いわき市内郷地区での防災講座:経験豊かな防災士が語る災害への備えと教訓【福島県いわき市】

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福島県いわき市内郷地区で8月28日、地域住民を対象とした防災講座が開催された。参加者は地域住民や防災に関心を持つ人々など約30名。講師を務めたのは、同地区に防災士の菅野昭夫氏。自身の体験を基に、ユーモアを交えながら、自身の経験や地域での防災活動について熱く語った。

防災士の資格取得秘話と地域防災への熱い思いをユーモアたっぷりに紹介

「実は、私が防災士の資格を取ろうとしたら、当時の会社の上司に『大したことはない』って一蹴されたんですよ。でも、将来、地域のために何かしたいと思ってね。受験しにわざわざ県外に行かなきゃいけなかったから交通費もバカにならなかったけど、それでも頑張りましたよ」と、菅野さんは、会場の笑いを誘った。「資格を取ると、手当が出るんですよ。もちろん、お金が目的じゃないけど、ちょっとうれしいですよね」と資格取得の苦労話をユーモアたっぷりに語り、雰囲気を和ませた。

防災士制度が導入された当初は受験者を消防団や町内会役員などを対象にしていたが、現在では一般市民にも広く門戸が開かれているという。特に女性の防災士を増やすための取り組みも進められており、「ぜひこの中から防災士になって地域貢献をしてほしい」と呼びかけた。

子供から大人まで楽しく学ぶ防災、その名も「運“防”会」

防災借り物競争の様子(令和4年、写真提供:いわき市)

内郷地区では福島高専の協力も得て、運動会ならぬ「運防会」も企画。防災倉庫の内容物の点検や避難所での物資運搬を想定したアクティビティなどの独自の防災イベントも開催している。菅野さんによると、より多くの子どもたちやPTA会員に参加してもらうため時間帯も小学校の奉仕作業後に設定、地域住民が楽しく参加できるよう工夫したのだそう。小学生との協力や消防署員との連携もメディア等に取り上げられ、地域全体で防災意識を高めている様子が伝わった。

内郷地区の災害事例と教訓

災害ゴミであふれる避難所(写真提供:いわき市)
水害の被害を受けた乗用車(写真提供:いわき市)

講座の後半で、過去の災害事例にも触れた。昨年の台風13号の影響で時間雨量が100ミリを超え、内郷地区でも被害が発生した。住宅の床上浸水や車の水没などが相次ぎ、避難所は満員となったが、適切な避難行動により大きな人的被害は免れた。

「ここは家族の分だけ自家用車があるから、ウチに2台も3台も車があると浸水時に困りますね」と冗談を交えつつ、車での避難の重要性を強調。避難所の駐車場が整備されたり、また、地域の役員たちがジャケットを着て巡回し、徒歩で避難できる場所を確認するなどの活動も行われているという。

内郷地区のハザードマップの一部。着色された家は垂直避難が可能な家を示す。
市で発行している防災総合ガイドマップ。原子力災害時の対応が書かれているのも福島県のガイドマップの特徴だ。

この防災講座は、いわき市内郷地区の防災意識を高め、地域の安全を守るための重要な一歩となった。最後には、菅野さんが「皆さんの協力が防災活動の鍵です。地域全体で力を合わせて、いざという時に備えましょう」と力強く呼びかけ、参加者たちもそれに応える形で拍手を送り、講座は幕を閉じた。次回の講座でも、さらなる具体的な事例や教訓が共有され、地域の防災力が一層強化されることが期待される。

昆愛

昆愛

福島県郡山市

第4期ハツレポーター

埼玉県川越市出身。前住地は山形県鶴岡市。会社員のかたわら、地域資源の掘り起こしとその魅力発信活動に取り組む。2023年、「誰もいなくなった町。でも、ここはふるさと~原子力発電所と共存するコミュニティで“記憶”と“記録”について考える【福島県双葉郡富岡町】」で本サイトのベスト・ジャーナリズム賞を2年連続受賞、また2024年、天文活動の報告・交流等を目的としたシンポジウムでの発表「天文文化史で地元の魅力発信?九曜紋が導く新たな誘客構想とは【福島県南相馬市】」で渡部潤一奨励賞を2年連続受賞。

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