】

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〜この記事は、株式会社JTBふるさと開発事業部と合同会社イーストタイムズが共同で取り組んでいる「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」から生まれたハツレポです〜

過酷な養蜂の仕事

富山県に、ある養蜂家がいます。

大場靖弘(おおば・やすひろ)さんを語ろうと思うと、祖父の代まで遡らなければなりません。

靖弘さんの祖父、徳次郎(とくじろう)さんは結核にかかり命を落としそうになりましたが、ハチミツの効能によって一命をとりとめたそうです。そして靖弘さんの父、勲(いさお)さんも足を怪我し、足を切断するしかないといわれたものの、蜂の蜂針療法によって助かったのだそうです。

そんな蜂との縁が深い大場家は3代続いている養蜂一家。

養蜂家の仕事は過酷です。早朝から蜜をとるため、最盛期には毎朝4時には着くように巣箱に向かいます。25kgになる一斗缶に入ったハチミツや、重い巣箱を運ぶのも重労働です。

大場さんは子供の時から手伝わされていたそうですが、「眠いし、重いし、蜂に刺されて痛いし」で、当時はしんどい思い出しかなく、跡を継ぐつもりは全くなかったけれど、兄が怪我をしたことがきっかけとなり大場さんが3代目の養蜂家となりました。

ハチミツは時代に乗って変化する

大場養蜂園の人気商品の中に「ハチミツおじさんの四季セット」があります。

この「ハチミツおじさん」というのは大場さんではなく、父の勲さんのことだそうで、今でもそのセットは定番となって売れ続けています

勲さんがこのセットを発売した当時、ハチミツといえば、大容量で売られていたそうですが、少しずつ違う種類のセットで販売されたのはとても画期的なことだったそうです。

今となってはいろんな味のハチミツが味わえるセットなどがありますが、先見の明があったとはこのことですね。

かつてハチミツを買う人は年輩の方が多かったのですが、これからは若い人に「色んな味を少しずつ楽しんでもらいたい」と大場さんはそこに目をつけました。さまざまなハチミツと食べ物とのマリアージュをSNSなどで発信していくことで、女性層の人気もとりこみました。

実は大場家は養蜂をはじめたのが徳次郎さんの代で、それ以前は米問屋として10代以上にわたって商売を営んでいた家系だそうです。

そんな家で育ち、子どもの時から手伝いで店に立っていた靖弘さんは、大学在学中から生きていくうえで何か商売をしたいという思いを持っていて、卒業後は大手の小売業などで経験を積んできました。

その経験を活かし、養蜂場を継ぐのなら「ゆくゆくはカフェをオープンしそこでハチミツを使ったメニューを考え、たくさんの人にハチミツの良さを知ってもらいたい」と考えていたそうです。

実際にそのカフェをオープンする中心となったのは、妻の有美(ゆみ)さんの存在です。コーヒーにはコーヒーの花のハチミツを合わせたり、女性ならではの発想でハチミツを食材と合わせて楽しむ画期的な試みをしています。毎日のように蜂蜜を使ったスイーツの開発に取り組んでいて、ハチミツが入ったパフェ、プリン、焼き菓子など、メニューの種類も豊富です。

これからの「田んぼ」と「養蜂」と「ハチミツ」と

「おいしかった」と言ってもらうために手間暇を惜しまない。

もともと、採れたばかりの蜜は水っぽく、自然な方法で蜂たちが熟成させるには最低でも4日もの日数をかける必要があります。甘く濃縮した状態に仕上がって初めて味わい深いハチミツと呼べる品になります。そしてその4日も天候に左右されるので安定してハチミツ採取をすることは、なかなか簡単なことではありません。

加熱などによって人工的に水分を飛ばして仕上げる方法は、天候に影響されにくく、多くの蜜を採る事ができますが、どうしても味わいや香り等が変わってしまうようです。

あえて楽な方を選ばず手間暇を惜しまない、その理由を大場さんは語ります。「養蜂家をしていて一番うれしいのはお客様に『おいしかった』と言ってもらうことだから」と。

環境の変化に負けず、工夫をこらす

靖弘さんは現在、コメの消費量が減ってしまったことで増えた休耕田を利用し、休耕田にレンゲを蒔いてもらう取り組みをしています。レンゲ畑が減りつつある今、需要の多いレンゲのハチミツをとるための努力は、耕作放棄地の増加抑制など農家の田んぼの維持にも深くかかわっています。

環境の変化にも大きく左右され、近年ではレンゲ畑以外の花々も、地球温暖化の影響のせいか、季節を追うごとに順に咲くはずの花がほぼ同時期に咲くことがある等、蜜を採る時期を逃してしまうこともあるのだとか。

そんなお話しを聞く限り、養蜂というのはとてもハードなお仕事です。でも靖弘さんの朗らかなお話しぶりや、ご注文品に出来るだけ手書きのメッセージを入れているというこだわりを見ると、仕事への誇りとハチミツへの愛を感じます。

この地でしかとれない糖度の高い水島柿のハチミツの他、藤のハチミツなど珍しいものもたくさんあり、有美さんのカフェでその味がどんな食材と合うか確かめられるのも魅力です。靖弘さんは従来の固定されたハチミツのイメージを徳次郎さんの代から3代かけて変えてきました。

「だってハチミツって代えが効くでしょ。甘さだったら砂糖でいいし、またはスーパーの安いハチミツでもいい。それでもわざわざうちのハチミツを買ってくれるお客様には感謝しかない」

手書きのメッセージカードをつける理由を靖弘さんはこのように明快に答えてくれました。商売といえば一般的にお金を稼ぐ目的で品物を売るようなイメージがわきますが、靖弘さんは自分の品物が素晴らしいから売る本当の「商売人」。新しい時代の3代目が継ぐ「ハチミツおじさん」精神は、世界に一つしかない素晴らしい幸せな味を私たちに与えてくれるでしょう。

小門万紀子

小門万紀子

和歌山県和歌山市

第6期ハツレポーター

生まれも育ちも和歌山県和歌山市ですが、学生時代は日本ののみならず数々の海外にも行きまくった根っからの旅大好き人間です
現地での違う景色や人との出会い、大好きです
帰ってきたらいつも和歌山の良さをあらためて感じます、子育てで旅にでれなくなり、さらに和歌山の良さに日々気づく日です。

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