「食べ物を作る仕事はなくならない」半農半X、「X」の部分では知り得ない「農」を秋田で体験【秋田県大仙市】

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あきたの物語」は、物語をとおして「関係人口」の拡大を図ることで、県外在住者の企画力や実行力を効果的に生かした地域づくりを進め、地域の課題解決や活性化を促進する事業として秋田県が2023年度から始めました。秋田県や秋田にまつわる「ローカリティ!」のレポーターや地域の関係者が、秋田県各地の人々の活動を取材し「あきたの物語」を執筆して秋田県を盛り上げています。

※第2回「半農半X」体験に参加した、自分の才能を活かし働く5名

「半農半X(エックス)」とは、持続可能な農ある小さな暮らしをベースに、自分の生きがいを世に活かすようなライフスタイルのことを指します。例えば、テレワークなどで収入を得ながら、人間の食の基本である「農」に携わるというようなライフスタイルとして注目されている言葉です。

秋田県では、令和3年度から社会人等を対象に、自分の仕事を継続しながら農林漁業にアルバイトの形で従事する「半農半X」の体験を支援し、両立が可能な働き方や、参加者による地域貢献活動などを通じた関係人口の創出・拡大など、「半農半X」をテーマとした地域活性化等の可能性について調査を行っており、令和5年度は県内4市で実施しています。

その中の1つ大仙市では、株式会社ファイオンが企画提案を行い、県の業務委託を受けて「半農半X」体験を実施しています。代表の北嶋友暁(きたしま・ともあき)さんは、「マティログ」さんとしてタレント活動のほか、県内で「人と人をつなげる」プロジェクトの企画運営などをしています。

今回は、大仙市の一般社団法人トータルアグリカルチャー(代表 草彅真也(くさなぎ・しんや)さん)の協力を得ながら、農業や多様な働き方に興味があり、現在の仕事をリモートワーク等で継続可能な参加者を県内外から広く募り、2023年10月から12月の2回にわたり「半農半X」体験を実施しました。

10月に実施された第1回目の「半農半X」体験には、東京都内など県内外から5名が参加しました。「半農」は、一般社団法人トータルアグリカルチャーのメンバーのもとで、稲刈りやいぶりがっこ作り、伝統野菜「石橋ごぼう」の収穫等を行い、「半X」は大仙市内のコワーキングスペースでリモートワーク等を行う形で「半農半X」体験が実施されました。

※10月の体験の様子

第2回目は、12月13日から5泊6日の日程で、「半農」は、秋田県大仙市内小友にある有限会社アグリフライト大曲で、いちごの受粉や摘果等の作業を行い、「半X」は大仙市内でリモートワーク等を行う形で「半農半X」体験が行われました。

今回はその様子を紹介します。

集まったのは自分の才能を活かし働く若者たち

今回参加したのは東京都内など秋田県外からの5名。
リモートワークを導入し、多国籍の社員が多く活躍する宇宙航空研究開発機構JAXAの認定ベンチャー起業である株式会社天地人で働くソフトウェアエンジニアの石田尾豪(いしだお・ごう)さんは、宇宙ビッグデータを利用して目的の土地を探すことができるソフトウェア開発に携わっており、例えば農業現場では、データに基づく栽培適地を選定することができます。

※石田尾豪さん(左)と中郡梨子さん(右)

同じく株式会社天地人の中郡梨子(ちゅうぐん・りこ)さんと鈴木良奈(すずき・りょうな)さんは共にデザイナーとして、宇宙領域からのデータを活用した地球の課題解決に関わっています。

※鈴木良奈さん

動画クリエイターの丸亀耕平(まるがめ・こうへい)さんは映像や写真を通し、日本の文化を独特な世界観で広く世界に伝えています。

佐野まゆきさんは秘書コンサルタントやビジネスボイストレーナーとして多くの人にコンサルティングやコーチングを行っています。

※佐野まゆきさん(左)と丸亀耕平さん(右)

自分の才能を活かし「X」で働く若者たちが「農」の時給を受け取りながら3日間いちごの栽培を体験しました。

身体を動かして働くことで「自分は生きているんだ」と感じた

参加者からは、普段はパソコンで仕事をしているので、「農業は思っていたよりやることが多く、現場で働くのはとても新鮮」という声が上がりました。

※受粉作業の様子

「パック詰めのいちごしか見たことがなかった」と話す彼らが、受粉の作業などを通し、目の前でいちごの花が咲き、実をつけるまでのプロセスを体感しました。

「身体を動かして働くことで『自分は生きているんだ』ということを実感した」など、ハウスの中は会話が弾み作業が進みます。

※受粉作業をしながら和やかな会話も生まれる

「雪が降っても年間を通して働く場をつくりたい」

※農業アルバイトの場を提供した「有限会社アグリフライト大曲」大槻四郎さん

今回、「半農」の農業アルバイトの場を提供したのは「有限会社アグリフライト大曲」の大槻四郎(おおつき・しろう)さん。

11代続く米農家である大槻さんは「昔から秋田の農家は冬場は雪で農作業ができず、都会への出稼ぎが普通だった。そのため、若い人たちがどんどん都会へ行くようになってしまった。だからこそ年間を通じて働ける場所を作りたい」と、10年前に35ヘクタールを超える土地にビニールハウスを建設しました。

いちごの栽培を始めたきっかけは、もっと深く農業で年間を通じて収入を得ることができればいいという思いからでした。

しかし、参加者の佐野まゆきさんが話すように「育てる人、パック詰めをする人、運ぶ人、たくさんの人の手を使っていちごが消費者に届きます。でもいちごを育てる現場の人不足に驚いた」と、実際は地元で農業に携わる人は少ないのが現状です。

「だからこそ、外からの人材を受け入れる今回の事業に賛同したのです」と大槻さんは話します。

つながることで生まれる無限大の可能性

※これからの新しい農業の形について話す大槻さん(左)と北嶋さん(右)

大槻さんは、「農業は作物によって作業工程が違い、一定の作業の時だけ人材が必要になることが多いので、それを解決するような、必要な時に必要な人材を随時集める仕組みが欲しい」と話します。

そこで、人と人をつなげることを仕事とする北嶋さんは、農業の課題である人材不足対策に自分が関わることで解決につながるのではないかと考え、半農半Xの仲介の取り組みを本格化しようと活動をしています。

「大槻さんをはじめ、地元で農業に取り組んできた人と、若い人たちが取り組む新しい技術がつながる。そこから生まれる可能性は無限大だ」と北嶋さんは話します。

「食べ物を作る仕事はなくならない」

参加者の中郡さんは、農業体験の初日の大槻さんのあいさつのなかで「食べ物を作る仕事はなくならない」という言葉に心を揺さぶられたといいます。

「デザインという仕事に誇りを持って働いていますが、農業は人間が生きていくうえで必ず必要である尊い仕事なのだと改めて知りました」と話します。

一方、地元農業の先駆者として活動してきた大槻さんは、今回の参加者から多くのものを受け取りました。

「宇宙領域からのデータを活用した地球の課題解決など、これまで自分では知りえなかった技術を持っている若い人から情報を得られたり、デザインや動画や写真を通じて広く多くの人に自分の活動を紹介するきっかけも作れると思います」と大槻さんは話します。

※「半農半X」体験の企画運営を行っている株式会社ファイオン・北嶋友暁さん

3日の農業体験を終え、残りの2日は「X」の日として、大仙市内のコワーキングスペースでそれぞれ自身の作業に取り組みました。なかでも佐野まゆきさんは、16日(土)大曲の「はなび・アム」で、地域の人に向けたボイストレーニングセミナーを行うなど、自身のスキルを活かした活動を行いました。

「半農半X」体験での何よりの楽しみは人との交流。

秋田の特産品や地酒などを堪能しながら、参加者同士だけでなく地元の人たちとも交流できる時間は「農」や「X」を超えた経験になるとともに、地域のことをより深く知る機会になるため、「半農半X」体験終了後も地域と様々な形で関わりたいと思う地域のファンになります。

北嶋さんは将来、農業を楽しみたい人材と農家とマッチングするようなアプリを作るなど、さらに活動を広めたいと話します。

半農半Xで、「X」の部分では知り得ない「農」に携わり楽しみながら、「農」ある暮らしを楽しむライフスタイルを秋田で体験してみませんか。

 ※令和6年度も県内複数地域で農業や田舎暮らし、移住に興味がある社会人等の参加希望者を募集して「半農半X」体験を実施予定しています。

関わりしろ

・秋田県内の農家さんのもとで農作業に携わりながら、自身の仕事を継続する半農半X体験

・地物の農産物を使った料理や地酒、近隣の名所、温泉等などを楽しみながら地元の人と交流

・自身のスキル等を生かした地域貢献活動

連絡先

ファイオン株式会社

住所:秋田県秋田市旭北栄町1-48 トラパンツビル 401号室
電話番号:018-838-6347
メール:info@phiomn.com

天野崇子

天野崇子

秋田県大仙市

編集部編集記者

第1期ハツレポーター/1968年生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30年。

ローカリティ!編集部の一員として、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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