「ローカルとの接続点をつくる」閉業した純喫茶を地元の若者がレトロ喫茶として再オープン【和歌山県紀の川市】

3 min 197 views

2022年に一度閉業した、和歌山県紀の川市の純喫茶「雅園(ガエン)」。常連の若者が手をあげ、常連客も観光客も楽しみながら、地域の人や情報と繋がるレトロ喫茶として再興しました。
Google Mapに載っていなかった地元店が、若者の新しい視点や地元喫茶の価値の再発見により、今ではメディアに取り上げられ、県外からも多くの人が足を運ぶ人気店に。

今回は、「ガエン」を家族と承継した東詩歩(あずま・しほ)さんにお話を伺い、新しい企画とおすすめメニュー、常連客も観光客も楽しめる「ローカルとの接続点」としての役割について紹介します。

Googleマップにも載らず人知れず閉業した地元の純喫茶、承継したのは幼い頃から通っていた詩歩さん

和歌山県打田駅から徒歩3分のガエンは創業50年余りの地元の純喫茶でした。

詩歩さんも子供の頃、家族でご飯を食べたり、風邪の時に、うどんすきを食べさせてもらったりした思い出があります。

ガエンが閉業した際、詩歩さんは、まちのためにここは自分が残したいと強く思い、家族と承継を決意しました。詩歩さんの家族は雅園のすぐ近くでパン屋さんをやっていて、話が進みやすかったそうです。 

加えて、詩歩さんは大学で観光を学び、現在は大学院に通いながら、写真やデザイン、広報企画をする会社を経営。

ガエン承継後は、仕事のスキルや繋がりも活かし、ブログやTV等のメディア掲載にこぎつけ、SNSも更新、今では遠方からもお客さんが来るお店になりました。


(今回取材に応じてくれた東詩歩さん)

都会に出たことでまちの個人店の価値を実感、常連客も観光客も共に楽しめる「ローカルとの接続点」を目指す

「都会に出たからこそ、ここ(ガエン)の価値がわかった。そうでないとただの地元の店だった」と言う詩歩さん。東京でのインターンや海外への渡航経験があり、外の視点から見る和歌山・紀の川市の固有性により可能性を感じたそう。

ガエンを、地域の人と新しい人、情報が繋がる「ローカルとの接続点」にしたいと語ってくれました。

外にいたからこそ、詩歩さんはいつも、お店単体でなくまち全体を見ています。

まちの価値、個人店を残すため、まちと外を繋ぐ「ローカルとの接続点」が大事と考えています。

バイトやカフェ巡りの経験から、家族経営で常連客だけでは難しく、まちの個人店には外の情報との繋がり、新しい客層も必要と実感されているためです。

新しい客層、観光客にとっても、情報や繋がりがなく帰ってしまうのはもったいないと思い、観光客も楽しみながら、地域の人や情報と繋がる場を目指しているそうです。

実際、詩歩さんによって、外の視点、若者や女性の視点が入り、雅園は常連客も観光客も楽しめる場になっています。

お店を、そんな「ローカルとの接続点」にするために、どんな工夫があるのかご紹介します。

美味しく見栄えするメニューの充実化と創業当時のままの内装で、新しい客層を呼び込む

新しい客層に来てもらえる場所にするには、美味しいメニューと独特な雰囲気や入りやすいデザインが大切。

まずは、選ぶのが楽しくなる、美味しいメニューを開発し、楽しめる要素を増やしました。メニュー開発はパン屋のスタッフや元オーナーさん、お客さん含め一緒に行います。

新しいお客さんにも楽しんでもらえるよう、詩歩さんがカフェ巡りの経験から、良いものを選定しています。実際、期間限定のいちごサンド3種を制覇しにリピートしたお客さんもいるそうです。

筆者が食べた、こだわりのメニューを一部紹介します。

パン屋さん自慢の出来立てカツサンドとこだわりのコーヒー

ガエン名物、分厚いカツサンド。カリッとパンの外側が焼かれ、じゅわっとパンにソースが広がって、とても美味しかったです。

コーヒーを合わせるのがおすすめ!詩歩さんが厳選し、隣町の焙煎屋さんのコーヒーを使っているんだとか。パンを邪魔しない、さっぱりした味で飲みやすいのに、香りはしっかりです。

ふわっふわ、オーガニックチョコレートのガトースフレ

次に、オーガニックのガトースフレ。詩歩さんの会社のクライアントだったお店が開発したスイーツです。グルテンフリーでもしっかり美味しいことを重視し厳選されたメニューで、苺ソースに使うベリーは季節で変えているのもポイント。

次に、店内の家具や内装はそのまま残し、それ自体を魅力としました。そうすることで、新しいお客さんにとっては、昭和レトロな雰囲気が魅力になり、常連客にとっては懐かしく落ち着ける空間になっています。

掃除するより買い換えた方が安いと業者に勧められたものの、創業者がお店を開いた時のこだわりを大事にしたいと考えたそうです。

昭和レトロで豪華な内装は今では見つからない良さがあり、特に真紅のカーペットは死守したかったんだとか。この昔の細かい豪華さが唯一無二で素敵な雰囲気を醸し出しています。

また、店先に黒板で手書きのメニュー看板を用意することで、純喫茶でありながら入りやすい外観になっています。新しいお客さんの親しみやすさを意識し、元は「雅園」という表記だったロゴを丸っこいカタカナのロゴにしたのも詩歩さんのこだわりです。

イベントや展示で、「ローカルとの接続点」を作る

「地域に足を運んでも、何度も来訪しないと知人もできず面白さもわからない」と詩歩さんは言います。新しく店を訪れる人と地域の人がそうやって頑張らなくても繋がる「ローカルとの接続点」を作りたいという考えから、ガエンではイベントや展示も実施されています。

例えば、地域コミュニティに入りづらい外国人移住者の方のため、地域住民との交流イベントをやっています。英会話を勉強する地元の人、朝活したい人など、色々な人が楽しんでくれたんだとか。

筆者が来店した際には、北海道の本屋さんにガエンで読んで欲しい本を選書してもらう、ローカルとローカルを繋ぐ展示企画をやっていました。

また、お店には地元の常連客の仕事の名刺やイベントチラシも置いてあり、仕事や新企画のハブにもなっているそう。

地域内外の人や情報と繋がるきっかけが散りばめられた店内でした。

詩歩さんは、収益を出すのも大事だけれど、好きだからこそ、グローバルな視点やまち単位の視点を忘れず、ガエンに関わり続けたいとのこと。今後の企画やメニューにも期待です。

お店の情報

  • 雅園(ガエン)
  • 住所:和歌山県紀の川市西大井143
  • JR打田駅より徒歩3分
  • 営業時間:8時~17時
  • 定休日:土日祝

インスタグラム:https://www.instagram.com/gaen_wakayama/

南綾香さんの投稿

ローカリティ!編集部

ローカリティ!編集部

ローカリティ編集部

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です