加美町の老舗呉服店所蔵「打掛」を訪ねて白鷹町へ 。旅の余白にあったのは、魅力的な人との出会いだった【山形県白鷹町・宮城県加美町】

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宮城県加美町から県境の鍋越(なべこし)峠を越え、山形県白鷹町へ旅をした。季節の移ろいを味わい、歴史や文化、地域の人々の思いにふれ印象深い一日となった。 

久しぶりに旅を満喫した。
目的は、白鷹町文化交流センター「あゆーむ」で開催されている『打掛名品展』だった。

ゴールデンウィーク初日は、あいにくの雨で肌寒い天候。

それでも、萌黄(もえぎ)色の山の新緑や薄紅色の山桜やハナミズキ、白く可憐(かれん)なリンゴの花が静かに迎えてくれた。

山形の食材を取り入れたイタリアンでランチ

展示を見る前に白鷹町でランチをした。

地元産野菜をテーマにしたレストランは多い。しかし、ランチで訪れたイタリアンレストラン「SIATTACA(シャッタカ)」は別格だと思う。
国内の名店で修行したのち、本場イタリアで腕を磨いたというシェフの料理には、白鷹町への強い愛情が感じられる。
地元の山菜や野菜を取り入れたアンティパストミストや、山形産フルーツを使った自家製コンポートやソース。パスタの種類も豊富で、この店そのものが、旅の目的になり得ると感じさせた。

明治から昭和初期につくられた豪華絢爛な婚礼衣装

『打掛名品展』では、創業三百年を超える老舗呉服店「染萬」(宮城県加美町)所蔵の婚礼衣装である打掛が並ぶ。

羽後街道と中羽前街道の交差する交通の要衝だった中新田(現加美町)には、大阪や京都からの古着や陶磁器などの様々な荷が、酒田港を経由し軽井沢峠最上街道をとおって届いたといわれ、その文化が今も残る場所だ。

私が住む加美町の呉服店「染萬」の所蔵品の展示が行われるというのが、今回白鷹町を訪れた目的のひとつだ。

開催初日ということもあり主催の「いちまた」(山形県長井市)の社長齋藤直也さんが「遠路、よくござってくださいました」と、温かく迎えてくださった。

同じく主催の「染萬」の社長髙橋庸介さんによると、打掛は明治から昭和初期につくられ、繊細な刺繍や華やかな文様はすべて職人による手仕事とのことである。

豪華絢爛(ごうかけんらん)な打掛は、スポットライトに照らされ存在感を放っていた。

一点ずつ丁寧に見て回りながら、当時の人々の暮らしや幸福な婚礼の情景に思いをはせた。

打掛の展示をとおして白鷹町の人と歴史と文化に触れる 

展示室では、「染絵」が展示されていた。
掲示された説明によると、額に収められた図案の絵は、染萬10代目が、正絹白生地に着物制作と同じ技法(無線友禅)で染め上げたものとのこと。
水彩画のような淡く幻想的なぼかしや繊細な色彩が特徴だ。

また、「染型紙灯籠」も展示されていた。
これは、明治から昭和期に染萬で使用された伊勢型紙(手彫り)を活用し、「加美町中新田地区商店街にぎわいづくり委員会」が制作したものである。
お盆前夜の8月12日の夏まつりには中新田花楽小路に設置される。

熱心に「染絵」や「染型紙灯籠」をご覧になっていた女性と言葉を交わした。

白鷹町在住とのことで、ご実家が白鷹紬の染め工房だったという。

思いがけず話が弾み、白鷹町の歴史も教えていただいた。山形から京都へ紅が運ばれ、京都から山形には雛人形がもたらされたこと。

また、最上川の難所を開削した西村久左衛門(米沢藩京都御用商人)の話にもおよび、大変興味深いと感じた。土地の歴史にふれる楽しいひとときになった。

「あゆーむ」館長さんのお人柄と町民が誇るホールに感動

共催の白鷹町文化交流センター「あゆーむ」の館長橋本淳一さんから、館内のご説明をいただいた。

ホワイエでは、ご自身のコレクションであるクラシックやジャズのCDやレコードが多数ならび、自由に楽しむことができるようだ。

貴重な真空管アンプと大きなスピーカーによって、上質な音楽と空間を演出している。ドリップコーヒーを飲みながら、その余韻に身をゆだねた。

その後、特別に拝見させていただいたホールは、聴衆をひきつける絶妙な距離感と響きを備えていた。

一目見た瞬間「ここで歌ってみたい」と、心のなかで感嘆の声をあげた。私は、趣味で約20年コーラスの活動をしてきたが、このホールの響きはきっと心地良いに違いない。

客席側の厚いカーテンを開けると遠くに美しい山なみが見え、ここは白鷹町民の誇るべき施設だと感じた。ホールの企画力は、歴代のポスターやホールの説明からも伝わってくる。

館長さんの穏やかなたたずまいも、この場所の魅力のひとつのように思えた。

またお会いできる日があれば嬉しい。

旅に求めるものは、その余白にある。

いくつもの偶然とご縁が重なり、旅は思いがけない余韻と深い記憶を残してくれた。

次は、紅花の季節に。

情報

白鷹町のイタリアンならイタリア料理 SIATTACA:https://siattaca.com/
山形県白鷹町文化交流センターあゆーむ:https://www.ayu-m.jp/

『打掛名品展』創業300年の商家の蔵に眠る昭和の婚礼衣装
会期 2026年4月29日(水・祝)~5月24日(日)
※5月17日(日)14:00~「染萬」髙橋庸介氏によるギャラリートーク
時間:9:00~19:00 
会場:白鷹町文化交流センターAYu:M(ギャラリー)
休館日:5月7日(木)、5月11日(月)、5月18日(月)
観覧料:一般個人800円、高校生以下300円
主催:(株)染萬、いちまた
共催・問合せ:白鷹町文化交流センター

染萬加美町本店:https://www.someman.co.jp/kamiten/
いちまた:https://ichimata.studio.site/ 

小林貞子

小林貞子

宮城県加美町在住。DNAは生粋の加美町人。
生まれは千葉、育ちは長崎、沖縄、兵庫、東京、結婚してからは埼玉、奈良、宮城に移り住みました。「住めば都」私のふるさとは日本各地にあります。
ささやかな楽しみはコーラス、ライフワークは商店街にぎわいづくり。

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