居心地の良さが人気の秘密!移住者を次々と生み出す「かづのclassy」のあたたかいホスピタリティ【秋田県鹿角市】

3 min 225 views

 秋田県の最北東部に位置する人口約3万人の鹿角市(かづのし)、農村地帯でありつつも、多くの縄文遺跡が残り、かつては鉱業が盛んであった歴史を持つなどユニークなまちです。また、地熱発電や水力発電も盛んで、エネルギー自給率が高い地域でもあります。

このまちで移住・定住に関する活動を行っているのがNPO法人かづのclassy(クラッシー)です。同市から空き家バンクの運営などを含めた移住推進事業を任されているほか、秋田県からの委託を受けてイベント開催なども行っています。

また、鹿角に興味のある人たちをつなぐコミュニティ「鹿角家」を運営しメンバーを「家族」と見立て、築140年超の古民家を改修した「鹿角家実家kemakema(ケマケマ)」を「実家」とし、コワーキングや民泊が可能な複合施設としても提供しています。さらに、関わりしろマッチングツアーなども開催し、移住者や関係人口を増やしています。

活動にかける思いや、これまでのエピソードを事務局長の松村託磨(まつむら・たくま)さんに聞きました。

「もったいない」これまで築いたネットワークを生かした活動を続けたい

鹿角市では、移住・定住を推進するため、「移住コンシェルジュ」として地域おこし協力隊員を置いています。松村さんを含む4人の県外出身者の方々が採用されたのは2015年、この4人が同団体の前身となる移住者のネットワークを作りました。中心となったのは同団体の前の理事長である木村芳兼(きむら・よしかね)さんです。そこから1年足らずで法人化がかない、NPO法人として活動を開始しました。

こうした背景には、協力隊員の任期が終わったり、市役所の担当職員の方が異動してしまうことで、せっかく活動した成果やネットワークが蓄積されず十分に生かされないことは「もったいない」という協力隊員たちの思いがありました。

家族の実家kemakemaの外観はノスタルジックなTHE古民家です
土間もオシャレに活用されています

まちづくりと移住希望者に寄り添う活動で未来をひらく

活動のやりがいは、なんといっても「まちの政策や未来に関わることができること」だそうです。人口減などでまちの活気が失われることに危機感を持っていて、住民が楽しく暮らせることを第一に考えています。また、子どもたちに将来のための実力をつけてもらいたいという思いも持っています。

同団体では鹿角市に短期間滞在してもらい、地元企業で働いてもらう「仕事体験プログラム」という市の事業の運営も行っていますが、このプログラムに参加してくれた方が実際に移住することを決めてくれたそうです。こうした成果が出ることに特にやりがいを感じるそうです。

この事業では、参加者はもとより、受け入れ先の満足度も重視しているとのことで、そのために「付かず離れず」の心地良い距離で間に入ることを意識しているそうです。その結果、参加者と受け入れ先のミスマッチの可能性も低く、双方が充実した時間を過ごしているとのことでした。

「仕事体験プログラム」参加者のお仕事の様子

「自分が欲しいもの」を形にする企画でだれもが気軽に立ち寄れる「実家」に

順調に活動されている同団体ですが、過去には提案した事業が何度も不採用になったり、やらなければならないことが多いのにマンパワーが足りないという苦労も経験されてきたそうです。こうしたことから、同団体では人材育成のため、スタッフ向けに事業のアイディア出しや企画書の書き方のレクチャーも行っています。

その中から生まれたのが、子ども服のリサイクル事業である「icott(イコット)」です。寄付された子供服や学童用品を、団体の拠点で「実家」であるkemakemaで保管し、必要な時期に低価格で提供するシステムです。kemakemaの一角には、季節にあったおさがりの子ども服が並べられていて、1点100円で販売されています。500円払えば、袋に詰め放題(!)で購入できます。スタッフの中には子育て世代のお母さんも多く、自分たちが欲しいものを企画して実現したものだそうです。

事業アイディアは「ほぼ無限」にあるそうで、今後の活動からも目が離せません。

 子ども服のリサイクル事業「icott」、気軽に立ち寄りたくなります

関係人口増加のカギは「鹿角家」の居心地の良さとあたたかさ

 かつて大阪で暮らしていた松村さんは、30歳を目前にして自分の仕事に疑問を持ち、「自然の中で自分の事業をやりたい」と思ったそうです。移住先は「どこでも良かった」そうですが、鹿角市に移住するきっかけとなったのは「問い合わせた際の(市役所職員の方の)対応の感じが良かったため」だそうです。移住後は「関わる鹿角の人たちにほれ込んでまちが好きになった」と話してくれました。

 筆者が取材に伺った際は松村さんや他のスタッフさんから快く出迎えていただき、また、kemakemaの居心地の良さについつい長居してしまいました。そして、しっかり「鹿角家」(「関わりしろ」を参照)の家族になってしまいました。

 取材を通して、一期一会の精神で、その人にとって居心地の良い対応を心がけるのが移住者や関係人口増加のカギになるのではないかと感じました。

関わりしろ

地域の人と関わりが持てる旅をしたい方
鹿角に興味がある方
地方の仕事をリアルに体験したい方

関わりしろマッチングツアー

祭りや農作業、薪(まき)割り、除雪の体験など、単なる観光ではなく、より深く地域を知ることができる参加型ツアーです。

鹿角家(かづのけ)

鹿角に興味のある人たちをつなぐコミュニティです。参加者を家族に見立てて、 「家族会議」などの交流イベントを実施。さらに、「実家」であるkemakemaでDIYなどの体験もできます。
詳細はリンクをご確認ください。

仕事体験プログラム

地方で働き、暮らすことをリアルに体験できるプログラムです。参加者は鹿角市に最長で14日間滞在し、興味のある企業で仕事を体験することができます。

 

問い合わせ先

NPO法人かづのclassy

〒018-5334
秋田県鹿角市十和田毛馬内字下小路51-8
TEL:090-7327-5013
Mail:kaduno.classy@gmail.com

「あきたの物語(https://kankei.a-iju.jp/)」は、物語をとおして「関係人口」の拡大を図ることで、県外在住者の企画力や実行力を効果的に生かした地域づくりを進め、地域の課題解決や活性化を促進する事業として秋田県が2023年度から始めました。秋田県や秋田にまつわる「ローカリティ!」のレポーターや地域の関係者が、秋田県各地の人々の活動を取材し「あきたの物語」を執筆して秋田県を盛り上げています。

川村忠寛

川村忠寛

秋田県八峰町

第7期ハツレポーター

1983年生まれ、秋田県八峰町出身・在住です。一時故郷を離れましたが、2011年に帰郷して町役場職員として公務に従事しています。2022年に非営利法人を立ち上げ、本業の傍ら、まちおこし・まちづくりにも取り組んでおり、その活動の一環としてハツレポーターに参加しています。

2 件のコメント

  1. 鹿角市のマッチングツアーや、仕事体験プログラムなど、とても面白そうですね。人との繋がりを感じられる事業ばかりで、鹿角市に行ってみたくなりました。

    • 川添さんありがとうございます。取材された川村さんも訪れて本当に心地よかったと話されていました。
      ぜひ機会がありましたら訪れて体験などもされてみてください。
      ローカリティ編集部

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です