なぜ、モナカと粒あんが両立できるのか?

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深まり行く秋、ぽってりとした愛らしい丸みのある和菓子に出会った。

一口目。「さくっ」とささやくモナカの香ばしさ、蜜感たっぷりの粒あん。
二口目。粒あんに包まれていた「バター餅」が現れ、ゆっくり噛み砕くと、あんのなかに溶けていく。小豆の余韻は消えることなく次の一口を待ち受ける。

(写真)玉ごっこ
(写真)割ると、中にはあんがぎっしり

秋田の郷土菓子「バター餅」を粒あんで包んだモナカ「玉ごっこ」は、秋田市中通にある創業97年目の老舗和菓子店「三松堂」が昨年11月に発売した新商品。

通常、粒あんは個装でモナカと分けられており、食べる人が口の中で一緒にする。しかし、「玉ごっこ」はモナカに粒あんが収まる。高い技術を必要とするつくりである。

「餅とあんの糖度調整に1年かかった」と話すのは、4代目店主の後藤誠一さん(48)。

(写真)後藤さんを紹介する店内のパネル=筆者撮影

砂糖には水分を奪う力があり、糖度が高いほどその力は強くなる。あんの水分はバター餅に吸い取られ、さらに、あんは外へと水分を押し出そうとする。その結果、あんはパサつき、モナカはシワシワになってしまう。さくさくのモナカの状態を保つように糖度調整されているのだ。ゆえに、モナカと粒あんがバランスよく両立する。素材同士が見事に調和し、互いを引き立てている。

昔ながらのものをそのまま残す「時代遅れ製法」の粒あんは、ほぼ全てが手作業による。手間は惜しまない。甘いものが苦手でも「ここのあんはおいしく食べられる」と話すお客さんも。

「端折らず作るのが、和菓子屋の使命だ」と後藤さん。伝統の技を継承しながらも、地元・秋田にある素材の魅力を全国へ発信すべく、新たな挑戦を始めている。

秋田ではかわらしいものの語尾に「こ」をつける。秋田に対する愛情も込められた三松堂の「玉ごっこ」。この冬、「お茶っこ」のお供に、じっくり味わってみてはどうだろうか。

【店舗情報】

「三松堂」
住所:秋田市中通5丁目7−8
営業時間:9時~18時
定休日:日曜、祝日
電話番号:018−833−8401

私のおすすめ商品:玉ごっこ1個324円(税込)のほか、イチゴわらびもち、あんドーナツ、あんこ煎餅(オンラインショップで購入可能)

オンラインショップ
https://www.wagashi-otoriyose.jp/

(写真)玉ごっこの中身=筆者作成
田畑詞子

田畑詞子

秋田県秋田市/第1期ハツレポーター

秋田出身。2001年清泉女子大学文学部英語英文学科卒業。東京、横浜から2度のUターンを経た後、現在は地元秋田で新しい発酵文化を創るために活動中。一般社団法人日本スイーツ協会スイーツコンシェルジュ、記事の取材・執筆に携わる。希望は泡立て器とペンで生きること。これからは「ことばの森」を育てたい。

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