暑苦しいほどブドウの個性を引き出すワイン醸造所・カタシモワイナリー【大阪府柏原市】

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〜この記事は、株式会社JTBふるさと開発事業部と合同会社イーストタイムズが共同で取り組んでいる「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」から生まれたハツレポです〜

始まりは明治時代。知られざるブドウ栽培の地、大阪・柏原市

 

「日本ワインの有名な生産地と言えばどこ?」との問いに、「山梨県」と、ピンとくる人もいるのではないでしょうか。農林水産省の最新の統計によると、ワインの生産などに使われるブドウの収穫量は日本一です。

実はかつて、山梨県をしのぐほどブドウを栽培していた地域がありました。商人のまち・大阪です。ブドウとワインは切り離せない関係です。大阪にワインの醸造所(ワイナリー)がたくさんあったことを知る人は、そう多くはないかもしれません。

大阪平野の南東部、奈良県との境に位置する大阪府柏原市(かしわらし)は、大阪湾からの海風の影響を受ける比較的温暖な地域です。その雨が少なく温暖な気候は、明治時代に柏原市の山麓に開墾されることになる広大なブドウ畑の成長を助けました。

激動の時代を生き抜いたカタシモワイナリー

 

柏原市にあるカタシモワインフード株式会社(カタシモワイナリー)は、明治の初めに高井利三郎(たかい・りさぶろう)さんによって開墾されたブドウ畑を、息子であり創業者の作次郎(さくじろう)さんが受け継いだワイナリーです。大正時代に本格的なワイン造りを始めました。

当時、カタシモワイナリーの他にも、大阪にはたくさんのワイナリーがありました。しかし、大正12年(1923年)の関東大震災で取引先が倒産し、その11年後に発生した室戸台風ではワイナリー自体が大きな被害を受けました。その後、第2次世界大戦の影響などにより、大阪に100以上あったワイナリーは4つにまで減少。カタシモワイナリーはこの激動の時代を生き抜き、現在まで農園を守り、ワイン造りを続けてきたのです。

「めっちゃ真面目」暑苦しいほどブドウの個性を引き出したワイン

 


カタシモワイナリーの5代目で醸造責任者の高井麻記子(まきこ)さんは、作次郎さんのひ孫にあたります。高井さんは、大阪でワインの道を切り開いてきた作次郎さんら先人たちについて、「とにかくガッツがあって、生命力にあふれる人たちだったそうですよ」と教えてくれました。

「そんな先人たちから受け継いだものだからこそ、革新していきたい」として、ブドウの搾りかすから造る蒸留酒「グラッパ」や、大阪名物のたこ焼きに合う酸味が特徴のスパークリングワイン「たこシャン」を製造。型破りでユニークな発想に基づく商品開発に余念がありません。

100年以上続いてきた農園の手入れは苦労が絶えないといいます。しかし、高井さんは手を抜くことをしません。「とにかく“めっちゃ真面目に”ワインを造っています。本場・ヨーロッパの基準でいう高級なワインにはなれないかもしれない。でも、ブドウの個性を暑苦しいほど引き出した、うちでしか造れないワインを提供していきたい」と、熱く語る高井さん。高井さんは、醸造技術だけでなく、ガッツやワインへの愛情も先代から受け継いでいました。代々続くガッツと愛情が込められたワインが、カタシモワイナリーの新たな歴史をつくっていきます。

天野崇子

天野崇子

秋田県大仙市

編集部編集記者

第1期ハツレポーター/1968年生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30年。

ローカリティ!編集部の一員として、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。