77歳になっても新たな挑戦を続ける「秋津野ガルテン」玉井常貴さん

「この地域の面白いところは、諦めないところ」

和歌山県田辺市上秋津の「株式会社秋津野」代表取締役会長玉井常貴さんは、自分の生まれ育った地域のことをこのように語る。昔から諦めることなく、住民たち自らの手で地域づくりに取り組んで来たからこそ、今の上秋津はある。そして、77歳になった玉井さんに、今後も続けていく新たな挑戦について話を伺う。

<自分たちで行えることは自分たちの手で行う>

和歌山県田辺市は、紀伊半島の南西部に位置する和歌山県内で人口第2位の市である。田辺市役所などがある中心地から車で15分ほど行った場所に、グリーンツーリズム施設「秋津野ガルテン」はある。秋津野ガルテンがある上秋津という地区は、昔から「自分たちで行えることは自分たちの手で行う」を合言葉に、地域の基幹産業である農家たちを中心に、地域づくりを行ってきた面白い地域である。上秋津は、チェーン店も多く立ち並ぶ国道42号線からもアクセスが良く暮らしやすい立地であるため、昭和の終わりから平成のはじめにかけて周辺地域からの流入人口が増加した。昭和の終わりごろには600世帯ほどであった世帯数は、現在では2倍近い1200世帯となっている。新しい住民が増加したことに伴い、地域課題も多くなったため、平成元年に「上秋津を考える会」が発足した。この上秋津を考える会が後の秋津野ガルテンや、地元農家が集まって立ち上げた直売所「きてら」の中心的な役割を果たす人材を育成することに繋がった。

<地域づくりに必要なことは、地域住民の合意形成>

現在秋津野ガルテンを経営する株式会社秋津野の代表取締役会長である玉井常貴さん(77)は、平成のはじめごろ44歳の時に上秋津地区の区長となった。当時企業勤めであった玉井さんが区長であった時に、地域で求められていた福祉施設の必要性を発言したことを機に、福祉施設の建設に本腰を入れることとなり、49歳という若さで在籍していた企業を退職。その後、公民館の区長を務めるなど、上秋津地区の地域づくりの中心人物として活動することとなった。

地域作りは地域の住民たちから内発的に生まれるものであり、トップダウンでは上手くいかないと玉井さんは語る。そのためには、地域住民たちとの合意形成が必要である。秋津野ガルテンは、平成15年ごろに古くなったために取り壊す予定となった上秋津小学校の校舎を、住民たちから資金を集めて買い取って立ち上げられた。その際、地域住民の中には賛成派も反対派もおり、事業計画を作って何年もの月日を費やして地域住民への説明を行い、合意形成を行った。現在は、その上秋津小学校の旧校舎を中心に、地域資源を活かした様々な事業を展開している。

<77歳になっても続ける新たな挑戦>

上秋津小学校の旧校舎は古い木造校舎で、当時の雰囲気がそのまま残っている。そのため、自分が通った校舎ではないにも関わらず、なぜか懐かしさを感じる。秋津野ガルテンは、都市と農村地域の交流を楽しむための体験型グリーンツーリズム施設として運営され、宿泊施設も整備されており、多くの観光客が訪れている。

同じ敷地内には農家レストラン「みかん畑」とカフェ「バレンシア畑」があり、地元産の食材を利用した料理やスイーツを楽しむことができ、田辺市内外からの様々な人で賑わっている。「この地域の面白いところは、諦めないところ」と玉井さんは上秋津のことを語るが、77歳になった玉井さん自身も率先して新たな挑戦を続けている。コロナ禍の前からワーケーションに力を入れており、旧校舎の2階にテレワーク環境を整えた部屋を設けている。

また、若者の働く場所の確保やUIターンの受け入れを目的として、同じ敷地内に秋津野ICTグリーンオフィスを構えており、ICT関連企業の誘致し、現在4つの企業や研究所が利用している。他にも、スマート農業にも乗り出し、農地の情報を取得するセンサーを設置し、取得したデータの農業活用や、ロボット草刈機の貸し出しを行うなど、新たな技術も取り入れている。

このように、上秋津地区では、常に10年先の地域を見据えて、新たな活動を進めている。新たな挑戦を当然の如く語る玉井さんと話をしていると、何歳になっても挑戦し続けることが大切であると感じる。

田中 和広 さんの投稿)

和歌山ローカル情報発信Lab.

「和歌山ローカル情報発信Lab.」は、和歌山県が2019年度から始めた「移住者情報発信力強化プロジェクト」事業。合同会社イーストタイムズのメンバーが講師となって、指導・フォローアップ。運営事務局も務める。県内にU・I ターンした移住者が、情報発信のスキルを身につけながら、住民しか知らない「わかやま暮らし」の魅力の可視化と発信を行って県内外の和歌山ファンを創出し、関係人口増や移住定住につなげる取り組み。