「滋賀県を盛り上げたい」という思いから始まった、和菓子への道【滋賀県大津市】

2 min 336 views

〜この記事は、株式会社JTBふるさと開発事業部と合同会社イーストタイムズが共同で取り組んでいる「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」から生まれたハツレポです〜

(寿長生の郷入り口、創業者の言葉が書かれたのれん)

滋賀県大津市に本社を置く「叶 匠壽庵(かのうしょうじゅあん)」は、全国の直営店や百貨店などでユニークな和菓子を製造・販売しています。1958年、当時大津市の観光課に勤めていた創業者の芝田清次(しばた・せいじ)さんが、もっと大津市を盛り上げたい、そのためには滋賀名物となる物が必要だと思い立ち、一流の和菓子職人と手を組んだところから始まりました。

しかし、名物を作るとしても、なぜ和菓子だったのでしょうか。新しい創作洋菓子や、観光コンテンツなどでも良かったのでは。

そんな筆者の疑問に、「叶 匠壽庵」の深い思想をもって答えてくださったのが、今回お話いただいた秘書広報課の池田典子(いけだ・のりこ)さんでした。「食べ物や文化は、自然や風土からのいただきもの。日本人の感性を一番しっかり表現できるのが、当時の選択肢の中では和菓子だったんじゃないでしょうか」と、池田さんは語ります。

豊かな環境と自由な発想から生まれる、唯一無二のお菓子たち

(寿長生の郷全景)

その言葉通り、「叶 匠壽庵」のお菓子には、ユニークさの中にも自然の素朴さや厳しさが垣間見えます。季節の移ろいや自然現象をモチーフにすることが多い和菓子の世界。携わる全員に感性を養ってほしいという思想のもと、「叶 匠壽庵」は1985年、京都府との県境に近い里山地域に、「寿長生の郷(すないのさと)」という独自の環境を作りました。

「寿長生の郷」は、「叶 匠壽庵」の世界観を誰もが体感できる場所です。お客様が自然を感じながら和菓子を購入したり、茶室で楽しんだりするのはもちろんのこと、社員の方々が郷の中で田畑を耕し原料となる食材を作ったり、茶室に毎朝野花を活けたりすることで、「ものづくりの本質が理解でき、おもてなしの心が磨かれる」と、池田さんは言います。

(お菓子作りの工程で出てきた小豆の皮を堆肥と混ぜて、畑に使う肥やしにする作業)

また、お菓子作りだけにとどまらない事業展開に加え、創業者である芝田さんが和菓子畑の出身ではなかったことも、「叶 匠壽庵」の面白さのひとつ。たとえば看板商品である「あも」は、餅に餡を包むのではなく、餡で餅を包む発想から生まれました。自然の美しさやおもてなしの心、和の感性とおいしさを、固定観念にとらわれずに落とし込んだような、個性の光るお菓子が多数生み出されています。

日本の美の感性を日々の生業から見出し、おもてなしに生かす

滋賀・近江のことを「噛めば噛むほど味が出る」と表現する池田さん。「人知れず、地味だけど、きちんと歴史を感じられるし、人の営みの蓄積を感じられる」という滋賀県の存在を、里山という学びの場で研ぎ澄まされた感性により和菓子に落とし込んで、お客様に広く伝えていきたいと話してくれました。

(こだわりの餡を炊く風景)

「叶 匠壽庵」のお菓子は、ごく一部を除き、ほぼ自社で製造されています。創業当初から大事にしている「農工ひとつ」という理念のもと、日が昇って落ちるまで、季節が巡ってまた戻ってくるまで、ものづくりの本質に向き合いながら丁寧に生み出されるお菓子たち。そのお菓子をゆったりと味わい、豊かで優しい「叶 匠壽庵」の世界観を堪能できる「寿長生の郷」に、あなたもぜひ訪れてみてください。

(里山より見た寿長生の郷)
ヨコイリカ

ヨコイリカ

東京都文京区

事業部長

ハツレポーター

ふるさと:
香川(出身地)、京都(大学時代から12年間居住)、名古屋・銀座・文京区(仕事場)

全国全世界の「地元の魅力」と「歴史ロマン」と「美味しいもの」にまみれて生きたい。田舎っぺの底力を見せつけてやるー!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です