名古屋を世界最先端の「ウェルネスの聖地」に 独特のローカル感が裏打ちする大都市の新しいブランド戦略とは【愛知県名古屋市】

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(「Wellnestyle NAGOYA」公式HPより)

愛知県名古屋市が今、「ウェルネス」を掲げて世界に羽ばたこうとしている。昨今世界的に市場規模を拡大しつつある「ウェルネスツーリズム」という観点から、ローカルの価値を再発見してブランディングすることで、観光誘致と地域産業の振興に乗り出そうという戦略だ。

2022年度から始まったこの都市型ウェルネスツーリズムブランド「Wellnestyle NAGOYA(ウェルネスタイルなごや)」とは、具体的にどういった取り組みなのか。また、どうして今、名古屋市が「ウェルネス」に乗り出しているのか。主催者に詳しい話を聞いた。

この企画は、ローカリティ!編集部と、Wellnestyle NAGOYA様とのコラボ企画です。

■世界的に拡大を続けている「ウェルネス」の市場とトレンドの「ウェルネスツーリズム」

「ウェルネス」の概念を遡ると、意外と古い。健康の概念を、フィジカルの面だけでなく、メンタルや環境といったより広い範囲を含んで総合的に捉える動きのことを指し、1961年に米国のハルバート・ダン医師により『輝くように生き生きしている状態』と定義されたことから始まった。

現在、世界的には環境問題やSDGs、日本国内では少子高齢化などの社会問題への関心の高まりとともに、身体のパーソナルケアやメンタルヘルスケアなどの分野をはじめさまざまな業界に市場を持ち始めており、その規模は2025年には7兆ドルにのぼるといわれている。

そのなかで昨今注目を浴びているのが、ウェルネスの観点を持ち込んだツーリズムだ。ウェルネスツーリズムとは、心身のケアや健康増幅、個人の感動体験などに重点を置いた旅行形態のことを指し、旅を通じて豊かな人生へのアクションを起こすものである。

日本では昔から心身の疲れを癒やす温泉地などへの旅が活発に行われており、もしかすると我々は、「ウェルネス」という言葉が生まれる以前から「ウェルネス」な旅にはなじみがあった民族かもしれない。風光明媚な観光地や伝統、豊かな自然やパワフルな温泉地を抱える地域は、すでに自治体が主導して「ウェルネスツーリズム」を推進しているところもある。加えて、つい先日(2023年5月10~12日)、世界に先駆けて「第1回国際ウェルネスツーリズムEXPO」が東京ビッグサイトで開催されている。

コロナ禍が明けた今、観光客たちの心身を癒すだけでなく、大打撃を受けた観光業界自体を潤していくという意味でも、単なる観光から脱却し、『輝くように生き生きしている状態』をもたらすような付加価値のあるサービス展開が求められている。

■日本第三の大都市が打ち出す、高付加価値✕ローカルな「ウェルネス」ブランディング

(「Wellnestyle NAGOYA」公式HPより)

そんなトレンドを汲んでついに動き出したのが、東京・大阪についで日本第三の大都市といわれる名古屋市だ。

名古屋市と名古屋観光コンベンションビューローが、都市ならではの利便性と、独特のローカル文化が根強い名古屋の特色を生かす方向で、2022年度に独自のウェルネスツーリズムブランド「Wellnestyle NAGOYA」を打ち出した。これは、都市部で取り組むウェルネスツーリズム推進として、日本初のケースだそうだ。

アフターコロナを見越した観光振興を考えたとき、名古屋市は元々ヘルスツーリズムを切り口にしようとしていた。しかし、身体的な健康だけに主眼を置くと、どうしても需要の間口が狭まってしまい、参画できる業種・業態も限られてしまう。

運営事務局を務める株式会社アド近鉄の平田貴之(ひらた・たかゆき)氏は、「観光振興を考えるなら、国内だけでなくインバウンドの需要も見逃せない。もっと広い視野で世界に名古屋を打ち出す必要があると考えたとき、ヘルスの抽象度をあげたウェルネスにたどり着きました。こちらの方が客層も広がるし、関わってくれる事業者も増えますよね」と話す。

「ウェルネス」という看板を掲げるにあたり、名古屋市の持つ強みは2つ。

ひとつは、大都市ならではのアクセスの良さと過ごしやすい環境、そして洗練された「おもてなし」の高付加価値サービスだ。大自然を求めて、人里を離れれば離れるほど交通の便は悪くなるし、お互いに高め合う商売敵がいない場所ではサービスの質が担保されないこともある。そのデメリットを名古屋は、大都市としての機能とクオリティで軽々とクリアできるうえに、「ちょっと行けば案外田舎」という特殊な立地で都市部だけでは出せない魅力も兼ね備えている。

そしてもうひとつが、街中のいたるところで顔をのぞかせる「名古屋」らしいローカル感。名古屋でなければ成り立たない食文化、日本を変える英傑を輩出した歴史や縁の地であることなど、そこにしかない魅力的なコンテンツが、さまざまな分野において散りばめられている。そのコンテンツたちは、訪れる人々それぞれの興味関心をそそる引き金となり、結果として多くの感動体験、すなわち「ウェルネス」につながっていくことが予想される。

これらの強みを生かすことで、名古屋市は自身を「次世代ライフスタイル創造都市」と称し、アーバンで叶える新しい「ウェルネス」の形と、それによる関係交流人口の創出を、世界に向けて展開していこうとしている。

■参画する事業者の「名古屋」プライドが「ウェルネス」とのシンパシーを醸す

今回「Wellnestyle NAGOYA」の取り組みを知った筆者は、特別に取材のアポイントメントを取らせていただいて「第1回国際ウェルネスツーリズムEXPO」の会場を訪れた。広々としたブースには、ひっきりなしに人が出入りして賑わっていた。

「Wellnestyle NAGOYA」のブースをのぞいてみると、この取り組みに賛同し、ウェルネスに寄与するサービスを展開している事業者も、数社ほど出展していた。100年以上続く老舗企業の担当者は「思い切って新開発した商品が市の新しい取り組みにマッチしてうれしい」と話し、実直な仕事人という印象を抱かせるワンマン会社の社長は「うちはこれしかできないけど、特許を取得したプロダクトでお客様にもちゃんと喜ばれているので、自信を持ってここへ来ている」と語る。

(「Wellnestyle NAGOYA」公式HPより)

「Wellnestyle NAGOYA」はその仕組みとして、「来訪者と地元事業者みんなで創る新しいライフスタイル」を提唱している。「ウェルネス」を享受すべきは、消費者にあたるツーリストだけでなく、そのサービスを提供するローカルあるいは事業者ももちろん含まれるという考え方だ。

「ウェルネス」という言葉こそ新しいものの、名古屋にはすでに 「ウェルネス」に通じる魅力的なコンテンツやプロダクト、サービスがたくさんある。「事業者の皆さんのプライドが詰まった今あるものから、新しいシナジーを取り入れつつ、この取り組みで磨き上げていければ」と話すのは、名古屋観光コンベンションビューローの中山理代(なかやま・りよ)氏。ツーリズムを切り口に街をあげて取り組むことで、名古屋というローカルに「ウェルネス」を感じられるライフスタイルをインストールしようとしている。

■パーソナルに「ウェルネス」を叶える多様な「名古屋文化」で、世界に、次世代に

昨年度からこの事業に参画している事業者はすでに100社を超えており、街の中心部に構える有名ホテルから下町のBtoB企業まで、業種・業態も多種多様である。この取り組みを立ち上げたときのねらいどおり、抽象度の高い「ウェルネス」という言葉のもとに集う「名古屋の魅力」は多岐にわたり、今年度も引き続き増えていく見込みだ。

それらはすべて名古屋を訪れる人々にとっての豊かな選択肢となり、名古屋以外では味わえない体験を通じて、彼ら彼女らがそれぞれ求めていた「ウェルネス」を達成する一助となる。そして、人々が自分の「ウェルネス」が実現できる場所として名古屋を認識することで、名古屋は多くの人にとっての「サードプレイス(ストレスから解放され憩うことのできる場所)」となっていく。これこそが、名古屋市の大きなねらいである。

利便性が高く、洗練された雰囲気とローカル感を併せ持ち、ひとところで多様な「ウェルネス」にアクセスができる名古屋市。こうしてひもといてみると、「ウェルネス」の方から名古屋という地を選んだのではないかと思えるくらいに、しっくりとなじむ。名古屋市が「都市型ウェルネスツーリズム」という世界最先端のブランディングを仕掛けていくのに、舞台はすでに整っているのだ。

まだまだ始まったばかりの取り組みだが、この芽吹きがいずれ大樹になり、この先きっとたくさんの人々に「ウェルネス」をもたらしてくれるような気がしてならない。そして、そのような人々が豊かに暮らす未来の姿こそ、名古屋市が創造する「次世代ライフスタイル」となるのだろう。

ローカリティ!編集部

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