岐路に立つ地方路線。未来を拓く「マイレール意識」とは:JR磐越東線【福島県いわき市・小野町・田村市・三春町・郡山市】

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▲ことしで開業110年になる舞木駅(福島県郡山市)。桜のシーズンは夜間ライトアップされ、ファンの目を楽しませる

福島県いわき市と郡山市を結ぶJR磐越東線は、地域住民の生活を支える公共交通機関であると同時に、観光客にとっては沿線の風景を眺めながら列車の旅を楽しめる路線でもある。地元では別名「バントウ線」と呼ばれ親しまれている列車でもあるが、近年多くの地方路線と同様に、利用者減少と経営悪化に直面している。

 そこで、この列車の始発着駅となるいわき市で先月、この磐越東線の維持と利活用を議論する「鉄活セミナー」が開催された。

▲鉄活セミナーの会場に貴重な看板や絵はがきが展示された

地域と共に歩む磐越東線だがーー

▲磐越東線の駅の中で唯一、開業当時のまま駅舎が残されていた小川郷駅は2023年に解体された(いわき市)

1914年に開業した磐越東線は、唯一福島県内で完結する路線で、地域の歴史とも深く結びついている。しかし、生活の変化や自家用車の普及により、利用者は減少傾向。特に、小野新町駅からいわき駅間は利用者が少なく、一日の平均利用者は200人ほどだ。沿線にある高校統廃合の影響も加わり、将来への不安が募る。

▲1915年に開業した船引駅(田村市)。駅舎は建替えられ、現在は3階建ての近代的な駅舎となっている

地域と鉄道の共存:持続可能な未来へ

セミナーでは、地域住民が鉄道を自分事として捉え、利用促進や活性化に積極的に取り組む「マイレール意識」の重要性が強調された。パネリストのひとりで交通ジャーナリストの鈴木文彦さんはローカル鉄道をバスへ転換した福島県内外での実例をあげ、地域活性化と鉄道存続には、行政、鉄道事業者、地域住民の三位一体の協働が必要だと述べた。また、いわき市長・内田広之氏は、地域住民の意識改革と、沿線地域の魅力向上こそが、磐越東線の未来をひらく鍵だと語る。

https://www.facebook.com/hiroyiki.uchida/posts/pfbid0NriKUSUCegCxPTRJBjtLUB95Q5Evmtf5npCrKghM9kNnD8SbYL39pyypvvXUePn8l
※いわき市長・内田広之氏Facebook3月26日投稿

地方路線の未来を担う

▲高度経済成長と共に伸びたセメントの需要も、大型公共工事の減少に伴い沿線にあった工場も閉鎖された

地方路線の存続は、単なる交通手段の維持にとどまらず、地域の活性化、文化の継承、そして人々の暮らしを守ることにつながる。

かつて磐越東線沿線地域でもタバコ葉の栽培や砕石業、林業などの産業が盛んだったものの、エネルギー供給の中心が石油に転換し始めると斜陽産業に。かつ、モータリゼーションが進展し、クルマを利用することが一般化したことが追い討ちをかけたことで、地方における鉄路の維持も困難となった。磐越東線もそのひとつだ。地域住民一人ひとりが当事者意識を持ち、鉄道と共に歩むことで、持続可能な未来を築きあげていくことができるのではないかとの声も聞かれた。

磐越東線の挑戦は、地方路線の未来を照らす灯火となるか。共存共栄を模索する日々はまだ続く。

協力:新妻 洋氏(小名浜まちづくり市民会議)

昆愛

昆愛

福島県郡山市

第4期ハツレポーター

埼玉県川越市出身。前住地は山形県鶴岡市。会社員のかたわら、地域資源の掘り起こしとその魅力発信活動に取り組む。2023年、「誰もいなくなった町。でも、ここはふるさと~原子力発電所と共存するコミュニティで“記憶”と“記録”について考える【福島県双葉郡富岡町】」で本サイトのベスト・ジャーナリズム賞を2年連続受賞、また、天文活動の報告・交流等を目的としたシンポジウムでの発表「東日本大震災における津波で被災した月待塔の追跡調査について」で渡部潤一奨励賞受賞。

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