【秋になったらコレを食え!】旅する食欲~漁船で生まれたソウルフード「ポーポー焼き」って?【福島県いわき市】

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秋の食卓を彩る食材のひとつ「サンマ」。写真:photoAC

東京豊洲市場で「常磐(じょうばん)モノ」の漁場として知られる福島県沖では、アンコウやホッキガイなど年間を通じて多くの魚介類が水揚げされるが、特に秋に盛んになるのがサンマ漁である。サンマといえば、大根おろしがうまみを引き立てる塩焼き、さっぱりとしょうゆでいただく刺身、香ばしいゴマの香りが食欲をそそるみりん干し、などなど、秋の夜長を味わうのはどの食べ方も格別なうまさだが、中でもみじん切りにしたサンマに薬味を混ぜ合わせて焼いた「ポーポー焼き」は地元いわきの秋のソウルフードのひとつとして知られている。

郷土料理「さんまのポーポー焼き」、写真出展:農林水産省 うちの郷土料理


「ポーポー焼き」の名前の由来には興味深いエピソードがある。この料理はむかし、漁師たちが規格外のサンマを利用して船上で料理したのが始まりと言われ、「焼く際にサンマから落ちた油が燃えてポーポーと音を立てるから」「ポーポーと音を鳴らす船内の煙突ストーブで焼くから」「口に入れると熱くてポーポー言うから」と言われている(諸説あり)。作り方はシンプルで、内臓を取り除いたサンマを包丁でたたき、みそやしょうが、ネギにつなぎを加えて丸く成形して焼くだけ。ハンバーグ状にしたポーポー焼きの両面に大葉を張りつけて焼いても美味だ。秋に新鮮なサンマが取れる時期に市内スーパーの総菜コーナーに並ぶ。

最近では、このポーポー焼きが小学校の給食に取り入れられ、子どもたちにも親しまれるようになっている。実際に食べてみると、サンマの風味がしっかり感じられ、ご飯が進む味わいである。魚が苦手な子でも食べられそうだ。

いわき市中之作港の風景、撮影:2023年8月11日

いわきには小名浜(おなはま)や中之作(なかのさく)、勿来(なこそ)などの漁港があり、ヒラメやカツオもよく取れる。いわきの郷土料理は多様で、メヒカリの一夜干しやカツオのわら焼きなども代表的な料理だが、ポーポー焼きはその中でも特にユニークで魅力的な郷土料理のひとつである。「常磐モノ」として知られるいわきの豊かな海の恵みを生かした料理であり、地元の人々にとっても特別な存在だ。地域の文化や歴史が詰まった郷土料理は、その土地の魅力を引き出す重要な要素である。

アクアマリンふくしまはいわき市内にあるサンマを展示する世界唯一の水族館。撮影:2023年12月24日

ポーポー焼きは、いわきの食文化を体現した一品であり、食べることで地域への理解を深める手助けにもなる地域の誇りと食文化の象徴だ。しかし、日本のサンマの水揚げ量は約20年で10分の1以下になり、2022年は1.8万トンと過去最低を記録。いわき市中心部から車で15分ほど北にある四倉地域では、東日本大震災前には浜特有の磯の匂いが漂っていたが、震災からの復興を経て、その匂いは過去のものとなったという声もある。

場所:ごはん・カフェ&シーサイドハウス きゅういち、撮影日:2024年2月11日

海水温が高くなっている状況はサンマの不漁のひとつの要因ともいわれることから、この料理を通じて地方の魅力を再認識するだけでなく、地球環境の変化も実感することができるだろう。食べることで地域とのつながりを感じ、ぜひ一度味わってみてほしい。

【参考:サンマのポーポー焼き 福島県 | うちの郷土料理(農林水産省)、福島県いわき市立桶売小学校本日のランチ(いわき小中学校ホームページ)、近年のサンマの不漁の原因は? 今年の漁獲量はどうなる(ウェザーニュース)、ごはん・カフェ&シーサイドハウス きゅういち(いわき市観光サイト)】

昆愛

昆愛

福島県郡山市

第4期ハツレポーター

埼玉県川越市出身。前住地は山形県鶴岡市。会社員のかたわら、地域資源の掘り起こしとその魅力発信活動に取り組む。2023年、「誰もいなくなった町。でも、ここはふるさと~原子力発電所と共存するコミュニティで“記憶”と“記録”について考える【福島県双葉郡富岡町】」で本サイトのベスト・ジャーナリズム賞を2年連続受賞、また2024年、天文活動の報告・交流等を目的としたシンポジウムでの発表「天文文化史で地元の魅力発信?九曜紋が導く新たな誘客構想とは【福島県南相馬市】」で渡部潤一奨励賞を2年連続受賞。

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